今週のアップデート=欧州エネルギー事情を見る — スウェーデンの27万台スマートメーター導入(2012年7月17日)
日本ではエネルギー体制の改革論をめぐる議論が、議会、またマスメディアで行われています。参考となる海外の事例、また日本の改革議論の問題点を紹介します。
今週のコラム
1)電力の仕様の情報を細かく伝えるスマートメーターが節電の手段として注目されています。またそこからの情報を利用することで、新しい産業が生まれるのではないかという期待があります。
韓国の情報機器ベンチャー「ヌリテレコム」はスウェーデンで27万戸にスマートメーターを取り付ける取り組みを行いました。同社日本法人の鈴木真幸社長に「スマートメーターは社会を変えるのか? 27万戸に取り付けて見えたもの」を寄稿いただきました。
同国では日本のように細かな電力使用のチェックが集合住宅などでは行われていませんでした。導入により電力会社のためになったばかりではなく、約1割の需要家が毎日メーターをチェックして、電力使用量を確認するようになったそうです。
日本での大量導入に備え、海外の先行事例は参考になります。GEPRもスマートメーターをめぐる新しい情報を伝えていきます。
2)GEPRはNPO国際環境経済研究所(IEEI)と提携し、コンテンツを共有しています。主席研究員の竹内純子さんによる「ドイツの電力事情―理想像か虚像か」を転載します。
ドイツは「自然エネルギー先進国」と讃えられます。しかし、このコラムでは電源計画ではコストが安い石炭火力の増設が目立ちます。また自然エネルギーに備えた送配電網の整備も進んでいないなどの問題も起こっています。
単純な賛美ではなく、同国の経験を分析し、冷静に評価することが必要です。
3)日本では、エネルギー政策の見直しが進んでいます。エネルギー・環境会議は選択肢と称して、2030年までのエネルギーについて、原発の発電に占める割合を「ゼロ」「15%」「20−25%」の3つの案を提示しました。
ところが、ここに示された案を精査すると算定基準がかなり曖昧で、非現実的です。アゴラ研究所フェロー石井孝明の分析記事「間違った情報で日本のエネルギーの未来を決めるのか?=「エネルギー・環境会議」選択肢への疑問−誤った推定、経済的悪影響への懸念など試算は問題だらけ」を提供します。おかしな議論と決定によって、エネルギー政策が混乱することを止めなければなりません。
今週のリンク
1)「やっつけ仕事の国民的議論は残念だ」日本経済新聞7月15日社説
エネルギー・環境会議が国民から意見を聴取する「国民的議論」が始まりました。8月中に方向を出すそうですが、その議論の方法が今でも明確に決まっていません。さまざまな意見が錯綜して、混乱を広げるだけではないかという懸念があります。
2)「再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ」環境省

画像はNHKニュースより
環境省はグーグルアースを使い、再生可能エネルギーの適地を日本のマップ上に表示するサービスを始めました。
3)エネルギー・環境会議「話そう“エネルギーと環境のみらい”パンフレット」内閣府
国民的議論のためとして、内閣府はパンフレットを作成しました。8月中に議論を取りまとめたいとしています。
4)”A better mix Shale gas will improve global security of energy supplies” Economist
英エコノミスト誌の記事です。シェールガスはエネルギー消費大国の米・中で埋蔵量が豊富です。そのためにエネルギー安全保障、温暖化対策の両方に有益と指摘しています。
関連記事
-
昔は“正確”が自慢だったドイツ鉄道が、今ではその反対で、“不正確”の代名詞になってしまった。とにかく遅延の度合いが半端ではない。 ヨーロッパの遠距離列車は国境を超えて相互に乗り入れているケースが多く、周辺国ではドイツから
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 今回は朗報。衛星観測などによると、アフリカの森林、草地、低木地の面積は10年あたり2.4%で増えている。 この理由には、森林火災の減少、放牧の減
-
経産省が、水素・アンモニアを非化石エネルギー源に位置づけるとの報道が出た。「製造時にCO2を排出するグレー水素・アンモニアも、燃焼の瞬間はCO2を出さないことから非化石エネルギー源に定義する」とか。その前にも経産省は22
-
ベクレルという量からは、直接、健康影響を考えることはできない。放射線による健康影響を評価するのが、実効線量(シーベルト)である。この実効線量を求めることにより、放射線による影響を家庭でも考えることができるようになる。内部被ばくを評価する場合、食べた時、吸入したときでは、影響が異なるため、異なる評価となる。放射性物質の種類によっても、影響が異なり、年齢によっても評価は異なる。
-
昨年末の衆議院選挙・政権交代によりしばらく休止状態であった、電力システム改革の議論が再開されるようだ。茂木経済産業大臣は、12月26日初閣議後記者会見で、電力システム改革の方向性は維持しつつも、タイムスケジュール、発送電分離や料金規制撤廃等、個々の施策をどのレベルまでどの段階でやるか、といったことについて、新政権として検証する意向を表明している。(参考:茂木経済産業大臣の初閣議後記者会見の概要)
-
太陽光や風力など、再生可能エネルギー(以下再エネ)を国の定めた価格で買い取る「固定価格買取制度」(FIT)が7月に始まり、政府の振興策が本格化している。福島原発事故の後で「脱原発」の手段として再エネには全国民の期待が集まる。一方で早急な振興策やFITによって国民負担が増える懸念も根強い。
-
福島原発事故以降、「御用学者」という言葉がはやった。バズワード(意味の曖昧なイメージの強い言葉)だが、「政府べったりで金と権勢欲のために人々を苦しめる悪徳学者」という意味らしい。今は消えたが2012年ごろまで「御用学者リスト」(写真)がネット上にあった。卑劣にも、発表者は匿名で名前を羅列した。それを引用し攻撃を加える幼稚な輩もいた。
-
EUの行政執行機関であるヨーロッパ委員会は7月14日、新たな包括的気候変動対策の案を発表した。これは、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年と比べて55%削減し、2050年までに脱炭素(=実質ゼロ、ネットゼロ)
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














