【シンポ関連】遺伝子組み換えは農薬ではない

日本でも、遺伝子組み換え(GMO)作物が話題になってきた。それ自体は悪いことではないのだが、このブログ記事に典型的にみられるように、ほとんどがGMOと農薬を混同している。これは逆である。GMOは農薬を減らす技術なのだ。
「遺伝子組み換え」というと、いかにも危険な遺伝子操作をするようだが、単なる品種改良の技術である。今までは交配によって遺伝子の組み替えを植物にさせていたのを、人間が実験室でやるだけだ。その主な目的は、除草剤や害虫に強い品種をつくることだ。
除草剤は毒物である。人間が大量に飲むと死ぬ劇薬だが、雑草を取り除くために使われている。しかし除草剤はすべての植物を殺すので、何回にもわけて雑草だけが死ぬように散布する必要がある。これに対して、GMOで除草剤に耐性のある品種をつくると、1回で雑草だけを殺すことができる。
害虫を殺す殺虫剤も毒物である。GMOで害虫に強い品種をつくると、殺虫剤の散布もなくすことができる。これによって農作業が楽になり、収量が増えるだけでなく、農薬(除草剤・殺虫剤)の使用量も大きく減るのだ。農薬で死んだ人はたくさんいるが、GMOで死んだ人はいない。
反GMO運動は、反原発運動に似ている。彼らは「自然は正しい」と信じているが、GMOをやめると毒性の強い農薬が増えることは知らない。有機農業で高い農作物を売っている業者は、彼らの無知を利用してGMOを阻止しているが、GMOをまったく使っていない日本の1人あたり農薬使用量は世界一だ。
しかしGMOには毒性がないので、海外では普通に使われている。日本に輸入されるトウモロコシの7割以上は、GMO作物だ。農水省も許可しているが、農協が「安全確保」を理由にして阻止しているので、栽培には使えない。GMOを支配しているのはモンサントなどの外資系企業で、農協の独占を脅かすからだ。
アゴラ研究所では、2月29日に「遺伝子組み換え作物は危険なのか?」と題して、GMOは危険なのか、それがなぜ誤解されているのか、を科学者やジャーナリストとともに考える。
(2016年2月15日掲載)
関連記事
-
はじめに述べたようにいま、ポスト京都議定書の地球温暖化対策についての国際協議が迷走している。その中で日本の国内世論は京都議定書の制定に積極的に関わった日本の責任として、何としてでも、今後のCO2 排出枠組み国際協議の場で積極的な役割を果たすべきだと訴える。
-
バイデン政権は、米国内の金融機関に化石燃料産業への投資を減らすよう圧力をかけてきた。そして多くの金融機関がこれに応じてポートフォリオを変えつつある。 これに対して、11月22日、15の州の財務長官らが叛旗を翻した。 すな
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回の論点㉒に続いて「政策決定者向け要約」を読む。 冒頭
-
政府「クリーンエネルギー戦略」中間整理が公表された。岸田首相の肝いりで検討されてきたものだ。 紆余曲折の末、木に竹をつなぐ もともと、この「クリーンエネルギー戦略」は、脱炭素の投資を進めるべく構想されたものだった。これは
-
中国の研究グループの発表によると、約8000年から5000年前までは、北京付近は暖かかった。 推計によると、1月の平均気温は現在より7.7℃も高く、年平均気温も3.5℃も高かった。 分析されたのは白洋淀(Baiyangd
-
6月にボンで開催された第60回気候変動枠組み条約補助機関会合(SB60)に参加してきた。SB60の目的は2023年のCOP28(ドバイ)で採択された決定の作業を進め、2024年11月のCOP29(バクー)で採択する決定の
-
4月29日、トランプ大統領は就任100日目にあたり、ミシガン州で支持者を前に演説し、「私たちの国の歴史上、最も成功した政権の最初の100日間を祝うためにここにいる。毎週、不法移民の流入を終わらせ、雇用を取り戻している」と
-
「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















