第3の候補地現るか:核のごみ〝文献調査〟

2023年05月28日 07:00
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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

sasun bughdaryan/iStock

長崎県対馬市:北海道の寿都町、神恵内に続く

長崎県対馬市の商工会は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定問題に3番目の一石を投じる模様である。

選定プロセスの第1段階となる「文献調査」の受け入れの検討を求める請願を市議会に出す方針を5月19日に決定した。6月下旬の定例市議会で詮議される見通しである。

文献調査はすでに北海道の2町村(寿都町、神恵内村)で実施されている。

長崎県対馬市
対馬市オフィシャルページより

第3の候補地の意義

寿都町、神恵内村が2020年11月に文献調査を受け入れてすでに2年半以上が経過している。

最終処分の事業主体であるNUMO(原子力発電環境整備機構)の資料によれば、文献調査の期間は2年程度とされている。

寿都町、神恵内村が文献調査に〝手をあげた〟ことで、全国からさらに手が上がるものと期待した向きもあったが、これまで全く音無であった。このまま行けば、寿都町長、神恵内村長はじめ関係者が様々な艱難辛苦を乗り越えて灯した「文献調査の火」は線香花火のようにわびしく燃え尽きかねないところであった。

なぜなら、文献調査から次の概要調査に進むためには、再度住民の意を諮る(例えば住民投票)必要があるし、なにをおいても知事の同意が不可欠になる。北海道の鈴木知事は文献調査にさえも難色を示していたし、概要調査には同意できないと言っていた——その状況は変わっていない。

また、つねづね寿都町の片岡春雄町長は、本州方面から文献調査に手が上がらないと自分たちの町での勉強会がやりにくい、仲間が増えればやりやすくなるとして、資源エネルギー庁やNUMOに〝早く仲間を作るように〟と働きかけていた。

文献調査を第3の地が受け入れることは、事業主体のNUMOにとっても北海道の2町村にとっても渇望久しい事態としてこの上なく意義が大きい。

全国から100以上の自治体が文献調査に名乗り出る

なぜ2年以上も追随自治体が出てこなかったのか!?

この2年の間、実態は定かでないが、仄聞するところでは全国で10ほどの自治体にNUMOは地道な情報提供や小規模な勉強会などを通じて文献調査への誘い水を向けてきたという。その対象地域は、これまでに何かしらの動きがあったが文献調査受け入れまでに至らなかった自治体、そして原子力発電所の立地地域である。なお、対馬は前者にあたる。

私は全国の立地地域と多かれ少なかれ長年に渡って交流を保ってきたので、この問題の実情を耳にすることがある。

実際何が問題なのか?

聞けば、できれば手を挙げたいのだが、実施主体の「顔が見えない」「住民目線でない」そして「国の覚悟のほどが知れない」と、とある知人が私に吐露した。

過去に遡れば高知県東洋町の事例など、様々な内部事情はあるにせよ、外形的には国や事業者に見殺しにされた——ように映る、その根本問題は変わっていないという。

がしかし、ともかくも第3の文献調査地が出現すれば、この問題は新たなフェーズを迎えることになる。

はっきりとした見解は見当たらないが、実施主体NUMOは全国から5〜10箇所ほどの文献調査地から手が挙がって、次の概要調査そしてさらに詳細調査で絞り込んでいく目論見らしい。

ところが、今回の推移を見て、いきおい全国から100どころか500を超える自治体が一斉に手をあげるような事態になったらどうするのであろうか? 日本には1718の市町村(市:792、町:743、村:183)がある。

国が最終処分地としての適性を示す『科学的特性マップ』を見れば、決して絵空事ではない。人口減や産業衰退に喘ぐ自治体はワンサカある。地方の疲弊を加速し、結果として地方を切り捨てたのは小泉構造改革であった。文献調査に手をあげることで得られる20億円の交付金は喉から手が出るほどありがたいに違いない。

政府の新たな方針

岸田政権は4月28日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(いわゆる核のごみ)の最終処分に関する基本方針を8年ぶりに更新し閣議決定した。その肝は「政府一丸となって、政府の責任で最終処分に向けて取り組んでいく」ということだという。

具体的には、文献調査の実施地域の拡大をめざし、NUMOは100箇所以上の自治体を訪問し、地元の経済団体や議会などに文献調査の受け入れ検討をお願いするという。上述の100を超える自治体の「挙手」に乗り出すのだとも読める。

大丈夫か、無謀ではないのか—そして本当にできるのか?

なぜなら、そもそもこれまでの経緯と実態を見ればそんな態勢が整っているとはなかなか思えない。それに、要するに顔の見える心のこもった対応ができるかどうかだ。人数手数を増やせばできるということではない。

そのことに真摯に向き合わなければ、仮に処分地が見つかっても100年を超えるこの事業を耐え抜くことはできないだろう。

そうなれば政府が言う「(グリーントランスメーション(GX)達成のために)原子力の最大限の活用」が必須という政策には影が差し、結果GXへの道は塞がれる。

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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

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