日本が率先してE-ledgersを導入しないか心配:スコープ3と並存の懸念も

2026年10月25日 06:40

 (前回:ハーバード発「炭素会計革命」に待った! E-ledgers学術界バトル)

SDGs、ESG、TCFD、CDP、SBTi、そしてスコープ3。企業の環境担当を20年もやっていると、数年おきに様々な横文字の施策が降りかかってきます。

最初は必ず、「これが世界の潮流です」「対応しないと投資家から選ばれません」「サプライチェーンから排除されます」などと言って脅されます。そして中身が難しいほど、実施した後の効果測定が曖昧なほど、従業員への理解浸透が図れないほど、コンサルや研修、ITシステム導入、第三者監査や第三者保証といった新しい市場が次々と生まれます。

今度はE-ledgers/E-liabilityがやってきそうです。

E-ledgersには評価できる点があります。筆者は二十代の後半、日中はメーカーで半導体の研究者として働きながら夜間大学で会計学と地球環境問題を学び、卒論も「環境会計」をテーマに執筆しました。よって、財務会計の考え方を炭素会計へ応用しようというE-ledgersには強い関心を抱いています。また、複数の企業で環境施策の企画・立案を担当してきた実務者として、実測も削減も可能なスコープ1に特化している点も大いに賛同します。

だからこそ、理念の美しさや斬新さだけで無批判に受け入れるのではなく、この仕組みが本当に機能するのか、企業や社会にどのような便益と費用をもたらすのかを冷静に検証する必要があると考えています。

世界ではスコープ3離れが進んでいますが、我が国では今年4月から上場企業に対する義務化が始まりました。まずはこのスコープ3義務化をやめておかないと、今後輸入されてくるE-ledgers/E-liabilityまで重複して取り組まされる企業が出てきかねません。

日本企業はきわめて真面目です。海外から新しいルールが来ると、「そのルールに意味があるのか」より先に、「どう対応しようか?」と考えてしまいます。この意識を変えなければなりません。

必要なのはフォロワー思考ではなく、「大気中のCO2は何トン減るのですか?」「ESGが壊滅している状況でなんのメリットがありますか?」「売上や利益拡大、コスト削減につながるのですか?」と問いただすことです。

企業が取り組むべきなのは複雑怪奇な炭素パズルではありません。省エネ、歩留まり改善、設備の効率運用、技術革新など、CO2もコストも本当に減らす取り組みです。

今後、E-ledgersがどのような形で制度化・標準化へ向かうかは不透明です。しかし、炭素集計システムの導入、第三者保証・監査対応、E-ledgersを一から学ぶための授業料などなど、企業にとっての新たなコスト要因(推進派にとっては新たな、そして広大な市場形成)につながることが容易に想像できます。

あるかどうかも分からないリスクを針小棒大に煽り、手を変え品を変え海の向こうからやってくる脱炭素・サステナビリティ施策に対して、そろそろ産業界側が受け止め方を見直す時期に来ています。

理念として優れていることと、世界中の企業や地球環境にとって有益であることとは、必ずしも同義ではないこともまた、実務家として常に意識しています。その意味でも、E-ledgersは日本でも議論に値するテーマだと感じています。本稿がその議論の一助となれば幸いです。まだまだ勉強中のため、専門家からのご指摘や助言をお待ちしています。

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