中国製メガソーラーは製造時のCO2回収に10年かかる
以前、カリフォルニアで設置される太陽光パネルは、石炭火力が発電の主力の中国で製造しているので、10年使わないとCO2削減にならない、という記事を書いた。
今回は、中国で製造した太陽光パネルが日本に設置されるとどうなるか、計算した結果を紹介しよう。(詳しい計算は、別途研究ノートにまとめたので参照されたい。)
以下、太陽光発電容量1メガワットあたりで全て計算する。
- まず住宅用の場合、製造時に2190トンのCO2が発生する。これを使用することで、年間531トンのCO2が削減できる。すると4.1年で製造時のCO2が回収できることになる。なおここで削減できる電力のCO2排出係数は2020年の値である0.441kg-CO2/kWhを用いた。
- 次にメガソーラーの場合、製造時に3070トンのCO2が発生する。これを使用することで、年間662トンのCO2が削減できる。他方でメガソーラーは森林破壊をすることがある。ここでは1メガワットで2ヘクタールの森林が破壊されると考える。森林は1ヘクタール当たり302トンのCO2を蓄えており、毎年8.8トンのCO2を吸収するもの。製造時のCO2と森林破壊の両者を考慮すると、建設時のCO2を回収するのに5.7年かかる計算になる。
- 以上で電力排出係数として2020年の値を用いてきた。だが2030年の電源構成ではどうなるか。政府の計画値である250kg-CO2/kWhを用いて計算すると、CO2の回収にかかる年数は、住宅用で7.3年、メガソーラーでは10.1年になる。
つまり、中国製のソーラーパネルを使用すると(いまの世界のソーラーパネルのほとんどは中国製だ)、太陽光発電の建設時までのCO2排出量は多く、太陽光発電によってCO2を削減して取り返すためには、住宅用で7年、メガソーラーでは10年もかかるという計算結果になった。
以上の計算は概算であり、詰めるべきところは沢山ある。だがはっきり言えることは、パネル製造や森林破壊などによって建設時までに発生するCO2排出量をきちんと予測し、明示すべきだ、ということだ。
- 住宅用であれば、設置する事業者がその責を負うべきである。
- メガソーラーであれば、個々の発電所について、事業者が義務を負うべきである。
その上で、事業の妥当性を検討すべきだ。
もちろん、政府の太陽光発電支援策についても、建設時のCO2排出量を考慮して、今一度見直すべきである。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
日本原電敦賀発電所2号機の下に活断層があるか、そして廃炉になるかという議論が行われエネルギー関係者の関心を集めている。それをめぐる原子力規制委員会、政府の行動が、法律的におかしいという指摘。この視点からの問いかけは少なく、この論考を参考にして議論が広がることを期待したい。
-
広野町に帰還してもう3年6ヶ月も経った。私は、3・11の前から、このままでは良くないと思い、新しい街づくりを進めてきた。だから、真っ先に帰還を決意した。そんな私の運営するNPOハッピーロードネットには、福島第一原子力発電所で日々作業に従事している若者が、時々立ち寄っていく。
-
2017年1月からGEPRはリニューアルし、アゴラをベースに更新します。これまでの科学的な論文だけではなく、一般のみなさんにわかりやすくエネルギー問題を「そもそも」解説するコラムも定期的に載せることにしました。第1回のテ
-
中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)は、昨年5月に菅直人首相(当時)の要請を受けて稼動を停止した。ここは今、約1400億円の費用をかけた津波対策などの大規模な工事を行い、さらに安全性を高めようとしている。ここを8月初頭に取材した。
-
アメリカ人は暑いのがお好きなようだ。 元NASAの研究者ロイ・スペンサーが面白いグラフを作ったので紹介しよう。 青い曲線は米国本土48州の面積加重平均での気温、オレンジの曲線は48州の人口加重平均の気温。面積平均気温は過
-
ショルツ独首相(SPD)とハーベック経済・気候保護大臣(緑の党)が、経済界の人間をごっそり引き連れてカナダへ飛び、8月22日、水素プロジェクトについての協定を取り交わした。2025年より、カナダからドイツへ液化水素を輸出
-
米国はメディアも民主党と共和党で真っ二つだ。民主党はCNNを信頼してFOXニュースなどを否定するが、共和党は真逆で、CNNは最も信用できないメディアだとする。日本の報道はだいたいCNNなど民主党系メディアの垂れ流しが多い
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間