今週のアップデート — エネルギー需要の拡大にどのように向き合うか(2014年6月9日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPR はサイトを更新しました。
今週のアップデート
1)エネルギー需要は2100年に倍増へ=世界的・長期的視野の検討
一般投稿でエネルギー産業にかかわった早瀬佑一さんに寄稿いただきました。エネルギー需要の増大を示した上で、日本のエネルギーの議論が内向きになっている問題を指摘しています。
澤昭裕国際環境経済研究所所長の論考。産経新聞「正論」からの転載です。大飯原発判決の問題を、丁寧に述べています。判決で示されたようなゼロリスク志向の司法判断が続けば、インフラや大規模事業で、社会混乱がもたらされないという懸念を示しています。
3)「原子力の活用を」ようやく出た声を聞く・原子力国民会議から
原子力反対の声が多いのですが、ようやく原子力を活用しようと訴える集会が行われました。その原子力国民会議を取材しました。原子力をめぐって「賛成」「反対」の二分論ではなく、正確な情報に基づく合意の集積が必要です。
アゴラ研究所所長の池田信夫、言論プラットホーム「アゴラ」編集長の石田雅彦、アゴラの運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク「GEPR」のコンテンツ編集者である石井孝明の3名が、東京電力の福島第一原発を訪問しました。その報告です。現地は危機対応から平常作業へ移っていました。報告記事(上)(下)。
今週のリンク
1)電力10社の原発安全対策費、2・2兆円超 昨年試算の2・6倍
日経新聞6月8日記事。電力会社の安全対策が強化されることはよいことです。しかし、それが経済性とバランスの取れたものか、検証をするべきでしょう。
読売新聞6月7日記事。放射性廃棄物の最終処分場の選定や建設を担う「原子力発電環境整備機構」の理事長を、政府は変えます。人事を変え、国の関与を強め、選定がなかなか決まらないという問題の解決を図る意向です。
ニューヨークタイムズ6月1日記事。原題は「Is Global Warming Real? Most Americans Say Yes」 米国人に温暖化懐疑論が多いと、日本で伝えられます。ブッシュ政権の懐疑的なイメージが強く残るためでしょう。ところが、世論調査で見ると7割が、その危険を認識しています。ただし民主党支持者が温暖化リスクを重視する一方で、共和党支持者はそれほどではありません。
産経新聞連載「政策を問う・エネルギーの未来」6月7日記事。GEPRに寄稿をいただく、澤田哲生氏のインタビュー記事。もんじゅについて、世界で類例のない実用化高速炉であり、活用を訴える内容です。この議論について諸説あるものの、尊重すべき話でしょう。
5)衆議院議事録・第186回国会 原子力問題特別調査委員会 第6号参考人質疑
衆議院で5月29日に開催された参考人質疑の議事録。原子力規制のあり方について、論じています。参考人として、東京大学公共政策大学院非常勤講師の諸葛宗男氏、NPO法人国際環境経済研究所所長の澤昭裕氏、東京工業大学特任教授の西脇由弘氏が出席しました。彼らは現在の規制委員会の問題を指摘しています。一方で、原子力の利用に懐疑的な立場から東京大学名誉教授の井野博満氏も出席しました。要約され示された意見はどの立場からも参考になるでしょう。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
福島の原発事故では、原発から漏れた放射性物質が私たちの健康にどのような影響を与えるかが問題になっている。内閣府によれば、福島県での住民の年間累積線量の事故による増加分は大半が外部被曝で第1年目5mSv(ミリシーベルト)以下、内部被曝で同1mSv以下とされる。この放射線量では健康被害の可能性はない。
-
東洋経済オンラインに掲載された細野豪志氏の「電力危機に陥る日本「原発再稼働」の議論が必要だ」という記事は正論だが、肝心のところで間違っている。彼はこう書く。 原発の再稼働の是非を判断する権限は原子力規制委員会にある。原子
-
「いまや太陽光発電や風力発電が一番安い」というフェイクニュースがよく流れている。だが実際のところ、風力発電を大量に導入しているイギリスでは電気代の上昇が止まらない。 英国のシンクタンクGWPFの報告によると、イギリスの再
-
福島第一原発事故後、日本のエネルギー事情は根本的に変わりました。その一つが安定供給です。これまではスイッチをつければ電気は自由に使えましたが、これからは電力の不足が原発の停止によって恒常化する可能性があります。
-
12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定発効後、最初のグローバル・ストックテイクが行われる「節目のCOP」であった。 グローバル・ストックテイクは、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達
-
年明けからエネルギー価格が世界的に高騰している。その理由は様々な要素が複雑に重なっており単純には説明できないが、コロナ禍からの経済回復により、世界中でエネルギー需要が拡大するという短期的な要因に加えて、長期的な要因として
-
シェブロン、米石油ヘスを8兆円で買収 大型投資相次ぐ 石油メジャーの米シェブロンは23日、シェールオイルや海底油田の開発を手掛ける米ヘスを530億ドル(約8兆円)で買収すると発表した。 (中略) 再生可能エネルギーだけで
-
東京電力に寄せられたスマートメーターの仕様に関する意見がウェブ上でオープンにされている。また、この話題については、ネット上でもITに明るい有識者を中心に様々な指摘・批判がやり取りされている。そのような中の一つに、現在予定されている、電気料金決済に必要な30分ごとの電力消費量の計測だけでは、機能として不十分であり、もっと粒度の高い(例えば5分ごと)計測が必要だという批判があった。電力関係者とIT関係者の視点や動機の違いが、最も端的に現れているのが、この点だ。今回はこれについて少し考察してみたい。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間