2022年の気候関連の死亡者数は100年前より98%減少した
前稿で何でも自然災害を気候変動のせいにする政治家が増えていると書いた。データに基づかない、科学を無視した振る舞いだ。
その一方で、気候危機論者に無視され続けているデータは数多い。
いつも分かり易い図をまとめるロンボルグが下図をフェイスブックに掲載してくれた。
「気候に関連した死亡」とあるのは自然災害による死亡数。洪水、日照り、暴風雨、山火事、異常高温などによるものだ。
折れ線は十年ごとの平均を示したもの。1920年から29年までの十年の平均から、2010年から2019年までの十年の平均をつなげたものだ。最後の3つの点は、各年の死亡数。
図から一目瞭然、気候に関連した自然災害で亡くなる人は激減した。その傾向はなお続いている。
2022年には、「自然災害が頻発している、気候変動のせいだ」、と言う報道がずいぶん流れた。だが実際には、2022年に洪水、干ばつ、嵐、山火事、異常気温などの気候関連の自然災害で死亡した人は100年前より98%も少なくなっている。
この災害のデータは、世界的に最も権威のあるデータベース、国際災害データベースEM-DATによるものだ。
このグラフが1920年から始まっているのは、初期の数十年間の報告については不確かなためだ。このことは、死者数の減少はこれでもなお過小評価になっていることを示唆する。
このように、気候関連災害で死亡する人数を見れば、それが劇的に減少していることは否定しようがない。これは、より経済的に豊かな社会こそが、よりよく人々を守ることができるからだ。
ロンボルグは述べる。
このことは、地球温暖化が存在しないという意味ではないし、いつか気候変動によって死者が出る可能性を否定するものでもない。地球温暖化は現実の問題であり、私たちは賢く解決すべきだ。
しかし、メディアの悪質な報道によるパニックは、子供も大人も同様に怖がらせるだけであり、私たちが賢く対処する助けにはならない。
このグラフは、我々の富の増大によって自然災害に対する適応能力が向上しており、それが気候変動による潜在的なマイナスの影響を大きく上回っていることを示している。
ロンボルグの言う通りだ。人類はますます災害に対して強靭になっている。これは本当に良い知らせだ。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
けさの日経新聞の1面に「米、日本にプルトニウム削減要求 」という記事が出ている。内容は7月に期限が切れる日米原子力協定の「自動延長」に際して、アメリカが余剰プルトニウムを消費するよう求めてきたという話で、これ自体はニュー
-
今年の8月初旬、韓国の電力需給が逼迫し、「昨年9月に起こった予告なしの計画停電以来の危機」であること、また、過負荷により散発的な停電が起こっていることが報じられた。8月7日の電気新聞や9月3日の日本経済新聞が報じる通り、8月6日、夏季休暇シーズンの終了と気温の上昇から供給予備力が250万キロワット以下、予備率が3%台となり、同国で需要想定と供給責任を担う韓国電力取引所が5段階の電力警報のうち3番目に深刻な状況を示す「注意段階」を発令して、使用抑制を呼びかけたという。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 今回は、ややマニアックな問題を扱うが、エネルギー統計の基本に関わる重要な問題なので、多くの方々に知っていただきたいため、取り上げる。 きっかけは「省エネ法・換算係数、全電源平均
-
前回の投稿ではエネルギー環境政策の観点から「河野政権」の問題点を指摘した。今回は河野太郎氏が自民党総裁にならないとの希望的観測に立って、次期総裁・総理への期待を述べる。 46%目標を必達目標にしない 筆者は2050年カー
-
12月22日に開催された政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、本部長を務める安倍晋三首相が来春までの温対計画策定を指示しました。環境省の中央環境審議会と、経済産業省の産業構造審議会の合同会合で議論が始まっています。
-
太陽光発電のCO2排出量は実はかなり多い、という論文が2023年7月4日付で無料公開された。(論文、解説記事)。イタリアの研究者、エンリコ・マリウッティ(Enrico Mariutti)によるもので、タイトルは「太陽光発
-
日本政府はCO2を2030年までに46%減、2050年までにゼロにするとしている。 前回、このような極端なCO2削減策が、太平洋ベルト地帯の製造業を直撃することを書いた。 今回は、特にどの県の経済が危機に瀕しているかを示
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間