今週のアップデート — 現実的エネルギー論を語る(2013年7月1日)

2013年07月01日 15:30

今週のアップデート

1)原発再稼動遅れによる9兆円の損害 — 精神論抜きの現実的エネルギー論(上)

2)原子力の未来、政治の意思表明を — 精神論抜きの現実的エネルギー論(下)

GEPRの運営母体であるアゴラが運営するインターネット放送の「言論アリーナ」。6月25日の放送は「原発はいつ再稼動するのか–精神論抜きの現実的エネルギー論」でした。この放送から、問題点を検討した(上)と解決策を考える(下)の2つの記事をまとめています。

参加者は国際環境経済研究所(IEEI)所長の澤昭裕氏、東京工業大学助教の澤田哲生氏で、司会はアゴラ研究所の池田信夫所長が務めました。澤氏は経産省を経て、現在はIEEIや、21世紀経済研究所で研究活動をしています。澤田氏は原子力工学の専門家で、一般向け啓蒙活動でも知られています。現実派の語る原子力の論点を、ぜひ参考にしてください。

3)電気料金値上げによる関西地域の製造業への産業影響

RITE(公益財団法人地球環境産業技術研究機構)の本間隆嗣氏、秋元圭吾氏による調査リポート、「関西地域における電気料金値上げによる製造業への影響分析」の要約です。

電気料金の値上げは、家庭における電気代上昇の影響が注目されがちですが、実際には、産業への影響は大変大きく、それに伴って雇用喪失につながる懸念が大きいと考えられます。

電気料金値上げによる関西地域合計の電気代増分は、製造業の約2万3000人分の現金給与に相当します。原発を止めることによる波及的な負担を、私たちは認識すべきでしょう。

今週のリンク

1)米エネルギー政策には原発も必要

6月24日の英紙フィナンシャルタイムズ社説の翻訳。掲載は日本経済新聞。米国で原発の廃炉の動きが広がっていることを指摘した上で、それでもエネルギー源を多様にするため原発が必要ではないかと指摘しています。

2)米大統領、温暖化防止へ「中印と協議」–行動計画を発表

日本経済新聞6月26日記事。オバマ大統領が25日、地球温暖化問題での行動計画を発表しました。石炭使用の抑制、再生可能エネルギーへのてこ入れ等を指摘しています。

3)オバマ政権の気候変動対策は、ガスのシフトを加速する

エネルギー通信社プラッツの6月25日の記事。原題は「Obama’s climate plan to boost gas demand: former White House adviser」。オバマ政権の温暖化天然ガスシフトを加速し、温暖化には役立たないと批判しています。

4)原子力規制委員会の職員数「2倍に」–田中委員長

読売新聞6月26日記事。原子力規制委員会が、職員数を2倍にして、原発再稼動の審査を早めようという構えを示しています。原発の審査のスピードが早まることが期待されますが、その訓練は一朝一夕ではできません。

5)司令塔不在の原子力政策

産経新聞6月30日記事。井伊重之論説委員。原子力政策の検討が自民党政権でも止まっている現状を分析。早急な対応を訴えています。

This page as PDF

関連記事

  • 今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが
  • 毎朝冷えるようになってきた。 けれども東京の冬は随分暖かくなった。これは主に都市化によるものだ。   気象庁の推計では、東京23区・多摩地区、神奈川県東部、千葉県西部などは、都市化によって1月の平均気温が2℃以上、上昇し
  • 東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所を5月24日に取材した。危機的な状況との印象が社会に広がったままだ。ところが今では現地は片付けられ放射線量も低下して、平日は6000人が粛々と安全に働く巨大な工事現場となっていた。「危機対応」という修羅場から、計画を立ててそれを実行する「平常作業」の場に移りつつある。そして放射性物質がさらに拡散する可能性は減っている。大きな危機は去ったのだ。
  • 引き続き、2024年6月に米下院司法委員会が公表した気候カルテルに関する調査報告書についてお届けします。 (前回:「ESGに取り組まないと資金調達ができない」はフェイクだと米下院が暴露) 今回は少しだけ心温まるお話をご紹
  • はじめに 原子力にはミニトリレンマ[注1]と呼ばれている問題がある。お互いに相矛盾する3つの課題、すなわち、開発、事業、規制の3つのことである。これらはお互いに矛盾している。 軽水炉の様に開発済みの技術を使ってプラントを
  • 2025年7月31日の北海道新聞によると、「原子力規制委員会が泊原発3号機(後志管内泊村)の審査を正式合格としたことを受け、北海道電力は今秋にも電気料金の値下げ幅の試算を公表する」と報じられた。北海道電力は2025年8月
  • 朝日新聞に「基幹送電線、利用率2割 大手電力10社の平均」という記事が出ているが、送電線は8割も余っているのだろうか。 ここで安田陽氏(風力発電の専門家)が計算している「利用率」なる数字は「1年間に送電線に流せる電気の最
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑