原子力規制委員会は事業者の疑問に誠実に答えよ-浜野喜史参議院議員

2015年12月21日 11:00
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経済ジャーナリスト

浜野喜史参議院議員(民主党)は、原子力規制委員会による規制行政、また日本原電敦賀2号機の破砕帯をめぐる問題を国会で10回以上、質問で取り上げている。規制行政への意見を聞いた。

浜野喜史(はまの・よしふみ)1983年神戸大経済学部卒業、関西電力入社。全国電力関連産業労働組合総連合会長代理などを経て、2013年参議院議員に当選(比例区)

-敦賀原発の破砕帯問題をどのように考えるか。

私は関西電力出身で電力関連産業の仲間の支援を受けて議員に選出されている。しかし国会でこの問題を繰り返し取り上げている理由は、電力関連産業のためだけではなく、日本のためである。「こんな行政があっていいのか」という思いが質問の動機だ。非常に問題のある対応が、原子力規制委員会、規制庁によって行われている。

敦賀2号機の問題は、ずさんな行政の象徴であると考えている。「東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会」では総論ではなく各論で疑問を示している。しかし規制委から誠実な回答はない。彼らは事業者にも、国民にも説明責任を果たしていない。

-規制委の活動の何が問題か。

山ほどあるが、その一つは事業者の疑問に誠実に向き合っていないことだ。日本原電は66の疑問を出しているが、それに真摯に答えていない。田中規制委委員長は「いちいち事業者の個別の指摘に答えるやり方を採っていない」としている。これはおかしい。行政権を振るわれる企業が、説明を求めるのは当然のことだ。規制委は原子力発電所の稼働を左右する絶大な権力を持っており、その行使は独善であってはいけない。

また規制委の活動は法律に基づかないものがある。活断層の判断をする有識者会合もそうだ。この会合に法的な根拠はない。規制委は有識者会合の調査を参考に、安全性審査をするとしているが、どのように参考にするかも示していない。

-浜野議員の規制委への国会での質問は10回にもなる。メール問題のおかしさも、明らかになった。

原電の主張、またピアレビューの有識者会合のメンバーの異論がまともに議論されていない。議員として判断基準の資料要求をしたところ、そうした意見に対して「感想と受け止める」など、理由があいまいなまま、報告書がまとめられていることが明らかになった。

驚いたのは、電子メールの削除問題だ。最終報告書をまとめる過程が公開されず、さらに電子メールは「今後の業務において参照する必要がないため削除した」という。その説明に憤りを禁じ得ない。文書管理がずさんすぎる。何かを隠しているのではないかと当然疑ってしまう。

報告書は、「重要な知見の一つとして参考とする」と位置づけられているが、そんな行政の対応を納得できるはずがない。

-原子力規制行政は混乱している。今後、どのようにすべきか。

原子力規制委員会を作ったときは混乱状態の中で、できた組織に政治が数多くの課題を丸投げした面があると思う。いったんできた組織、ルールの変更は難しい面がある。ただし今の状況を変えなければ、問題のある行政を認めてしまうということになる。引き続きしっかり声を挙げていきたい。

(取材・構成 石井孝明 ジャーナリスト)

(このインタビューはエネルギーフォーラム12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる。)

(2015年12月21日掲載)

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