CO2を規制したがる米国エリートと反発する庶民の分断

baileystock/iStock
米国ラムスセン社が実施したアンケート調査が面白い。
一言で結果を言えば、米国ではエリートはCO2の規制をしたがるが、庶民はそれに反発している、というものだ。
調査は①一般有権者(Voters)、②1%のエリート、③アイビーリーグ、の3つの区分で行われた。こういう区分の調査はたぶん史上初であり、そのおかげで面白い調査になっている。
ここで1%のエリートとは、大学院を卒業しており、年収15万ドル以上で、人口密度の高い都市部にすむ(人口1平方マイルあたり1万人以上)人々のことである。
そしてアイビーリーグとは、その1%のエリートのうち米国の名門大学であるアイビーリーグの卒業生である。エリート中のエリートという訳だ。
調査結果は多岐にわたるが、3つだけ紹介しよう。
1. 気候変動対策のために、ガソリン、肉、電気を厳格に配給にするべきか?
一般有権者は63%が反対。しかしなんと、エリートは77%が賛成、アイビーリーグに至っては89%が賛成!
2.気候変動対策のために、年間何ドル払うか?
一般有権者は72%が100ドル以下。エリートは70%が500ドル以上!
3.気候変動対策として、禁止すべきものは?
ガスコンロ、ガソリン自動車、重要でない飛行機旅行、SUV、エアコンを禁止すべきだと答えたのは、一般有権者だといずれも13%から25%だと少数派だが、なんとエリートは53%から72%が禁止すべきだとしている。アイビーリーグはもっと多く、66%から81%が禁止すべきとしている!
ちなみにこのエリートのうち、エリート層の73%が民主党、14%が共和党だということだ。このこともあって、バイデン政権の支持率はエリートでは84%と高くなっているだが一般有権者の支持率は44%だ。
■
以上見てきたエリートと一般有権者の分断を、ラムスセンは「グランドキャニオン級」と表現している。まったくこの意見の隔たりには驚くばかりだ。
だがそれ以上に私が驚いたのは、自由の国アメリカのエリート層が、じつはCO2規制が大好きだということだ。もっとも、そう言いつつ、かれらはプライベートジェットで飛び回りプール付きの邸宅に住んで美食に明け暮れているのだと思うが。。
ケリー気候変動特使のように、米国を代表して日本にお説教するのは、たいていはこのエリートたちだから、日本人にとっては迷惑な話である。
日本で同じような調査をやったらどうなるのだろうか? 日本はエリートも庶民も一緒のような気もするが。。。
ひょっとすると気候変動に熱心なのは偏差値秀才だけなのかもしれない。
■

関連記事
-
日本経済新聞は、このところ毎日のように水素やアンモニアが「夢の燃料」だという記事を掲載している。宇宙にもっとも多く存在し、発熱効率は炭素より高く、燃えてもCO2を出さない。そんな夢のようなエネルギーが、なぜ今まで発見され
-
スワッ!事故か!? 昨日1月30日午後、関西電力の高浜原子力発電所4号機で原子炉が自動停止したと報道された。 関西電力 高浜原発4号機が自動停止 原因を調査 「原子炉内の核分裂の状態を示す中性子の量が急激に減少したという
-
アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」。 今回のテーマは「アメリカの環境政策と大統領選挙」です。 アメリカではグリーン・ニューディールという大胆な地球温暖化対策が議会に提案され、次の大統領選挙とからんで話題にな
-
東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)の広域処理が進んでいない。現在受け入れているのは東京都と山形県だけで、検討を表明した自治体は、福島第1原発事故に伴う放射性物質が一緒に持ち込まれると懸念する住民の強い反発が生じた。放射能の影響はありえないが、東日本大震災からの復興を遅らせかねない。混乱した現状を紹介する。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では過去の地球温暖化は100年あたりで約1℃
-
緑の党には1980年の結成当時、70年代に共産党の独裁政権を夢見ていた過激な左翼の活動家が多く加わっていた。現在、同党は与党の一角におり、当然、ドイツの政界では、いまだに極左の残党が力を振るっている。彼らの体内で今なお、
-
GEPR・アゴラの映像コンテンツである「アゴラチャンネル」は4月12日、国際環境経済研究所(IEEI)理事・主席研究員の竹内純子(たけうち・すみこ)さんを招き、アゴラ研究所の池田信夫所長との対談「忘れてはいませんか?温暖化問題--何も決まらない現実」を放送した。
-
「2030年までにCO2を概ね半減し、2050年にはCO2をゼロつまり脱炭素にする」という目標の下、日米欧の政府は規制や税を導入し、欧米の大手企業は新たな金融商品を売っている。その様子を観察すると、この「脱炭素ブーム」は
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間