脱炭素が妄想であることを示す図4選

HiddenCatch/iStock
米国マンハッタン研究所の公開論文「エネルギー転換は幻想だ」において、マーク・ミルズが分かり易い図を発表しているのでいくつか簡単に紹介しよう。
どの図も独自データではなく国際機関などの公開の文献に基づいている。
2050年に脱炭素なんて出来っこありません、ということを端的に示すものだ。
1. 太陽・風力は増えたといってもごく僅か
世界のエネルギー供給は増え続けている。太陽・風力が増えたといってもまだごくわずかだ(図の縦軸は10億石油等価トン/年)。世界は圧倒的に化石燃料に頼っている:
2. 所得上昇でエネルギーは増える
世界のエネルギー供給が増え続けているのは、所得が上昇するにつれて、一人当たりのエネルギー消費が増えるからだ。つまりこれからもどんどん増える。
世界中の多くの人々がより豊かになると、より良い医療から車や休暇まで、他の人々がすでに持っているものを欲しがるようになる。裕福な国に住む10億人は、世界の他の60億人に比べて、一人当たり5倍以上のエネルギーを使用している。裕福な国では、国民100人当たり80台の車が走っているが、他の地域では100人当たり数台しかない。世界人口の80%以上がまだ一度も飛行機に乗っていない。
3. シェール革命の方が太陽・風力より急激だった
太陽・風力発電が急激に拡大してきたとよく宣伝されるが、じつはシェールガス・オイルの拡大の方が急激で規模も大きかった。過去20年で革命が起きたのは再生可能エネルギーよりもむしろ化石燃料の方だった。
4. バッテリーは当分ガソリンに追いつけない
バッテリー未来予測として、半導体の「ムーアの法則」になぞらえて、指数関数的に性能が改善するようなことがよく言われるが、現実にはそんなことは起きていない。
図はバッテリーのエネルギー密度をガソリンと比べたもので、6%以下のところで停滞が続いている(なおこのエネルギー密度の比較は、電気自動車のモーターがガソリン自動車のエンジンよりも効率が高いことを考慮している。それでもこの程度、ということ):
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

関連記事
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ」を「カーボンニュートラル」と呼ぶ習慣が流行っているようだが、筆者には種々の誤解を含んだ表現に思える。 この言葉は本来、バイオマス(生物資源:
-
ウクライナ戦争の帰趨は未だ予断を許さないが、世界がウクライナ戦争前の状態には戻らないという点は確実と思われる。中国、ロシア等の権威主義国家と欧米、日本等の自由民主主義国家の間の新冷戦ともいうべき状態が現出しつつあり、国際
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)企業家が活躍、米国農業-IT、遺伝子工学、先端技術を使用 米国の農業地帯を8月に記者が訪問、その
-
小泉・細川“原発愉快犯”のせいで東京都知事選は、世間の関心を高めた。マスコミにとって重要だったのはいかに公平に広く情報を提供するかだが、はっきりしたのは脱原発新聞の視野の狭さと思考の浅薄さ。都知事選だというのに脱原発に集中した。こんなマスコミで日本の将来は大丈夫かという不安が見えた。佐伯啓思・京大教授は1月27日付産経新聞朝刊のコラムで「原発問題争点にならず」と題して次のように書いた。
-
エネルギー、原発問題では、批判を怖れ、原子力の活用を主張する意見を述べることを自粛する状況にあります。特に、企業人、公職にある人はなおさらです。その中で、JR東海の葛西敬之会長はこの問題について、冷静な正論を機会あるごとに述べています。その姿勢に敬意を持ちます。今回は、エネルギー関係者のシンポジウムでの講演を記事化。自らが体験した国鉄改革との比較の中でエネルギーと原子力の未来を考えています。
-
このタイトルが澤昭裕氏の遺稿となった論文「戦略なき脱原発へ漂流する日本の未来を憂う」(Wedge3月号)の書き出しだが、私も同感だ。福島事故の起こったのが民主党政権のもとだったという不運もあるが、経産省も電力会社も、マスコミの流す放射能デマにも反論せず、ひたすら嵐の通り過ぎるのを待っている。
-
24日、ロシアがついにウクライナに侵攻した。深刻化する欧州エネルギー危機が更に悪化することは確実であろう。とりわけ欧州経済の屋台骨であるドイツは極めて苦しい立場になると思われる。しかしドイツの苦境は自ら蒔いた種であるとも
-
シンクタンクのアゴラ研究所(所長・池田信夫、東京都千代田区)の運営するエネルギー調査機関GEPR(グローバルエネルギー・ポリシーリサーチ)は、NPO法人の国際環境経済研究所と3月から提携します。共同の研究と調査、そしてコンテンツの共有を行います。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間