小石河連合のその後:変節漢の脱原発空想
バラバラになった小石河連合
ちょうど3年前の2021年9月、自民党総裁選の際に、このアゴラに「小泉進次郎氏への公開質問状:小石河連合から四人組へ」という論を起こした。
https://agora-web.jp/archives/2053254.html
当時、小泉進次郎氏、石破茂氏、河野太郎氏は信条と気脈の通じ合うところをもって〝小石河連合〟と称される連携体制をとって、自民党総裁候補を河野氏一本に絞った。が、結果は思い通りにはならなかった。当時、小石河連合は当然のごとく脱原発を声高に謳った。

©️日テレNEWS
今回は3人がそれぞれの立場と思いで総裁選に立つ。河野氏と石破氏はすでに立候補表明した。河野太郎デジタル大臣は26日の立候補表明のなかで、本来の再エネ推進一辺倒かつ「脱原発」から、修正をはかり〝リプレース(建て替え)も選択肢〟とした。
国家のデジタル化のの行く末はデータセンターの拡充やAIの急速な発展にいかに対応できるかに大きく左右される。その上で安定かつ必要な時に必要な量の電力を24時間供給できる原発が不可欠であることは自明である。
また、立候補の準備を進める小泉進次郎元環境相は原子力発電所を認める立場への転換を鮮明にしているといわれる。しかし、小泉〝グレタ〟進次郎が急進的再エネ派から原発容認の現実派に進化するとはなかなか考えにくいし、バックには相変わらず『やればできる原発ゼロ』のオヤジさんが跋扈していている。今後の発信を慎重に見極めなければならない。
そして、石破氏は、24日の立候補表明において、エネルギー政策の軸として「原発ゼロに向けて最大限努力する」と宣った。
小石河連合というものは信念なき野合であったたことを3年をしてここに暴露しあえなくその化けの皮が剥がれてしまったのである。
変節漢の原発ゼロ
変節漢とは石破茂氏のことである。変節漢とは自分の主張をその都度都合よく易々と変える輩のことである。

©️NHK
上記2021年の論において、石破氏の変節漢たる所以を2点あげた。
- 自民党への裏切りを繰り返してきた。
- 地方行脚における住民との対話交流において自らの信念とは真逆の甘言を平気で弄する。
特にこの地方行脚の甘言弄は看過できない。なぜなら氏は〝地方創生〟を信義にし売りにしている――自身が鳥取の田舎出身であることをいいことに――が、それさえもその信に疑ありと思わざるを得ない。
私は、国家の安全保障や軍事に詳しいとされている石破氏が、それらと密接な関係にあるエネルギー安全保障そしてその重要なツールである原子力発電所の関係をないがしろにして原発ゼロを標榜するのはちゃんちゃら可笑しいと常々感じてきた。
空想にすがる原発ゼロ
石破氏が原発ゼロを明言したのは2021年の8月である。ジャーナリスト・青木美希氏とのインタビューに答えている。要点を押さえると下記のようになる。
――原発をゼロにしたいと思う理由は?
石破氏:再生可能エネルギーで、エネルギーの供給は可能だということです。(中略)
原発ゼロだと断言して政策を正面に掲げないのは、そこに至る道ずじをどうするんだというのを自分で納得できていないから。
――ゼロにしたいと思ったのは、原発の危険性がわかったからですか。
石破氏:ゼロにしなきゃいけないけれども、道筋を示さなければ政治家として責任を取れないでしょう。エネルギーが足りない、足りないんだったらと、そうならないようにしなければいけない。(後略)
氏の率直な思いがストレートに出ている。
再エネでエネルギー供給は可能と言い切り、それに重ねて、「ゼロにしなきゃいけないけれども、道筋を示さなければ政治家として責任を取れないでしょう」と言い切っている。
なんともいえずナイーブ極まりなく無責任な言質をさらけ出している。これではまるで原発ゼロという空想にすがり付いているだけではないか。どのようにしてゼロにするのか、その政策的な中身が空っぽである。いったい誰がこの男を政策通と呼ぶようになったのか。
政治家にして厚顔無恥・無策とはまさにこの男のことである。
この時からすでに3年の時がすぎた、今次総裁選出馬にあたって、石破氏はいったいどのような〝原発ゼロへの道筋〟その具体的なプランを獲得したのかを問いたいが、はなから無駄だと思う。無策であることがすでに透かし見えている。再エネ100%――原発ゼロを夢見る有象無象の一端にすぎない。これじゃあ全くもって再エネオタクの域を出ていない――骨抜きのエネルギー政策。
軍事オタクのなせる技なのか。まさか同じセンスとロジックで日本の安全保障や軍事を論じているのではあるまいな。
国家の舵取りを任せるに能わず
今、世界は2050年までに原子力発電を少なくとも現行の3倍にする方向で動いている。その背景には急進な再エネ拡張に走ったことでこれまでに積もった負の遺産と今後歩むべきエネルギー政策への冷徹な分析がある。
石破氏は先のインタビューでこうも答えている。
――首相が決めれば予算もつく。民間の力だけでは難しいかと。
石破氏:そうでしょう。そこに向けて国家予算をどう振り分けるかに、政治家は正面から向き合わなければならんでしょうね。
一方において、(エネルギーの)自給はどうするか。それだけじゃないよ。だけど、経済封鎖を受けてエネルギーが立ちゆかなくなるときに、どうするんだというのがある。エネルギーが逼迫したというのが、(かつての)戦争を引き起こした原因の一つでもある。「どう賄っていくの?」というのを、もっと自分の知識を深めたいと思う。
自分が首相になって原発ゼロ・再エネ100%を決めれば、それに向けて国家予算を編成すると言い切っている。また末尾では「もっと自分の知識を深めたい」とも。
しかし原子力発電がエネルギーセキュリティの根幹を野太くすること、再エネの拡充はお隣りの中国を利するばかりか、巡り巡って国家のセキュリティーの根幹を脆弱化してしまうという知識が一向に深まっていないようなのである。
こんな輩に国家の舵取りを任せるわけにはいかない。

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