11月のCOP27に向けた英国、アフリカ諸国、金融機関の裏事情
11月6日(日)~同年11月18日(金)まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクにて国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催される。
参加国、参加主体は、それぞれの思惑の中で準備を進めているようだが、ここでは英国とアフリカ諸国、米国を含む金融機関の動きについて触れる。

Asiya Hotaman/iStock
英国:トラス首相の意向は?
昨年のグラスゴーにおけるCOP26では、協議が公式期限を大幅に過ぎたため、英国は、先進国と未開発国の脆弱な連合と石炭使用の段階的廃止/削減をめぐり、交渉を繰り返した。
しかし、来月のCOP27では、英国の気候政策とCOP27への出席者をめぐって、内閣内の対立があり、前途に暗い影を落とす恐れがあるという。
トラス新首相は、COP27への出席を明言していないが、彼女のビジネス・エネルギー・産業戦略大臣であるリース・モブ氏は出席する予定だという。リース・モブ氏は、フラッキング、石油・ガス生産の拡大を支持し、公式の気候科学にさえ疑問を投げかけている。
さらに、トラス首相は、気候変動提唱者のチャールズ国王に対して、過去のCOPに皇太子時代に出席していたにもかかわらず、COP27への招待を断るよう進言している。
COP26の議長を務めたアロック・シャルマ内閣府特命担当大臣は、とにかく国王に出席してもらうよう呼びかけているとのこと。
アフリカ諸国:化石燃料プロジェクトの拡大推進!
Reutersによれば、アフリカ大陸のエネルギー担当トップであるアブー・ゼイド女史は、「Africa Oil Week 2022 Conference」で、次のように述べたという。
- アフリカ諸国は、来月エジプトで開催されるCOP27気候変動会議を利用して、『化石燃料を経済と電力アクセスの拡大に必要なもの』と見なす共通のエネルギーポジションを提唱する。
- 化石燃料を使わざるを得ない国があることは認識している。1つの解決策がすべてに適用できるわけではない。どれかを排除する時代ではなく、状況に応じて複数の選択肢の中から解決策を調整する時代である。
- アフリカ諸国が熱望していることは、経済が急成長し、競争力があり、工業化された国になることだ。
- アフリカは、太陽光、風力、水素の膨大な潜在能力を持つ「再生可能エネルギーのハブ」と考えられているが、サハラ以南の地域では約6億人が電気のない生活を送り、約10億人が調理用のクリーンエネルギーを利用できない状態にある。成長の基盤となる手頃なエネルギーが必要なのだ。
金融機関の動き:大銀行の離反の兆候?
2021年4月、国連気候変動対策・金融特使のマーク・カーニー氏(英イングランド銀行前総裁)とCOP26議長国は、UNFCCC Race to Zero運動と連携し、ネット・ゼロのための金融機関有志連合「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」を発足させた。
GFANZのメンバーには、45カ国以上から500社以上の金融機関が含まれている。GFANZの加盟企業は、国連が支援する「Race to Zero」運動の基準を満たさなければならない。
しかし、COP27を前にして、GFANZの活動は当初の目論見とは違った方向に進んでいる。
本年9月のClimate Change Dispatchでは、一部のウォール街の銀行(JPMorgan Chase, Morgan Stanley, Bank of Americaなど)が、国連の要求してくる脱炭素化の要求がますます厳しくなるため、GFANZの活動によって、銀行が法的リスクにさらされると懸念し、離脱の可能性をちらつかせているという。
U.S. Banks Threaten To End Support For UN Climate Edicts Over Legal Risks – Climate Change Dispatch
『GFANZのトラブル』というエッセイの中で、ロンドン・ビジネス・スクールのゴスリング氏は、「アセット・マネージャーは、GFANZの会員であることと顧客に対する受託者責任をどう整合させるかを考える必要がある」と語っている。
当該アセット・マネージャーは、「自分の組織が、2050年までにネット・ゼロを達成することを支持する」と誓約しているが、それが顧客の要求と整合するとは限らないからである。
一方、米国の金融機関は厳しい状況に置かれている。野党共和党の中には「サステナブル」と銘打った商品を激しく批判し、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する投資に反対するキャンペーンを張る議員が増えている。
また、民主党からは「気候変動に対する企業姿勢」を追及されている。JPMorgan Chase のジェイミー・ダイモンCEOの場合、下院の公聴会で「化石燃料からの撤退を約束しない。撤退すれば、アメリカにとって地獄への道になる」と、その追及を一蹴した。
ダイモンCEOは、以前、石油やガスの生産を抑制しようとする環境保護主義者を非難し、「そうした措置を取れば、発展途上国での石炭使用の増加につながるだけだ」と主張していた。「我々はこの問題を正しく理解していない。石油・ガスの会社に投資することは、CO2の削減につながる」と。
‘Road to hell for America’: JP Morgan CEO snaps back at Rep. Tlaib on fossil fuels
所感
COPでは、毎回多くの関係者が海外からジェット機で駆け付ける。交渉はまとまらず徹夜が続き、ぎりぎりの努力が「成果」を齎したと報道される。26回続いたCOPの成果は、ミレニアム以降それほどの気温上昇を見せていない大気温度と上昇を続けるCO2とである。
気温についてはパリ協定の基準点が「産業革命前」であり、この頃は「小氷河期」終わりに当たる。自然変動により地球は徐々に暖かくなり、現在の気温上昇へと繋がっていると捉えることもできる。
26回続いた会議で費やした費用の総額と排出したCO2はどれほどになるのであろうか? CO2を目の敵にしている環境原理主義者がオンライン会議を提唱して実行すれば、相当な金額が節約できる。それを世界の食糧問題や貧困、教育のために活用すれば、そちらの方がずっと有益であろうに。
アフリカ諸国の主張のように、自国の産業を興し経済成長させ少しでも生活しやすい国にするためには、成長の基盤となる手頃なエネルギーが必要である。『化石燃料を経済と電力アクセスの拡大に必要なもの』と見なす共通のエネルギーポジションも、彼らの成長・繁栄する権利を行使するためのものとして、十分に納得のいくものであり、COP27以降の展開にも影響を与えるであろう。
我が国もこうした途上国の声を真剣に受け止め、当初のエネルギー政策の目玉の一つであった、「我が国の先進的な石炭火力技術を海外に普及させる」作業を再開させてみてはどうだろうか。
世界には、旧型の火力設備で煤塵やSOx、NOxや水銀などをまき散らす設備を使っている企業は多い。それによって多くの人たちが健康を蝕まれている。我が国の先進的火力発電技術によって、高効率で低排出(HELE: High Efficiency Low Emissions )を実現し、そうした健康リスクも大幅に軽減できるはずである。

関連記事
-
アメリカとイスラエルがイランを攻撃し、イランがそれに反撃する形で、中東一帯に危機が広がっている。執筆現在で、ホルムズ海峡は事実上封鎖され、イランは米国の提示する停戦条件には全く応じないとしている。 海峡封鎖によってエネル
-
文藝春秋の新春特別号に衆議院議員の河野太郎氏(以下敬称略)が『「小泉脱原発宣言」を断固支持する』との寄稿を行っている。その前半部分はドイツの電力事情に関する説明だ。河野は13年の11月にドイツを訪問し、調査を行ったとあるが、述べられていることは事実関係を大きく歪めたストーリだ。
-
政府は電力改革、並びに温暖化対策の一環として、電力小売事業者に対して2030年の電力非化石化率44%という目標を設定している。これに対応するため、政府は電力小売り事業者が「非化石価値取引市場」から非化石電源証書(原子力、
-
日本の温室効果ガス排出は減少している。環境省はカーボンニュートラル実現について「一定の進捗が見られる」と書いている。 伊藤信太郎環境相は「日本は196カ国の中でまれに見るオントラックな削減をしている」と述べ
-
「東京は、水素でおもしろくなる。」 「この街を動かすエネルギーが、水素に変わってきています。誰もが、あたりまえに水素を使う。そんな日常が、すぐそこまで来ています。東京が水素シティになったとき、そこにはどんな景色があって、
-
「電気代がゼロになる」「月々の支払いが実質ゼロになる」といった家庭用の太陽光パネルの広告をよく目にする。 しかし、この一見お得な話とは、現行の電気料金体系の抜け穴を突くものであり、じつは他の家庭の犠牲のもとに成り立ってい
-
第6次エネルギー基本計画は9月末にも閣議決定される予定だ。それに対して多くの批判が出ているが、総合エネルギー調査会の基本政策分科会に提出された内閣府の再生可能エネルギー規制総点検タスクフォースの提言は「事実誤認だらけだ」
-
米ホワイトハウスは、中国などCO2規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素税」について、支持を見合わせている(ロイター英文記事、同抄訳記事)。(国境炭素税について詳しくは手塚氏記事を参照) バイデン大統領は
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















