審査に欠ける科学的、技術的な視点−浜野議員【原子力規制委員会を改革せよ3】

2016年12月09日 12:16

Exif_JPEG_PICTURE

浜野喜史参議院議員(民進党) (はまの・よしふみ)1983年神戸大経済学部卒業、関西電力入社。全国電力関連産業労働組合総連合会長代理などを経て、2013年参議院議員に当選(比例区)

規制委の審査には、効率性だけでなく科学的、技術的な視点を欠くとの声も多い。中でも原発敷地内破砕帯などを調べた有識者会合は、多くの異論があるなか「活断層」との判断を下している。この問題について追及を続ける浜野喜史議員に聞く。

−原子力規制委員会のこれまでの活動をどう評価しますか。

浜野・あまりに多く問題がありすぎると思っています。新規制基準をつくり、その適用という新しい取り組みを始めたことで、試行錯誤の面はあるでしょう。しかし今年11月時点で適合性審査が終了した原子炉は8基にすぎず、その他は審査を待っている状況です。これはあまりに遅すぎます。

また電力会社には新規制基準の適合性審査で過重な負担がかかっています。審査の現場では、朝令暮改や過剰な書類のやりとりがあると聞きます。真剣に反省し、安全性の確保をおろそかにすることない形で、効率的で効果のある合理的な審査体制を作ることを、規制委、規制庁は真剣に考えるべきです。

−原発敷地内の破砕帯などの調査を行った規制委の有識者会合について、以前からその進め方や報告書の内容について、国会で問題点を追及しています。

浜野・有識者会合では、適正なプロセスを踏んで、本当に科学的、技術的見地から判断したのか疑わしい事案があります。敦賀、志賀、東通の各原子力発電所敷地内の破砕帯などについては、事業者と丁寧な対話もせずに「活断層であることを否定できない」とする報告書をまとめています。

そもそも有識者会合は法的な根拠を有していません。さらに敦賀発電所では、最終報告書の結論について、規制庁が根拠無く書き換えを提案した疑いがあります。これには強い不信感を持っており、引き続き国会で取り上げていきたいと思います。

−そのほかに、どのような問題点がありますか。

浜野・現行の40年運転制限制にも課題があると考えます。40年というのは政治的に決められた仮の数値であり、規制委設置後、科学的・技術的見地から改めて検討されることが国会審議で約束されています。それにも関わらず規制委は全く検討しておらず、これは大きな怠慢と考えています。

−規制行政はどう改革すべきですか。

浜野・特に大切なのは原子力事業者、立地自治体といった原子力に関わるステークホルダーとのコミュニケーションだと思います。今はそれが適切に行われず、規制委は孤立した状態に陥っています。

規制体制は今年1月に国際原子力機関(IAEA)の総合規制評価サービス(IRRS)によるレビューを受け、報告書が4月に公表されました。そこでは「規制委の体制と資源管理が可能な限り効率的で効果的な機能遂行を保証しているか明瞭でない」との記載があります。規制委はこの海外の専門家の意見を真摯に受け止めるべきです。

−規制委の委員はいずれ交代します。どのような人物が委員に相応しいでしょうか。

浜野・委員長をはじめ委員は、自らの専門性のみを頼りにするのではなく、科学的・技術的な見地から国内外の多様な意見に耳を傾け、国民に対し分かりやすく安全、安心を発信できる識者が望ましいと考えています。

(このインタビューはエネルギーフォーラム16年12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる。)

This page as PDF

関連記事

  • アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」を公開しました。 今回のテーマは「エネルギー安全保障と石炭火力」です。 ホルムズ海峡で日本のタンカーが攻撃され、久しぶりにエネルギー安全保障が注目されています。原子力だけで
  • 前回ご紹介した失敗メカニズムの本質的構造から類推すると、米国の学者などが1990年代に行った「日本における原子力発電のマネジメント・カルチャーに関する調査」の時代にはそれこそ世界の優等生であった東電原子力部門における組織的学習がおかしくなったとすれば、それは東電と社会・規制当局との基本的な関係が大きく変わったのがきっかけであろうと、専門家は思うかもしれない。
  • アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
  • ウィルファ原発(既存の原子炉、Wikipedia)
    はじめに 日立の英国原発凍結問題を機に原子力発電所の輸出問題が話題になることが多いので原発輸出問題を論考した。 原発輸出の歴史 原子力発電所の輸出国は図1の通りである。最初は英国のガス炉(GCR)が日本、イタリアに導入さ
  • アゴラチャンネルで池田信夫のVlog、「脱炭素で成長できるのか」を公開しました。 ☆★☆★ You Tube「アゴラチャンネル」のチャンネル登録をお願いします。 チャンネル登録すると、最新のアゴラチャンネルの投稿をいち早
  • 原子力規制委員会は24日、原発の「特定重大事故等対処施設」(特重)について、工事計画の認可から5年以内に設置を義務づける経過措置を延長しないことを決めた。これは航空機によるテロ対策などのため予備の制御室などを設置する工事
  • 1.はじめに 雑誌「選択」の2019年11月号の巻頭インタビューで、田中俊一氏(前原子力規制委員会(NRA)委員長)は『日本の原発はこのまま「消滅」へ』と題した見解を示した。そのなかで、日本の原子力政策について以下のよう
  • 台湾のエネルギー・原子力政策が揺れている。建設中の台湾電力第四原発をめぐって抗議活動が広がり、政府は建設の一時中止を表明。原子力をめぐる議論で反原発を標榜する一部の世論が政府を引きずり、日本と状況がよく似ている。台湾の人々の声を集めながら、民意と原子力の関係を考える。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑