立ち上がれ日本、あなたと地域の協力で東北の瓦礫処理の推進を

2012年05月21日 12:00
ポール・ブルースタイン
ジャーナリスト・ノンフィクション作家(米ワシントン・ポスト紙 元東京特派員)

今年3月11日、東日本大震災から一年を迎え、深い哀悼の意が東北の人々に寄せられた。しかしながら、今被災者が直面している更なる危機に対して何も行動が取られないのであれば、折角の哀悼の意も多くの意味を持たないことになってしまう。今現在の危機は、あの大津波とは異なり、日本に住む人々が防ぐことのできるものである。

その危機とは、津波が宮城、岩手両県に残した2000万トンの瓦礫(がれき)処理の遅れによるものだ。現在までのところ、この瓦礫を処理しようとする取り組みは、放射能への非合理的かつ過剰な恐怖のために阻まれている。瓦礫に含まれる放射性物質が安全基準値内にあるという明白な科学的根拠があり、しかも瓦礫が福島県からのものでないにもかかわらず、日本国中の自治体が瓦礫処理への協力を拒んでいる。ここに来て、瓦礫処理に前向きに取り組もうする自治体が出てきてはいるが、 多くの自治体は、依然として、恐怖心をあらわにした市民の激しい抗議を目の当たりにして、自らも一緒に反対する役割を担わされていると感じているように見受ける。(そうした中で、先陣を切って受け入れを表明した東京都の行動は、賞賛されるべき例外だ。)

この問題は、東北の人々が既に負わされている震災の被害を深刻に悪化させかねない状況をもたらしているとさえ言える。被災地の人々は、自分たちが同胞の日本人に「汚染されている」と思われていると感じているに違いない。「汚染されている」ということ自体、正しくなく、侮辱的であるだけでなく、被災者の心的健康にひどい悪影響さえ及ぼしかねない。この国の人々がこうした非道な行為に対して立ち上がることがなければ、その非道な行為に積極的に加担した人と同じになってしまう。

私は一人の外国人居住者として、飽くまで謙虚な気持ちで、震災から一年という節目に被災地に寄せた哀悼の意が目に見えた形となることを願う日本の人々に、以下のような提案をさせていただきたい。

それは、県、市町村のレベルを問わず、あなたの住んでいる地域の地方自治体に「瓦礫処理を行うべきだ」という意志表示をしてはどうかというものだ。主張は、例えば、その地域選出の政治家が瓦礫処理を認めなければ、次の選挙で彼らの対抗勢力を応援するというようなことを述べるなどして、強ければ、強いほどよい。

政府も地方自治体も、瓦礫処理に反対する人々と向き合い説得する努力を続けている。しかし、こうした戦略には問題がある。政府も地方自治体も、瓦礫処理の計画を地域住民に丁寧に示すことが説得につながると考えており、一見その行為は全く理にかなっているように見える。しかしながら、実際は、瓦礫処理に反対する人々に放射能についての事実を説明し続けようとすることは、全く無意味な行為である。

専門的な研究レポートに目を通すなどして、放射能が一般に信じられているよりも、発がん性などにおいてはるかに低いものであるということを知っている人々もいる。そのような人たちに、瓦礫処理計画の説明をするのはたやすいことである。しかし、たとえ非常に低い水準であっても放射能を心から恐れている人々に、どんなに多くの表やグラフを用いて、東北の瓦礫の危険性が極めて低いということを証明しようとしても、彼らを説得することは決してできない。そうした人々は、各地の説明会を埋め尽くし、瓦礫焼却灰埋設の提案に賛成する人々の意見を消し去ろうとしているのである。

したがって、今、被災地以外に住む人々は、東北の人々に向けられた心ない仕打ちと戦うために立ち上がる必要性に迫られている。瓦礫の受け入れを拒むことが知識の欠如によるものであり、そしてそれが東北の復興を遅らせることにつながりかねないことだけをとっても、とても残念なことだ。しかし、中でも最悪なのは、この問題が被災地の人々の健康に悪い影響を与えてしまうということだ。

東北の人々が直面する、福島原発の危機によってもたらされた被害の中で最も危惧すべきは、心理的なものである。それは、自分や子供たちが病気になるのではないかという不安や、他からけがれていると思われるのではないかという懸念から、ストレスを感じたり、うつになったり、あるいは、将来について悲観的になったりするというものだ。

こうした問題を避けなければならないということは、チェルノブイリ原発事故の主要な教訓の一つだ。この事故の研究では、うつ病やアルコール依存症、不安障害、自殺などストレスに関連のある諸問題が、ウクライナの被災地域に住む人々の健康にとりわけ悪影響を及ぼす結果となったことが示されている。

東北の瓦礫処理問題を進んで共有し、解決に向けて協力姿勢を明確に示すことは、復興を加速させることに貢献するだけではない。大切な肉親や友人を失った子供たち、絶望を乗り越えようともがいている人々を後押しすることにもなる。瓦礫処理に協力することは、また、昨年3月の大震災において、自らの勇気と忍耐力をもって、近年日本が失った誇りを多少なりとも取り戻すことに貢献した被災者が被るであろう長期にわたる心的負担を減らすことにも役立つだろう。

「汚染を広めること」は愚かなことであるとして、瓦礫は被災地域に埋められるべきであると主張する人たちもいる。仮に東北に瓦礫を残すことが現実的であるとしても (瓦礫の量が膨大であるため、政府はそうではないと主張しているが)、そういった主張が被災者の心に与えるダメージを考えれば、それは思いやりに欠けた行為であると言わざるを得ない。

もちろん、処理のために各地に送られる瓦礫は、放射線量にとどまらず、慎重に検査されなければならない。津波により破壊された化学工場などが数多くあることを鑑みると、瓦礫の中にはもしかすると隔離された場所でなければ安全に埋設できない有害物質を含むものがあるかもしれない。しかし、日本の廃棄物処理技術が世界で最先端の水準にあることは確かである。もし、この国の産業廃棄物処理に従事している人々を信用できないなら、日本は震災の瓦礫処理以外に、はるかに大きな環境問題を抱えているはずである。

そして、瓦礫処理の問題は、日本で原発を利用し続けるか否かの議論とは関連付けられるべきではない。この問題についての見解がどうであろうと、私たちが東北の人々のために少なくてもできることは、支えることだ。それは共感し、思いやりをもって接するだけでなく、東北の人々が通常の生産的な生活に戻ることができる展望を持てるよう、意味あることをして、真に支援をすることだ。

多くの人達がそうしているように、我が家でも,食糧はできるだけ福島県から購入している。我々は「がんばるぱっく」 (福島の野菜、果物、味噌などが入ったもの) をこれまで三箱注文し、舌鼓を打った。昨年来食したりんご、桃、いちご、米のほとんどは福島県の農家のもので、私たちはそれらが完全に安全であると確信している。そうでなければ、小学生の息子達にそれらを食べさせるはずがない。

福島の食品を積極的に食べようと思えない方も、地元の自治体に対し東北の瓦礫処理を受け入れるよう要請することを検討していただきたい。私が住んでいる鎌倉市に瓦礫を処理する十分な能力があるかは定かではないが、たとえそれが気持ちとしか言えないようなほんの少しの量であっても、受け入れることができれば、住民はそれを名誉に思うはずである。

津波で放出された瓦礫は、今ではただのゴミにしか見えないかもしれない。しかし、これらの瓦礫は、想像の域をはるかに越える苦悩と悲しみに直面しても、冷静さを保ち、社会に対する高い意識を示すことで、世界の人々に感銘を与えた東北の人々のかつての大切な住宅、職場、学校や持ち物から生まれた瓦礫なのである。

私たちは、瓦礫のかつての所有者が受けるに値する敬意を払い、それらを日本各地で埋葬していくべきではないだろうか。

(ポール・ブルースティン氏は、ワシントン・ポスト紙の元東京特派員。現在は神奈川県鎌倉市に住みながら、ノンフィクション作家として、また米ブルッキングス研究所と国際政治改革研究センターの研究員として活動している。)

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ポール・ブルースタイン
ジャーナリスト・ノンフィクション作家(米ワシントン・ポスト紙 元東京特派員)

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