持続可能という言葉を知らない枝野経産大臣
(GEPR編集部より)提携する国際環境経済研究所(IEEI)のコラムを紹介する。(IEEI版)
「持続可能な発展(Sustainable Development)」という言葉が広く知られるようになったのは、温暖化問題を通してだろう。持続可能とは、簡単に言うと、将来世代が、我々が享受している生活水準と少なくとも同レベル以上を享受できることと解釈される。数字で表すと、一人当たり国内総生産(GDP)が同レベル以上になるということだ。
英国政府の委託で温暖化問題の経済への影響を分析したニコラス・スターン卿が2006年に発表した「スターンレビュー」は、温暖化により将来のGDPが大きく下落する可能性があると指摘した。直ぐに対策を取るコストのほうが将来のGDPの下落額より小さいとの主張だったが、GDPの現在価値への割引率がゼロに近いなど、影響の大きさを大きく見せているとの批判があった。いずれにせよ、温暖化が持続可能な発展を脅かすこともあるとの見方だった。
持続可能な発展が脅かされるのは、温暖化・環境問題だけではない。エネルギー政策も持続可能な発展を脅かすことがある。
いま、政府は2040年までの原発ゼロを目指し、今から2030年に向け一次エネルギーを19%、電力消費を10%削減する政策を立てている。これを実現すれば、持続可能な発展が達成されることはない。経済発展のためにはエネルギーが必要だ。日本では、経済が成長する時にはエネルギー・電力消費は増加してきた。日本の製造業のエネルギー効率改善努力は図-1が示すように、限界に来ている。
1990年以降、工業出荷額と製造業の名目GDPは下落を続けているが、エネルギー、電力消費は減少していない。コストを引き下げる必要性があってもエネルギーコストはもう下げられなかったのだ。エネルギー供給の保証がない国で投資を行う製造業があるはずもない。結局GDPは下落する。

図1 工業出荷額・エネルギー消費等の推移
枝野幸男経済産業大臣が著書で主張するように、製造業から医療、福祉を中心にサービス業に産業構造を転換すれば、エネルギー消費を削減することは可能かもしれない。ただ、GDPも下落する。サービス業の創り出す一人あたりの付加価値額は製造業の付加価値額より低く、労働人口が増加しない日本では、全体の付加価値額、GDPも下落せざるを得ない。
持続可能な発展は達成できそうもない。当たり前かもしれない。経済産業大臣が「日本では近代化のひずみが出てきたから経済発展は無理」と主張している国では、発展が実現される有効な戦略が政府により策定される筈もない。国家戦略担当大臣と経済産業大臣が持続可能な発展という言葉を知っていたら、革新的エネルギー・環境戦略は違う形になっていただろう。
ちなみに、平均給与は消費者物価指数以上に下落している。図‐2だ。大臣達は知っているのだろうか。

図2 消費者物価指数と平均給与の推移
(2012年11月19日掲載)
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