原子力規制委員会、敦賀原発審査の闇-文書改ざん、メール削除、違法行為の疑い

日本原子力発電の敦賀発電所2号機の下の破砕帯をめぐる問題の混乱が続いている。原電の追加調査で、問題になった断層が、存在しないことが示された。さらに原子力規制庁が重要な電子メールの削除や、非公開の場での報告書の改変をしたことが発覚した。これは法律違反の疑いのあるものだ。一行政機関の異様な行動が続く。
この問題は、原発の賛成、反対に関係なく、行政の適正手続きの問題である。行政の恣意的かつ非科学的な行動で、日本原電が倒産に追い込まれかねない。社会正義の観点から、規制委・規制庁の責任が問われなければならない。
日本原電の活断層「騒動」とは何か
ここで問題を復習してみる。規制委は今年3月に敦賀2号機の地下にある破砕帯を「将来活動する可能性のある断層等」に該当するとした有識者会合最終評価書を受理した。
原電は「活断層ではない」と主張。有識者会合の審議を精査してそこでの63の疑問をまとめ規制委に説明を求めている。しかし規制委・規制庁からは「報告書に書いてある」「個別には答えない」など、不誠実な回答しか返らない。主張は対立したままだ。
双方の主張については、筆者・GEPRはすでにまとめ、規制委員会側の問題が多いことを明らかにしている。

敦賀原発の活断層判定、再考が必要(上)・対話をしない原子力規制委
敦賀原発の活断層判定、再考が必要(下)・行政権力の暴走
原子力規制委員会の活断層審査の混乱を批判する
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法的根拠なき原発停止-規制庁の奇妙な見解の紹介
規制委は新規制基準で「原子力の重要施設の下に、活断層があってはならない」と、庁規則で定める。活断層はこの場合は「12万年前より以降に動いた地層」とする。この規定は、新しく作る場合にはありえるだろうが、既存プラントに適用している。そのバックフィット(法の遡及適用)を示す規定、損害賠償についての法的取り決めは日本の法律には存在しない。また世界のどこにも、事後的に活断層を理由に原子力プラントをつぶす規制行政はない。
規制委は、活断層の判定を、法的根拠のない有識者会合に行わせた。そしてそれを安全審査の参考情報にするとしながら、どのように参考にするか、事業者に明確に示していない。つまり裁量的に行政権が、原子力規制で行使されている。
敦賀2号機の下には「D−1」と名付けられた破砕帯がある。(アルファベットは調査の上で順番に付けられた名)。有識者会合の意見を要約すると、「近くにある浦底断層から、伸びているように見えるK断層は活断層である可能性があり、D−1の破砕帯と結びついて地震を起こす可能性がある」というものだった。「可能性」というあいまいな言葉を最終報告で繰り返す。
原電は地層の中にある火山灰を分析した。問題となっているK断層の含まれる火山灰が13万年前のものと分析し、K断層は法律上建ててはならないとする活断層ではないと主張した。またK断層は原子炉の方に伸びずに、途中で消えているとしている。(日本原電広報誌14年8月号)
この破砕帯をめぐる審査の最終報告を規制委は受理した。判定はあいまいなままだ。手続きの方法が明示されないまま、日本原電は2号機について、再稼動を目指して、新規制基準の適合性審査を今年11月に提出した。
掘ったら活断層は「存在しなかった」
筆者は12月、日本原電敦賀発電所を視察した。活断層を調べるために、約70メートル四方、一部は深さ10メートル以上の巨大な穴が掘られていた。(写真2)社会常識を持つ人なら誰もが、ばかばかしさを感じる光景だった。

もっと合理的に断層を調査する方法はあるはずだ。さらに規制委が穴を掘らせる法的権限はない。費用を全額原電に払わせ、一度出た許可を法的根拠なく取り消そうとしている。そして「活断層がないことを証明せよ」と、いわゆる「悪魔の証明」を求めているのだ。
ただし原電が巨大な穴を掘ることで分かったことがあった。K断層が原子炉の方向に伸びず、途中で消滅していたことが明確になったのだ。(写真3)最終報告が受理された後も、11月の新規制基準の適合性審査の追加調査のために穴を広げて調べた。

K断層が途中で消えているというのは、素人である筆者も肉眼で視認できるような明確なものだった。つまり断層がつながっているという規制委の主張は、成立しない。その幻想を元に規制委は審査を進めている。非常に奇妙で、愚かしく、そして恐ろしい光景だ。
存在しない危険を元に、建設費が数千億円かかるプラントが行政によってつぶされようとしている。
重要なメールを削除した規制庁
規制委は14年12月にピアレビュー会合を開催した。ピアレビューとは学術問題について判断者以外の専門家を集めて精査する取り組みだ。ここでは「活断層」とした報告書案を審査したが、専門家からは判断に異論が噴出した。
ところが規制庁の担当者は、報告書案の一部に意見を反映されただけで最終評価書を作成した。最終評価書の取りまとめは異様な姿だ。有識者委員の電子メールのやりとりで規制庁の担当者がまとめ、最終的な了承もメールで行ったという。公開の場での審議はされなかった。
その電子メールについて、原電の問い合わせ、今年7月の参議院での民主党の浜野喜史議員の東日本震災復興及び原子力問題の質疑で次の事実が明らかになった。
「規制庁は各有識者から評価書案について異論がない旨の返事をいただいた時点で、それ以降の業務において参照する必要がないため削除しており存在しません」(浜野議員の要求に基づく原子力規制庁今年7月1日の提出資料、傍線筆者)。つまり規制庁の担当者がすべて勝手に、削除したという。
どんな仕事でも、意思決定にかかわる文章、電子メールは記録として残すであろう。何かを隠していると勘ぐるのは自然だ。この行為は公文書等管理法違反の疑いがある。
国会の同委員会で浜野議員が7 月8日、参考人の田中俊一規制委員会委員長にこの問題を聞いた。田中氏は「そこまでは明確にする必要はない」と、無責任な回答をした。
密室で改変された文章
そして文章の改変も行われていた。14年12月のピアレビューまでの報告書案では「K断層は、D-1破砕帯と一連の構造」とされていたが、最終評価書では「K断層は、D-1破砕帯等、原子炉建屋直下を通過する破砕帯のいずれかと一連の構造」と書き換えられていた。(傍線筆者)
これまで有識者会合は「活断層であるK断層がD―1の破砕帯と連動し、そのD−1が原子炉下を通る」という議論を重ねていた。ところが重要な理由が、あいまいな表現に書き換えられている。それなのに結論は変わらない。そして、このことは原電にも通知されていない。後から原電が確認して分かった。
これについても規制委は「最終報告案に書かれている」というだけで、文章改変の明確な説明を原電にしていない。この重要な改変の過程を隠すために、メールは削除された可能性がある。もし関係者の許可なく、最終報告書案が一公務員に勝手に書き換えられていたなら、刑法上の公文書等偽造罪に問われかねない行為だ。
文章作成の現場責任者は、小林勝規制庁管理官(当時)というノンキャリアの技官だが、現在は定年退職している。ノンキャリアに責任を負わせ、沈黙する日本の官僚組織のいやらしさを、一連の行為で感じてしまう。
規制委、規制庁は説明責任がある
日本原電は11月5日、敦賀2号機について新規制基準をめぐる適合性審査を規制委員会に申請した。750億円をかけて安全性向上の工事をする予定だ。
しかし、活断層の可能性とした報告書案がどのように審査に反映されるか不透明だ。規制委は当初、活断層の判定を規制委として行っているとした。しかしその後、有識者会合の意見は「重要な参考とする」と修正した。しかし、参考にする具体的な方法を明示していない。
一連の活動は手続きの正当性、合理性を欠く。ここまでおかしな行政の例は近年の日本では類例ない異様なものだ。規制委は、違法行為の疑いまでありながらつくられた文章を、どのように参考にするというのか。
原子力規制委員会と実施機関の規制庁は、一連の活動への説明責任があり、問題行動を是正する必要がある。
(2015年12月21日掲載)
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