誰が大統領でも反ESGの米国共和党

2023年10月24日 06:40
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

LifestyleVisuals/iStock

米国保守系シンクタンクのハートランド研究所が「2024年大統領選の反ESGスコアカード」というレポートを発表した。大統領候補に名乗りを上げている政治家について、反ESG活動の度合いに応じてスコアを付けるというもの。

これを見ると共和党は誰が大統領になっても反ESGになることは決定的なようだ。

なぜなら、現在、大統領候補として名乗りを上げているうち、人気の上位5人を見ると、みな明確に反ESGの立場だからだ。

情報サイト538.comによれば、10月21日現在、共和党での大統領候補での人気上位5人とは、トランプ(56.8%)、デサンティス(13.7%)、ヘイリー(7.2%)、ラマスワミ(5.6%)、ペンス(3.7%)である。

以下、ハートランド研究所レポートから、各候補の発言を見てみよう。

1. ドナルド・トランプ(第45代アメリカ合衆国大統領)

このような業績不振の「覚醒した(woke)」金融詐欺は急進左派のゴミである。。それは本来は決して投資対象にはならないものだ。。ESGはあなたの退職金を急進左派の狂人に流すように設計されている。。ESGからアメリカ人を守らなければならない。

ドナルド・トランプ
Wikipediaより

2. ロン・デサンティス(フロリダ州知事)

ESGは産業・金融の機関を通じて、経済の力を用い、特定のイデオロギーを押し付けるエリートたちの試みである。

デサンティスは、フロリダ州における包括的な反ESG法案に署名した。また大統領選挙キャンペーンウェブサイトでは、ESGとの戦いを 5つの優先事項のうちの1つと位置付けている。

ロン・デサンティス
公式HPより

3. ビベック・ラマスワミ

ラマスワミは、ESGとグレート・リセットとの闘いを、2024年大統領選挙キャンペーンの最も重要な側面のひとつに掲げている。彼は、非ESG投資商品の提供を専門とする自身の資産運用会社、ストライブ・アセット・マネジメントを立ち上げたほどだ。ラマスワミはまた、ESGの問題点を論じた複数の著書も執筆している。

「覚醒した資本主義(Woke, Inc.)」の中で、ラマスワミはこう書いている。

ESG問題を非常に複雑にしているのは、かつて資本主義を敵視していた進歩主義者たちが今、法制定ではできなかったことを「市場」を通じて達成するためのツールとしてESGを利用していることだ。

ビベック・ラマスワミ
Wikipediaより

4. マイク・ペンス(前副大統領)

ESGは、選挙で選ばれたわけでもない官僚たちに、左翼的な価値観への固執に基づいて企業を格付けする権限を与えている。

バイデン大統領と政府規制当局は 、気分次第で制定される新しいESG規制によって、左翼過激派がアメリカのエネルギー生産を内部から破壊することを可能にしている。

マイク・ペンス
Wikipediaより

5. ニッキー・ヘイリー(前サウスカロライナ州知事)

ESGの正体を、企業社会主義と呼ぼう。必要なのは資本主義であって、企業が左翼に屈することではない。そうすれば、誰もが損をする。

パリ協定から再び離脱し、バイデン政権による石油とガスの生産制限を解除し、再生可能エネルギーへの補助金を廃止し、発電所と自動車の排気ガスに関する規制案を取り消す 。

ニッキー・ヘイリー
Wikipediaより

執筆時点において、ロバート・ケネディ・ジュニアが独立候補として出馬を表明したことで、民主党の票が割れることが予想され、大統領選は共和党が圧倒的に有利になっている。

まだ投票まで1年あるので結果は予断できないが、共和党の大統領ならば誰であっても反ESG、ということに間違いはなさそうだ。

ESGは米国の半分である共和党を完全に敵に回してしまっている。

さて日本はどうする?

 

 

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 前稿において欧州委員会がEUタクソノミーの対象に原子力を含める方向を示したことを紹介した。エネルギー危機と温暖化対応に取り組む上でしごく真っ当な判断であると思う。原子力について国によって様々な立場があることは当然である。
  • ドイツの景気が急激に落ち込んでいる。主原因は高すぎるエネルギー価格、高すぎる税金、肥大した官僚主義。それに加えて、足りない労働力も挙げられているが、これはちょっとクエスチョン・マークだ。 21年12月にできた社民党政権は
  • 拝啓 グーグル日本法人代表 奥山真司様 当サイトの次の記事「地球温暖化って何?」は、1月13日にグーグルから広告を配信停止されました。その理由として「信頼性がなく有害な文言」が含まれると書かれています。 その意味をグーグ
  • 北海道の地震による大停電は復旧に向かっているが、今も約70万世帯が停電したままだ。事故を起こした苫東厚真火力発電所はまだ運転できないため、古い火力発電所を動かしているが、ピーク時の需要はまかないきれないため、政府は計画停
  • 釧路湿原のメガソーラー建設が、環境破壊だとして話題になっている。 室中善博氏が記事で指摘されていたが、湿原にも土壌中に炭素分が豊富に蓄積されているので、それを破壊するとCO2となって大気中に放出されることになる。 以前、
  • 国の予算の使い方が、今批判を集めている。国の活動には、民間と違って、競争、市場による制約がないため、予算の無駄が生まれやすい傾向があることは確かだ。
  • テスラが新車を発表し、電気自動車(EV)が関心を集めている。フランスのマクロン大統領は「2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を停止する」という目標を発表した。つまり自動車はEVとハイブリッド車に限るということだが
  • パリ協定を受けて、炭素税をめぐる議論が活発になってきた。3月に日本政府に招かれたスティグリッツは「消費税より炭素税が望ましい」と提言した。他方、ベイカー元国務長官などの創立した共和党系のシンクタンクも、アメリカ政府が炭素

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑