IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。

tunart/iStock
京都の桜の開花日が早くなっているという図が出ている(図1のa)。
IPCC報告はこれが地球温暖化によると言いたげである。(そうはっきりとは書いていないが、普通の人が読むとそう読んでしまうように書いてある)。

図1
だがこの理由は、地球温暖化による気温上昇とは限らない。まず都市熱は大きい。気象庁のデータを見ると、京都は地球温暖化を上回るペースで気温が上昇している(図2)。
またエルニーニョのような自然の気温変動もあるだろう。あるいは桜の木の周りに建物が立て込んだせいかもしれない。地球温暖化による寄与があったとしても、どの程度のものか、このデータからは分からない。

図2
なお、この桜の開花日のデータ自体は大阪府立大学青野先生らの精力的な努力で集められたもので、公開されている。
ちなみにこの図1、bはフランス・ブルゴーニュの中心地ボーヌにおけるブドウの収穫日など、面白いデータが出ている。ワイン好きの紳士淑女、収穫が早くなった理由をどう推察しますか?
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1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
次回:「IPCC報告の論点⑰」に続く
【関連記事】
・IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
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・IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
・IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
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・IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
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・IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
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・IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
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