鉄アルミの輸出を守る為に国内排出量取引制度は本末顛倒

2025年05月10日 06:50
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

rkankaro/iStock

日本政府はEUの国境炭素税(CBAM)に対抗するためとして、国内排出量取引制度の法制化を進めている。

CBAMの矢面に立つのは日本ではなく、CBAMは世界を敵に回すために腰砕けになるであろうこと、CBAMを理由にして経済を破滅させる国内排出量取引制度の法制化を進めることは愚の骨頂であることを3回にわたり述べてきた。

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今回は、CBAMの対象になる鉄鋼(HS72)とアルミ(HS76)について、日本からの輸出先のシェアを見てみよう。元データは通関統計による。

日本から各国へのHS72(鉄鋼)輸出額(2023年)は、図のようになっている。EU27合計で24.43億ドルで、世界全体の7%に過ぎない。また日本から各国へのHS76(アルミニウム)輸出額(2023年)はEU27合計で2.36億ドル、世界全体の9%に過ぎない。

CBAMの他の対象製品はセメント、肥料、水素、希ガス、電力だが、これの日本からEUへの輸出額は鉄・アルミに比べると微々たるものである。

鉄・アルミについて、EUへの輸出にCBAMを課せられるとすれば、輸出事業者(自動車部品などを扱っていると推察される)にとっては勿論痛手だが、世界全体に占めるシェアは小さいから、業界全体として見ればそれほど大きなものにはならない。

この輸出に対するCBAMを無くすという理由で、日本経済全体に排出総量規制である排出量取引制度を導入するならば、日本経済、特に製造業は壊滅へ向かうだろう。全くの本末顛倒である。

データが語る気候変動問題のホントとウソ

 

 

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