大気中のCO2濃度:半数が10%以上と回答

2022年12月20日 06:50
アバター画像
短期大学教授

artisteer/iStock

CO2濃度を知っているのは10人に1人、半数は10%以上と思っている事実

2021~22年にかけて、短大生222人とその家族や友人合わせて計641人に、大気中の二酸化炭素濃度を尋ねた結果、回答者全体の約11%が0.1%未満の正解範囲の回答であったが、一方でCO2濃度を10%以上と認識している人々が58%と半数を超えていた。

空気の成分ついては、約80%の窒素と約20%の酸素と微量の二酸化炭素などから成ることや気体の性質について小学6年生で学び、中学校では気体の発生方法とともに、窒素78%、酸素21%、CO21%以下(約0.04%)を学ぶ。

正解者が少ない要因として、まず、「科学についての学び」が終わってから時間が経過し、その定着の機会がなかったこと、そしてもう一つの要因に、「CO2よる地球温暖化」についての多くの報道が影響していることが考えられる。

2000年以降、CO2濃度は上昇しているが、気温は上昇していないという事実

気象庁(JMA)HP掲載の、日本の3地点、綾里・南鳥島・与那国島のデータから、CO2濃度は1987年以降、いずれの地点においても上昇していること、また、ハワイ島での観測においても1958年以降上昇しており、その量は、63年間(1958~2021年)で99ppm(316→415ppm)の増加となっており、これより増加率は1.57ppm/年、またグラフの傾き等により、過去30年間のCO2増加率はほぼ一定であることが分かった。

また、日本の各観測所の月・年平均気温データ(気象庁HP掲載の各種データ・資料>過去の気象データ検索>観測開始からの月ごとの値を表示)を基に、集計・計算後、グラフ化(10年ごと(00~09年の平均))したものの一部(東京・大阪)が以下である。

これより、1940から2000年代、特にその間の1980から1990年代にかけてやや大きな上昇が見られるが、2000年代以降の気温の上昇は鈍化、もしくは下降しており、それは他の5カ所(日本:地方の岬や太平洋側島嶼部)でも同様であった。

このように、特に、近年のCO2濃度上昇と気温変化は大きく乖離している。東京や大阪においては、「最近暑くなった、この原因はCO2濃度の上昇による地球温暖化だ」という言説は成立していない。

科学リテラシーと科学的検証の重要性

日頃、学生たちに講義やアンケートを行うなかで、これまで学んだ科学が、「温暖化」を含めて日常生活にあまり生かされていないことが分かった。

例えば、水蒸気と水(水滴)と煙の違い(工場や発電所の煙突からの“白い煙”の多くは、排出口付近が透明で、またしばらくすると消えていくことから主に水蒸気である)や、中学・高校で学んだアルキメデスの原理(北極海などの海氷が溶けても海面は上昇しない)、氷河は移動している(したがって氷河先端では押し出されて自然と海に落ちていく。また、南極の棚氷も内陸部の氷床の重みにより”外側”に押し出される)などである。

「沈黙の螺旋理論(Spiral of Silence)」という言葉がある。これは、どの意見が多数派か少数派であるかをマスメディアが持続的に提示することで、無根拠に多数派の声は大きくなり、少数派は沈黙へと向かい、世論の収斂が起こるという理論である。

地球温暖化が世に出始めた1980年代は、気温の大幅な上昇が見られたと同時に、国際情勢や時代背景には、「OPEC・中東諸国支配からの脱却」や「原子力発電所の建設推進」があった。そして、その頃からすでに「二酸化炭素による地球温暖化」は科学の土俵からは離れ、政治・経済のフェーズに移行していた。

2000年代以降も、IPCCの気候予想モデルの科学的検証は十分に行われないまま、COPでの議論や相当額の費用を伴う国・企業の施策等が行われているが、今一度、科学のフェーズに戻し、これまで論じられてきたその根拠の検証が行われることを切に願うものである。

※ 本稿の詳細は「二酸化炭素による地球温暖化説の科学的根拠について」を参照ください。

This page as PDF

関連記事

  • 北海道寿都町が高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の文献調査に応募したことを巡って、北海道の鈴木知事が4日、梶山経済産業大臣と会談し、「文献調査」は『高レベル放射性廃棄物は受け入れがたい』とする道の条例の制定の趣旨に反する
  • NHKニュースを見るとCOP28では化石燃料からの脱却、と書いてあった。 COP28 化石燃料から「脱却を進める」で合意 だが、これはほぼフェイクニュースだ。こう書いてあると、さもCOP28において、全ての国が化石燃料か
  • 世の中には「電力自由化」がいいことだと思っている人がいるようだ。企業の規制をなくす自由化は、一般論としては望ましいが、民主党政権のもとで経産省がやった電力自由化は最悪の部類に入る。自由化の最大の目的は電気代を下げることだ
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 論点⑫に「IPCCの気候モデルは過去の気温上昇を再現でき
  • 前回の上巻・歴史編の続き。脱炭素ブームの未来を、サブプライムローンの歴史と対比して予測してみよう。 なお、以下文中の青いボックス内記述がサブプライムローンの話、緑のボックス内記述が脱炭素の話になっている。 <下巻・未来編
  • 日本の温室効果ガス排出量が増加している。環境省が4月14日に発表した確報値では、2013 年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、14 億 800 万トン(CO2換算)となり、前年度比+1.2%、2005年度比+0.8%、1990年度比では+10.8%となる。1990年度以降で最多だった2007年度(14億1200万トン)に次ぐ、過去2番目の排出量とあって報道機関の多くがこのニュースを報じた。しかし問題の本質に正面から向き合う記事は殆ど見られない。
  • 鹿児島県知事選で当選し、今年7月28日に就任する三反園訓(みたぞの・さとし)氏が、稼動中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)について、メディア各社に8月下旬に停止を要請する方針を明らかにした。そして安全性、さらに周辺住民の避難計画について、有識者らによる委員会を設置して検討するとした。この行動が実現可能なのか、妥当なのか事実を整理してみる。
  • サプライヤーへの脱炭素要請は優越的地位の濫用にあたらないか? 企業の脱炭素に向けた取り組みが、自社の企業行動指針に反する可能性があります。2回に分けて述べます。 2050年脱炭素や2030年CO2半減を宣言する日本企業が

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑