今週のアップデート — 海水ウラン、利用研究の現状(2013年7月29日)
アゴラ研究所の運営するエネルギー研究機関GEPRはサイトを更新しました。
1) 期待される海水からのウラン捕集研究の現状〜日本の豊かな海の活用法
独立行政法人日本原子力研究開発機構の研究者である瀬古典明氏の寄稿です。陸上のウランの可能な利用料は約100年以内とされています。しかし、海水からウランを補集する研究が、進んでいます。日本の海がウラン、そして他の鉱物資源獲得の場になる可能性があります。
実は使用済核燃料を利用してエネルギー源にする核燃料サイクルは、ウラン資源の枯渇が推進理由の一つです。この研究が深まり、海水ウランの商業利用が実用化されれば、その前提が覆る可能性があります。
2) 海外の太陽、風力エネルギー資源の利用拡大を図ろう(上)(下)
提携する国際環境経済研究所(IEEI)の塩沢文朗主席研究員(元内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当))の論考です。日本だけの自然エネルギーでは、気象条件から利用量に限界があります。その解決策として、水素などによるエネルギー運搬の可能性を紹介しています。
3)おやおやマスコミ — 新聞はエライのか!活断層問題から考える
GEPRは日本のメディアとエネルギー環境をめぐる報道についても検証していきます。エネルギーフォーラム7月号の記事、ジャーナリスト中村政雄氏のコラムを転載します。中村様、エネルギーフォーラム関係者の皆様に感謝を申し上げます。
今週のリンク
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会。原子力の関係者などでつくる団体の公開シンポジウム。8月3日開催です。JR東海の葛西敬之会長、日本GEPRに寄稿いただきました金子熊夫氏など、原子力をめぐる識者が集います。GEPRではシンポジウムの報告をする予定です。
今回掲載のコラムでは、再生可能エネルギーを使ってつくった電気を水素にして運搬するという構想が紹介されました。千代田化工建設が簡易な水素運搬技術を開発しています。同社による技術紹介のサイトです。再エネの普及で、日本企業の技術力に期待しましょう。
毎日新聞7月26日記事。原子力規制委員会は、重要な問題である活断層の検証について、委員会の決定ではなく、メディアに委員の個人的見解を伝えています。同委員会は、一連の活断層騒動を含めて、同委員会の規制の適用、運営方法には、多くの問題があります。
関西電力機関誌に掲載された論文。フランスの原子力規制の背景にある思想を同国元高官が紹介しています。仏では06年設定の安全基準を、事業者の体力や原発の状況に応じてまだ全適用していないそうです。そして事業者との対話を重視するそうです。独善的と批判を集める日本の原子力規制には、大いに参考になるでしょう。
7月27日掲載の読売新聞社説。汚染水が東電福島第一原発から漏れだしています。その量は微量ではあるものの、東電はその流失、さらに公表で手間取るなどのミスを連発しています。その反省、さらに政府の支援による事態の改善を訴えています。この考えは妥当でしょう。
NHK7月23日放送。放射性物質の除染、産業技術総合研究所のグループが、約5兆円になるとの試算を示しました。政府は費用を示していません。コストと効果についての検証が必要です。

関連記事
-
2025年7月15日の日本経済新聞によると、経済産業省は温泉地以外でも発電できる次世代型の地熱発電を巡り、経済波及効果が最大46兆円になるとの試算を発表した。 次世代地熱発電、経済効果は最大46兆円 経産省が実用化に向け
-
「脱炭素社会」形成の難問 アポリアとは、複数の理論や議論のうちどれが正しいのかについて合意ができない状態を表わすギリシャ語であるが、英語(aporia)でもフランス語(aporie)でも使われている。ともに「行き詰り」と
-
「CO2から燃料生産、『バイオ技術』開発支援へ・・政府の温暖化対策の柱に」との報道が出た。岸田首相はバイオ技術にかなり期待しているらしく「バイオ技術に力強く投資する・・新しい資本主義を開く鍵だ」とまで言われたとか。 首相
-
国際環境経済研究所の澤昭裕所長に「核燃料サイクル対策へのアプローチ」を寄稿いただきました。
-
太陽光発電業界は新たな曲がり角を迎えています。 そこで一つの節目として、2012年7月に固定価格買取制度が導入されて以降の4年半を簡単に振り返ってみたいと思います。
-
日本国内の報道やニュースクリップ等々を見ると、多くの人は気候変動対策・脱炭素は今や世界の常識と化しているような気になってしまうだろう。実際には、気候変動対策に前のめりなのは国連機関・英米とそれに追随するG7各国くらいで、
-
福島第一原発の「廃炉資金」積み立てを東京電力に義務づける、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正案が2月7日、閣議決定された。これは原発の圧力容器の中に残っているデブリと呼ばれる溶けた核燃料を2020年代に取り出すことを
-
3月12日、愛知県の渥美半島沖の海底で、「燃える氷」と呼ばれる「メタンハイドレート」からメタンガスを取り出すことに世界で初めて成功したことが報じられた。翌13日の朝日新聞の朝刊にも、待望の「国産燃料」に大きな期待が膨らんだとして、この国産エネルギー資源の開発技術の概要が紹介されていた。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間