鬼怒川氾濫、太陽光発電の乱開発が影響した可能性
北関東や東北を中心に9月10日から11日に降った記録的な豪雨で、洪水や土砂崩れが発生した。栃木県、茨城県で鬼怒川が氾濫し、13日時点では、死者4人、15人が行方不明になり茨城県常総市では住宅1万戸が浸水、多数が流された。被害の全貌はまだ不明だ。行方不明者の安全、被災者の方の休息、そして早期の復旧を祈る。
災害は鬼怒川全流域に広がっている。そのうち堤防を越え水があふれた(越水という)常総市若宮戸地区では、太陽光発電の乱開発が、一因になった可能性がある。9月13日時点で言えることをまとめる。
常総市での太陽光工事の悪影響
筆者は太陽光発電による環境破壊や、危険な設置を報道し、建築ルールが未整備であることの問題をこれまで訴えてきた。(今年6月記事「太陽光発電の環境破壊を見る(上)-山梨県北杜市から」、「太陽光発電の環境破壊を見る(下)-無策の自治体」など)自分のペンの力の無力さに、悲しさを感じる。
常総市議会議事録(14年5月)(発言159、160番)によれば、若宮戸付近あたりでは鬼怒川にそってもともと人工の堤防がなく、通称「十一面山」という丘があり堤防の役割を果たしていた。しかしソーラー発電所の工事のために、丘陵部が延長約150メートル、高さ2メートル程度掘削されたという。
ここは民有地で行政が口出しできない状況にあったようだ。「越水「人災だ」住民反対押し切りソーラーパネル設置」(日刊スポーツ9月12日記事)という記事によれば、住民の懸念は、事業者と行政に無視されたようだ。
常総市は国土交通省に対策を依頼した。一級河川として、鬼怒川の管理者は国土交通省になる。報道などによれば、鬼怒川を管理する同省下館河川事務所は、削られた部分に土嚢(どのう)を積み上げた。その後、同地区の測量や設計を実施するなど、建設を検討していたという。
グーグルアースで見ると、14年3月時点で、常総市の越水の場所付近で、太陽光発電パネルが見られる。ただ、このパネルを所有する事業者と称する会社が、この太陽光発電所と堤防の切り崩しは、自分たちとは無関係という公表文を出した。(文章)同地では2つの太陽光発電所の計画があったとしている。

またNHKのキャプチャーだが、越水直後、が流れ込んでいる場所で、太陽光パネルらしきものが見える。問題の丘の太陽光発電所のもようだ。(写真2)

また水がひいた12日時点の写真を見ると、鬼怒川の東側にグーグルアースの写真の時から変わり太陽光発電所が建設中だったことが分かる。(写真3・毎日新聞映像からのキャプチャー)

そして国土地理院が11日発表した地形図によれば、常総市若宮戸地区(地図上部)での越水、さらに同大房地区(地図下部)での破堤があったもようだ。報道などによれば、常総市では若宮戸地区で昼ごろ越水し東岸に水が流れ込み、夕方に下流で決壊したもよう。被害は鬼怒川と小貝川に挟まれた南北約9キロ、東西約4キロになる。

気象庁によると、関東地方から東北地方南部にかけて9月7日から11日午前までに鬼怒川上流の日光市で約900ミリなど、栃木県内の複数の地点で観測史上1位の記録を更新した。多雨の日本の年平均降水量が約1700ミリであることを考えれば大変な量だ。
太陽光の悪影響の精査、そして規制の必要
もちろんこの若宮戸地区の太陽光乱開発と水害の関係、そして災害の責任の追及について、今後の検証が必要だ。また筆者は、必要ならば、記者として現地に行って取材・報告するつもりだ。ただし、この記事の執筆時点(15年9月13日)での情報では、この乱開発が、鬼怒川氾濫の一因になった可能性はある。
また大雨になった仙台市太白区では、土砂崩れに巻き込まれ斜面に設置した太陽光パネルが破損したもようだ。(Youtubeの共同通信ニュース)太陽光パネルは手抜き工事によって、災害時に大変危険な構造物になる。

太陽光発電は、過剰な優遇策によるバブル化の問題、そして環境の破壊が懸念されている。また発電設備が小型(高さが4メートル以下)の場合、建築基準法の適用を受けない。(弁護士法人みずほ中央法律事務所の解説)
筆者は太陽光を含めた再生可能エネルギーを振興するべきと、考えている。しかし負担の増大と環境保全、安全ルールの未整備を批判し続けてきた。また一部に公益事業を担う倫理的な資格のない、悪質な事業者が入ってくることを懸念してきた。
「環境にやさしい」という名目で行われた再エネ振興。それが自然を改変し、災害をもたらしたとしたら、エネルギー政策を観察してきた経済ジャーナリストとして、やりきれない思いを抱く。
太陽光の無造作な設置で、多くの問題が生じている。太陽光パネルの建設をめぐる、環境と安全性に配慮したルール作り、そして悪質な事業者の締め出しが早急に必要だ。建築基準法の適用対象とし、各地域の経産局や自治体の監査、違反者の処罰をするだけで、状況は改善されるはずだ。
(2015年9月14日掲載)
関連記事
-
アゴラ研究所の運営するインターネット放送「言論アリーナ」。4月21日の放送では「温暖化交渉、日本はどうする?」をテーマに、放送を行った。出演は杉山大志(電力中央研究所上席研究員・IPCC第5次報告書統括執筆責任者)、竹内純子(国際環境経済研究所理事・主席研究員)、司会は池田信夫(アゴラ研究所所長)の各氏だった。
-
「死の町」「放射能汚染」「健康被害」。1986年に原発事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発。日本では情報が少ないし、その情報も悪いイメージを抱かせるものばかりだ。本当の姿はどうなのか。そして福島原発事故の収束にその経験をどのように活かせばよいのか。
-
自然エネルギー財団の「自然エネルギーの持続的な普及に向けた政策提案2014」と題する提言書では、その普及による便益のうち定量可能な項目として、燃料費の節減効果、CO2 排出量の削減効果を挙げる(提案書P7)。
-
産経新聞7月15日。福島事故の対応計画を練る原子力損害賠償・廃炉等支援機構が、東京電力福島第1原発事故の廃炉作業で新たな「戦略プラン」で建屋をコンクリートで覆う「石棺」に言及し、地元の反発を招いた。汚染物質の除去をしないため。これを考える必要はないし、地元への丁寧な説明が必要だ。
-
「支援がありがたい」?。再生可能エネルギーの発電事業者は今、そろって経産省の政策を評価する。その導入を支援する固定価格制度(Feed in Tariff: FIT)が12年7月に導入された。その影響で再エネビジネスは大きく変わり、特に太陽光発電が急拡大した。しかし急成長の影に負担増などのひずみも出始めている。この行く末はどうなるのか。
-
系統用蓄電池の敷設が急速に進んでいる。 その背景には、2050年脱炭素に向けて太陽光パネルによる発電がますます重要性を増し、その普及が拡大し続けているという事実がある。その結果、大規模な環境破壊や人工的な災害の発生源とし
-
国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、2013年の「世界のエネルギー展望」(World Energy Outlook 2013)見通しを発表した。その内容を紹介する。
-
有馬純 東京大学公共政策大学院教授 2月16日、外務省「気候変動に関する有識者会合」が河野外務大臣に「エネルギーに関する提言」を提出した。提言を一読し、多くの疑問を感じたのでそのいくつかを述べてみたい。 再エネは手段であ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














