ドイツ緑の党が消滅:実はマトモな「極右」のエネルギー政策

2024年09月11日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

NHKより

ドイツのチューリンゲン州で州議会選挙が行われた。得票率は図1の通り。ドイツ連邦の連立政権与党である社会党(SPD)、緑の党(Grune)、自民党(FDP)が大惨敗。躍進したのはドイツでも日本でも大手メディアからは極右扱いされている「ドイツのための選択肢(AfD)」。

図1 チューリンゲン州選挙の得票率
出典:ドイツ第一放送

議席に至っては、緑の党は何とゼロとなり、消滅!

図2 チューリンゲン州選挙の議席数
出典:ドイツ第一放送

やはり選挙があったザクセン州でも結果はほぼ同様だった。ザクセン州もチューリンゲン州も旧東独で、日本ではあまりなじみが無いが、歴史ある由緒正しい地域であることを川口マーン惠美さんが書いている。

さて極右扱いされているAfDだが、そのエネルギー政策を見ると極めてマトモだ。

党のホームページでその政策を見ると、

  • 仮説的な気候モデルに基づく政策を止める
  • 再エネ推進を止める
  • 省エネ推進を止める
  • 原子力廃止を止める

となっている。(文末に機械翻訳を付けておく)。

これまでドイツは「エネルギーヴェンデ(エネルギー転換)」をするとして、再エネと省エネを強力に推進する一方で、原子力と石炭火力を廃止してしまった。起きたことはエネルギー価格の高騰であり、庶民の生活は苦しくなり、産業はドイツから逃げ出している。この愚かな「エネルギー転換」を全て止めるというのがAfDの方針だ。

日本でも大手メディアはAfDを極右扱いしているが、これだけ多くの人々に支持されている政党を極右とレッテル貼りすることには違和感がある。ごく普通の人々がその政策の多くに共鳴するからこそのここまで高い得票率であろう。

緑の党が信奉するエネルギー転換ではなく、それを全面的に廃止すると表明しているAfDこそを、チューリンゲン州民は圧倒的に選んだのだ。

これからもドイツでの選挙は続く。ドイツの「エネルギー転換」はいつ消滅するのだろうか?

(以下、AfDホームページからエネルギー政策の部分を機械翻訳)

12. エネルギー政策

気候保護政策:迷走を止め、環境を守れ
地球が存在する限り、気候は変化し続ける。ドイツ政府の気候保護政策は、まだ証明されていない仮説的な気候モデルに基づいている。
再生可能エネルギー源法(EEG)」は国家計画経済であり、社会的市場経済からの逸脱である。それ以外の非市場的な発電所には、「気候保護」を理由に多額の補助金が出される。その結果、国民と経済から少数の補助金獲得者への巨大な富の再分配が行われている。
したがってAfDは、EEGを代替することなく廃止することに賛成する。AfDは、欧州法に反し違憲とされたEEGを連邦憲法裁判所で見直すようキャンペーンを展開する。

省エネ条例と再生可能エネルギー熱法の廃止
建物の所有者、住宅所有者、テナントに対して、建物の断熱対策や省エネルギー対策を求める政府のパターナリズムは終わらせなければならない。省エネ条例(EnEV)と再生可能エネルギー熱法(EEWärmeG)は、建築費の急激な上昇を招き、豪華な改修を正当化する理由となっている。その結果、多くのアパートの家賃は、中・低所得者にとってはほとんど手の届かないものになっている。AfDは、テナントとオーナーを保護するために、EnEVとEEWärmeGを代替なしに廃止することに賛成している。

バイオエネルギー:補助金の廃止、優先的なフィードインの停止
EEGを廃止し、バイオガス発電所からの電力への補助金と優先給電を廃止することに賛成する。割当制度によるバイオ燃料への補助金も廃止しなければならない。

原子力:代替エネルギーの研究-寿命延長が実施されるまで
2002年と2011年に行われた原子力発電の段階的廃止という性急な決定は、客観的に正当化されたものではなく、経済的に損害を与えるものであった。電力供給が十分に確保されていない限り、AfDは、現在も稼働中の原子力発電所の運転期間を暫定的に延長することに賛成する。
私たちは、原子炉や発電所の技術だけでなく、原子力エネルギーに関する研究も再認可したいと考えている。必要な安全基準が遵守されなければならないことは言うまでもない。しかし、原子力の利用はそれ自体が目的ではなく、将来的にはその代替も考えられる。そのため、他のあらゆるエネルギー形態も精力的に研究され続けなければならない。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 今回は、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文を紹介する。 原題は「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」、著者はGautam Kalghatgi博士、英国
  • 政府は内閣府に置かれたエネルギー・環境会議で9月14日、「2030年代に原発の稼動をゼロ」を目指す新政策「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。要旨は以下の通り。
  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前稿で「脱炭素社会法」には意味がないと述べた。 その根拠として、 実測データでの気温上昇率は100年当り0.7〜1.4℃しかなく、今世紀末までの80年足らずの間に3〜5℃もの気
  • 東北電力原町火力発電所(福島県南相馬市)を訪れたのは、奇しくも東日本大震災からちょうど2年経った3月12日であった。前泊した仙台市から車で約2時間。車窓から見て取れるのはわずかではあるが、津波の爪痕が残る家屋や稲作を始められない田んぼなど、震災からの復興がまだ道半ばであることが感じられ、申し訳なさとやるせなさに襲われる。
  • G7気候・エネルギー・環境大臣会合がイタリアで開催された。 そこで成果文書を読んでみた。 ところが驚くことに、「気候・エネルギー・環境大臣会合」と銘打ってあるが、気候が8、環境が2、エネルギー安全保障についてはほぼゼロ、
  • 国連気候変動枠組み交渉の現場に参加するのは実に2 年ぶりであったが、残念なことに、そして驚くほど議論の内容に変化は見られなかった。COP18で、京都議定書は第2約束期間を8年として、欧州連合(EU)・豪などいくつかの国が参加を表明、2020年以降の新たな枠組みについてはその交渉テキストを15年までに固めることは決定した。
  • 需給改善指示実績に見る再生可能エネルギーの価値 ヨーロッパなどでは、再生可能エネルギーの発電が過剰になった時間帯で電力の市場価格がゼロやマイナスになる時間帯が発生しています。 これは市場原理が正常に機能した結果で、電力の
  • 有馬純 東京大学公共政策大学院教授 今回のCOP25でも化石賞が日本の紙面をにぎわした。その一例が12月12日の共同通信の記事である。 【マドリード=共同】世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は11日、地球温暖

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑