CO2を規制したがる米国エリートと反発する庶民の分断

2024年02月06日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

baileystock/iStock

米国ラムスセン社が実施したアンケート調査が面白い。

一言で結果を言えば、米国ではエリートはCO2の規制をしたがるが、庶民はそれに反発している、というものだ。

調査は①一般有権者(Voters)、②1%のエリート、③アイビーリーグ、の3つの区分で行われた。こういう区分の調査はたぶん史上初であり、そのおかげで面白い調査になっている。

ここで1%のエリートとは、大学院を卒業しており、年収15万ドル以上で、人口密度の高い都市部にすむ(人口1平方マイルあたり1万人以上)人々のことである。

そしてアイビーリーグとは、その1%のエリートのうち米国の名門大学であるアイビーリーグの卒業生である。エリート中のエリートという訳だ。

調査結果は多岐にわたるが、3つだけ紹介しよう。

1. 気候変動対策のために、ガソリン、肉、電気を厳格に配給にするべきか?

一般有権者は63%が反対。しかしなんと、エリートは77%が賛成、アイビーリーグに至っては89%が賛成!

2.気候変動対策のために、年間何ドル払うか?

一般有権者は72%が100ドル以下。エリートは70%が500ドル以上!

3.気候変動対策として、禁止すべきものは?

ガスコンロ、ガソリン自動車、重要でない飛行機旅行、SUV、エアコンを禁止すべきだと答えたのは、一般有権者だといずれも13%から25%だと少数派だが、なんとエリートは53%から72%が禁止すべきだとしている。アイビーリーグはもっと多く、66%から81%が禁止すべきとしている!

ちなみにこのエリートのうち、エリート層の73%が民主党、14%が共和党だということだ。このこともあって、バイデン政権の支持率はエリートでは84%と高くなっているだが一般有権者の支持率は44%だ。

以上見てきたエリートと一般有権者の分断を、ラムスセンは「グランドキャニオン級」と表現している。まったくこの意見の隔たりには驚くばかりだ。

だがそれ以上に私が驚いたのは、自由の国アメリカのエリート層が、じつはCO2規制が大好きだということだ。もっとも、そう言いつつ、かれらはプライベートジェットで飛び回りプール付きの邸宅に住んで美食に明け暮れているのだと思うが。。

ケリー気候変動特使のように、米国を代表して日本にお説教するのは、たいていはこのエリートたちだから、日本人にとっては迷惑な話である。

日本で同じような調査をやったらどうなるのだろうか? 日本はエリートも庶民も一緒のような気もするが。。。

ひょっとすると気候変動に熱心なのは偏差値秀才だけなのかもしれない。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • あらゆる問題で「政治主導」という言葉が使われます。しかしそれは正しいのでしょうか。鳩山政権での25%削減目標を軸に、エネルギー政策での適切な意思決定のあり方を考えた論考です。GEPRの編集者である石井孝明の寄稿です。
  • 今年も夏が本格化している。 一般に夏と冬は電力需給が大きく、供給責任を持つ電力会社は変動する需要を満たすために万全の対策をとる。2011年以前であればいわゆる旧一般電気事業者と呼ばれる大手電力会社が供給をほぼ独占しており
  • 国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、主要国の電源別発電電力量を発表している。この2008年実績から、いくつかの主要国を抜粋してまとめたのが下の図だ。現在、日本人の多くが「できれば避けたいと思っている」であろう順に、下から、原子力、石炭、石油、天然ガス、水力、その他(風力、太陽光発電等)とした。また、“先進国”と“途上国”に分けたうえで、それぞれ原子力発電と石炭火力発電を加算し、依存度の高い順に左から並べた。
  • はじめに 原子力規制委員会は2013年7月8日に新規制基準を施行し“適合性審査”を実施している。これに合格しないと再稼働を認めないと言っているので、即日、4社の電力会社の10基の原発が申請した。これまでに4社14基の原発
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告を見ると、産業革命前(1850年より前)は、
  • 今年7月から施行される固定価格買取制度(FIT以下、買取制度)再生可能エネルギーで作られた電力を一定の優遇価格で買い取り、その費用を電気料金に転嫁する制度だ。
  • COP27が終わった。筆者も後半1週間、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連「気候変動枠組条約」締約国会合であるCOPの場に参加してきたが、いろいろな意味でCOPの役割が変貌していることを痛感するとともに、
  • 4月16日の日米首脳会談を皮切りに、11月の国連気候変動枠組み条約の会議(COP26)に至るまで、今年は温暖化に関する国際会議が目白押しになっている。 バイデン政権は温暖化対策に熱心だとされる。日本にも同調を求めてきてお

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑