「脱石油政策」から脱却を — 資源枯渇リスクは低下、緊急時対策からも必要に
(編集部より)GEPRはNPO法人国際環境経済研究所(IEEI)と提携して、相互にコンテンツを共有します。石油関連業の業界団体である石油連盟が組織として公表した文章を公開します。
日本は原発事故の影響によって、原子力以外のエネルギーの多様化を検討しなければなりません。2度の石油ショックの反省、そして地球温暖化への影響から石油を中心に、化石燃料の抑制策がこれまで行われてきました。
以下の文章の内容について、GEPRは全面的に肯定するものではありません。しかし、一つの意見として、読者の皆様の思索のきっかけにしていただければと思います。
GEPRは中立の立場から、エネルギーをめぐる多様な意見を紹介していきます。
(本文)
東日本大震災を契機に国のエネルギー政策の見直しが検討されている。震災発生直後から、石油は被災者の安全・安心を守り、被災地の復興と電力の安定供給を支えるエネルギーとして役立ってきた。しかし、最近は、再生可能エネルギーの利用や天然ガスへのシフトが議論の中心になっており、残念ながら現実を踏まえた議論になっていない。そこで石油連盟は、政府をはじめ、広く石油に対する理解促進につなげるべくエネルギー政策への提言をまとめた。
まず重要なポイントは、日本の一次エネルギー供給量の4割は石油であり、震災などにより電力や都市ガスのような系統エネルギーが止まったときにその替わりを果たせるのは、現時点では、分散型エネルギーである石油だけという事実だ。これまでは、中東依存からの脱却や温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)排出削減という観点から、できるだけ石油を使わない政策がとられてきた。しかし、今回の震災を機に、緊急時対応力や供給安定性(200日分以上の備蓄でリスク軽減)などの観点から、石油の再評価をお願いしたい。
次のポイントは、資源枯渇リスクが低下しているという点だ。最近、「シェールガス革命」が注目されているが、同じ技術でシェールオイルの開発が可能になり、石油の埋蔵量が飛躍的に増加する可能性が出てきた。IEA(国際エネルギー機関)の見通しでは、世界の石油資源量は、オイルサンドなどの非在来型資源を含めると、少なくとも150年分以上あると見られている。石油資源が近い将来に枯渇する懸念は大きく低下している。したがって、今後はこれまでの脱石油政策を見直し、石油の効率的利用を進めることが重要である。
石油はエネルギー供給の「最後の砦」
日本は戦後、災害時を含めてもエネルギーに困ることはなかった。これは、石油が電力や都市ガスのような系統エネルギーが止まった時の代替を果たしてきたためだ。一方で、石油需要はピークの1999年から2割も減り、油槽所やガソリンスタンドなどのサプライチェーンが縮小している。
東日本大震災では、他地域との連携などにより、約2週間後には東北地方全域に石油を供給できる体制を何とか回復できた。しかし、このまま需要が減り、サプライチェーンの縮小が続けば、今後は非常時に供給できない所が出てくることが懸念される。現時点では、系統エネルギーのバックアップを果たす「最後の砦」は石油しかない。ところが現在の予測では、石油需要は人口減少などの影響で、10年後にはさらに3割減少すると見込まれている。
日本には石油の供給インフラがすでに整っており、緊急時対応という点からも、多大な費用をかけて新たにエネルギーインフラを整備するよりも、全国に石油を供給できる体制を残して次世代に引き継ぐ方が、国民経済的にロスが少ない方策だと言える。
一方で、石油のサプライチェーンを健全に維持していくには一定の需要が不可欠になる。需要が今のまま減り続ければ、早晩、石油の安定供給に支障を来たし、緊急時に頼るエネルギーがなくなることになる。そうしないためにも、①暖房・給湯での石油利用の推進、②ガソリン・軽油とその他自動車用燃料・エネルギーとの課税の公平化、③過度な天然ガスシフト政策の見直し――の3点を提案している。
今後、人口減少や高効率機器の普及などにより石油需要は減少が見込まれるが、以上の対策によって需要の確保を図り、2020年の燃料油の需要を現在の約1割減の年間1億8000万kl程度にすることができれば、サプライチェーンの機能を健全に維持できると見ている。
エネルギーの途切れない社会の実現には石油が不可欠
電力不足が懸念されるなか、電気は照明などの代替のきかない用途で優先使用し、暖房や給湯については、緊急時対応力の強い石油の利用を促進するために、石連では新たな取り組みを開始した。例えば、災害対応型の高効率石油給湯機の普及や、学校・公民館など避難所になりうる公的施設での石油利用、さらに石油を燃料とする自家発電システムの普及と平時利用などである。
輸送部門では、電気自動車や天然ガス自動車に使用される電気やガスには、輸送用燃料としての課税がされていない。道路維持などの社会的費用の公平な負担という観点などから、課税の公平性を確保すべきではないだろうか。ちなみに、原発の再稼働が見込めず、今後、電源が火力中心になると考えると、最新のガソリン車のCO2排出量は電気自動車と遜色ない。
また、競争を行う際の平等を確保する観点から、天然ガスのみを優遇する政策は見直しが必要である。緊急時対応の面でも、今回の震災では、電力や都市ガスが途絶するなかで、エネルギー途絶が人命に直結する病院なども、石油供給で何とか非常時を乗り切った事実が忘れられている。
石連は自らの取り組みを進める一方で、運輸、民生、産業の各部門で、消費者が少なくとも同じ土俵でエネルギーを選択できるように、公平化を要望している。
一方、電力供給という面でも、石油火力は緊急時対応力や供給弾力性に優れるという特性がある。そこで、石油火力を系統電源の安定供給の「最後の砦」と位置づけ、平時から安定的な稼働をお願いしたい。猛暑や厳冬、渇水対策、他電源のバックアップや再生可能エネルギーの出力安定化、緊急時の供給などの対応も含め、石油火力を発電電力量の15%程度の活用があれば、必要なサプライチェーンは維持できるものと見ている。
火力発電所の新増設による国民負担の増加を避ける観点からも、既存の石油火力の安定的な稼働は有効である。現状の石油火力は稼働率が低く、既存の桟橋・タンクの有効活用の観点から老朽化した石油火力のリプレースを進めていただきたい。経済性やCO2削減の観点だけでなく、エネルギー安全保障の面も含めて、総合的な検討が望まれる。
全国のガソリンスタンドは毎年1500軒ずつ閉鎖され、ピーク時の6万軒から今では3万8000軒まで減少し、地方ではガソリンスタンドのない地域が出てきている。寒冷地における灯油の配送も懸念される。そのような社会にしないように、エネルギーが途切れない社会を維持するためにも、脱石油政策を転換し、石油の効率的利用を進め、基幹エネルギーとして位置付けることが必要である。
(2012年6月25日掲載)
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