脱炭素より経済と安全保障を国民は望む:英国世論調査

2022年04月07日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

william87/iStock

今回は英国の世論調査の紹介。ウクライナ戦争の煽りで、光熱費が暴騰している英国で、成人を対象にアンケートを行った。

英国ではボリス・ジョンソン政権が2050年までにCO2を実質ゼロにするという脱炭素政策(英国ではネット・ゼロと呼ぶ)に熱心で、国内にあるシェール・ガス資源の開発をさせなかった。これを開発すれば、本来であれば、英国はエネルギーを自給できたはずであり、今日のエネルギー危機・生活費危機は起きなかった。

アンケート結果によると、英国の成人の41%が、ネット・ゼロが英国のエネルギー安全保障を弱め、ウクライナでの戦争を踏まえて再検討されるべきだと感じている。

これに対し、ネット・ゼロが英国のエネルギー安全保障を強化したと感じているのはわずか17%である。15%は「何も変わらない」と考えている。

 

また、英国のエネルギー政策の優先順位について尋ねたところ、51%が消費者にとって値頃であることが最も重要だと回答した。次いで国家の安全保障が26%であり、2050年までにネットゼロを達成することとしたのは僅か16%だった。

日本でも、脱炭素の名のもと、政府は石炭火力発電を削減しようとしている。だが、今後ロシアからの供給が不安定になり、世界的に天然ガスの争奪戦になって、価格はいっそう高騰しかねない。日本は、石炭火力発電をフルに活用することが、原子力の再稼働と並んで、安定で安価な電力供給にとって重要な選択肢になる。

日本でも、脱炭素と、経済性、安全保障のどれが大事か、英国同様のアンケートを取ってみたらよい。国民は何を望んでいるだろうか。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 北海道大停電について「出力ではなく周波数が問題だ」というデマが流れているので、テクニカルな話だが、事故の経緯をくわしく見てみよう。苫東厚真の3基は一挙に止まったわけではなく、地震直後には1号機が動いていた。読売新聞による
  • 東北電力についでBWR2例目の原発再稼動 2024年12月23日、中国電力の唯一の原子力発電所である島根原子力発電所2号機(82万kW)が発電を再開しました(再稼働)。その後、2025年1月10日に営業運転を開始しました
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では過去の地球温暖化は100年あたりで約1℃
  • 以前紹介したスティーブン・クーニン著の「Unsettled」の待望の邦訳が出た。筆者が解説を書いたので、その一部を抜粋して紹介しよう。 スティーブン・クーニンは輝かしい経歴の持ち主で、間違いなく米国を代表する科学者の1人
  • (前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か③) 結局、火力発電を活かすことが最も合理的 再エネの出力制御対策パッケージをもう一度見てみよう。 需要側、供給側、系統側それぞれの対策があるが、多くの項目が電力需給のバラ
  • 6月にボンで開催された第60回気候変動枠組み条約補助機関会合(SB60)に参加してきた。SB60の目的は2023年のCOP28(ドバイ)で採択された決定の作業を進め、2024年11月のCOP29(バクー)で採択する決定の
  • はじめに 12月15日閉幕したCOP24では2020年に始動する「パリ協定」の実施指針(ルールブック)が採択された。 我が国はCO2排出量削減には比較的冷淡だ。例えば、燃料の異なる発電所を比較検討した最新のデータ、201
  • ドイツの風力発電偏重で電力の価格が急上昇 アメリカ・テキサス州の記者、ロバート・ブライス氏のブログによると、2024年12月11日と12日の2日間、風力発電の大幅な低下および気温の低下による需要増によって、電力市場のスポ

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑