使用済み核燃料政策、見直しの検証2-プルトニウム

2016年04月04日 10:00
アバター画像
経済ジャーナリスト
(写真2)高速増殖炉もんじゅ、プルトニウムの利用が期待されていた

核兵器の原料になる余分なプルトニウムを持たない。広島、長崎で核兵器の被害を受け、非核3原則のもと原子力の平和利用を進める日本は、こうした政策を掲げる。しかし原子力発電の再稼動が遅れ、それを消費して減らすことがなかなかできない。現状の取り組みを紹介する。

日本核武装の懸念?

「日本が保有する核物質は核弾頭1000発以上に相当する。安全保障と兵器拡散の観点から深刻なリスクを生んでいる」「日本の原発再稼働と使用済み核燃料再処理工場計画は事態を悪化させる」。中国の傅聡軍縮大使は昨年10月20日、国連総会第1委員会(軍縮)でこう演説した。

また4月1日までの2日間、米政府主導で核安全保障サミットがワシントンで行われた。核テロ、災害を防ぐ国際協力を約束した。事前に3月16日に米議会上院外交委員会に呼ばれたカントリーマン米国務次官補は、プルトニウムの不拡散の観点から日本や中国が進める核燃料再処理政策に対し「全ての国が再処理事業から撤退すれば非常に喜ばしい」と懸念を示した。

ただし、一週間後に、修正の会見を開き「日本は原子力エネルギーの民生利用の先駆者だ。この分野で日本以上に重要で緊密なパートナーはいない。日本は世界全体がわかるように透明性のあるやり方で進めてきた」と指摘し、今後、国際社会の懸念払拭に同盟国として協力していく考えを示した。(参考・読売新聞3月29日記事「日本の核燃政策「懸念ない」…米高官が発言修正」

無資源国の日本は使用済み燃料を再処理する政策を採用してきたが、世界には日本のプルトニウムの核兵器への転用を懸念する声がある。もしくは外交的なゆさぶりのために、懸念したふりを中国は強調しているのかもしれない。また米国は、プルトニウムの不拡散を外交政策で重視している。

どのように処理するか

日本では1950年代の原子力発電の開始以来、累積で約2万5000トンの使用済み核燃料が発生した。そのうち約8000トンを海外への委託と国内施設での再処理を行っており、残り約1万7000トンが各原子力発電所と六ヶ所再処理工場の使用済燃料貯蔵プールに貯蔵されている。再処理の過程の中で分離されたプルトニウム約47トンを持ち、そのうち実際の核分裂を起こしやすい核分裂性のプルトニウムは約31トンとなる。

この回収されたプルトニウムは核兵器への転用が難しいとされるが、それを減らすことは国際公約となっている。また今後六ケ所再処理工場が稼働すれば最大年800トンの使用済み核燃料が処理される。これにより、年約4トンの核分裂性プルトニウムが発生する見込みだ。

日本は高速炉の開発を進めてきた。この種の炉では燃料でプルトニウムを使う予定だった。日本が開発したのは増殖炉という形で、発電過程でプルトニウムを増やすことも可能だ。またそれを使い切る形の高速炉もある。現時点で原型炉「もんじゅ」が長期停止して先行きが不透明になっており、高速炉の実用化は先延ばしになっている。しかし、将来はプルトニウムが発電のための資源に変わる可能性はあるが、2014年に策定されたエネルギー基本計画などでは、もんじゅによるプルトニウムの消費を想定していない。

プルトニウムを減らす方法はある。既存の軽水炉で、ウラン・プルトニウムの混合燃料であるMOX燃料を使う「プルサーマル発電」で減らされる予定だ。原子力事業者は、16−18基でプルサーマル発電を行い、核分裂性プルトニウムを年5.5トンから6.5トン利用する予定だが、福島第一原発事故の影響もあり計画が進んでいない。この中には、プルサーマル専用の原子炉である電源開発の大間原発(青森県)が年1.1トンを使う計画も含まれている。

これまでプルサーマル発電に関する国の設置許可、地元了解を得たのが9基。玄海、伊方、高浜、福島第一の各発電所で、原子炉1基ずつ合計4基でプルサーマル発電が行われていた。プルトニウムはゆっくり減るはずだった。

しかし福島事故の後で、原子力政策は混乱した。原子力規制委員会が13年に出した新規制基準の各原子炉の適合性審査も遅れ、建設中の大間原発の稼働時期も不透明になった。それでもプルサーマル発電を計画している原子炉のうち8基の申請がすでに行われた。そのうち高浜原発の3、4号機は今年1月に稼働したものの、大津地裁に起こされた訴訟で差し止め命令が出て止まってしまった。

プルサーマル発電の拡大を

日本は核不拡散の防止を担うIAEA(国際原子力機関)の包括査察を受け入れている。六ヶ所村にある日本原燃のウラン濃縮施設、そしてプルトニウムを回収する再処理施設を監視するために査察官が常駐している。いずれも核兵器の材料になるためだ。国際社会に対してその利用を公開している。

日本は1970年代に米国を始め各国との原子力協定で平和利用に徹することで、プルトニウムの利用と核燃サイクルを認められた。核兵器保有国以外で「プルトニウムを使える」というユニークな立場を持つ国は他にない。そして18年は、プルトニウムの平和利用を決めた重要な国際協定である日米原子力協定の更新となる。

プルトニウムを消費する計画と能力は日本にはある。世界から不必要な核開発の疑惑を抱かれないためにも、早急な原発の再稼動とプルサーマル発電の拡大によるプルトニウムの消費が必要だ。

原子力規制委員会により、新規制基準の適合性審査が遅れ、再稼動がなかなかできない状況にある。一行政機関が国全体を左右するおかしな状況だ。それを変えなければならない。

(注)この原稿は、エネルギーフォーラム3月号の特集「検証!電力自由化での再処理事業」を加筆修正した。転載を認めていただいた関係者に感謝を申し上げる。

(2016年4月4日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • その出席者である東京工業大学助教の澤田哲生氏、国際環境経済研究所の理事・主席研究員である竹内純子さんを招き、11月12日にアゴラ研究所のインターネットチャンネル「言論アリーナ」で、「エネルギー問題、国民感情をどうするか」という番組を放送した。
  • 8月11日に九州電力の川内原子力発電所が再稼働した。東日本大震災後に原子力発電所が順次停止してから4年ぶりの原子力発電所の再稼働である。時間がかかったとはいえ、我が国の原子力発電がようやく再生の道を歩き始めた。
  • 経産省
    経産省・資源エネルギー庁。経産省が2001年からメタンハイドレートの開発研究を、有識者を集めて行っています。現在、「第3フェーズ」と名付けられた商業化の計画が練られています。
  • 原子力規制委員会、その下部機関である原子力規制庁による活断層審査の混乱が2年半続いている。日本原電の敦賀原発では原子炉の下に活断層がある可能性を主張する規制委に、同社が反論して結論が出ない。東北電力東通原発でも同じことが起こっている。調べるほどこの騒動は「ばかばかしい」。これによって原子炉の安全が向上しているとは思えないし、無駄な損害を電力会社と国民に与えている。
  • ガーディアン
    7月1日記事。仏電力公社(EDF)が建設を受注した英国のヒンクリーポイント原発の建設は、もともと巨額の投資が予想外に膨らみそうで、進捗が懸念されていた。今回の英国のEU離脱で、EDFの態度が不透明になっている。
  • JR東海の葛西敬之会長が日本原子力学会シニアネットワーク連絡会のシンポジウム「原子力は信頼を回復できるか?」で8月3日に行った講演の要旨は次の通り。
  • ロシアの国営原子力企業ロスアトムが、日本とのビジネスや技術協力の関係強化に関心を向けている。同社の原子力技術は、原子炉の建設や安全性から使用済み核燃料の処理(バックエンド)や除染まで、世界最高水準にある。トリチウムの除去技術の活用や、日本の使用済み核燃料の再処理を引き受ける提案をしている。同社から提供された日本向け資料から、現状と狙いを読み解く。
  • 各国政府に放射線についての諸基準の勧告を行う民間団体のICRPの日本委員が、同委員会の関係の動きを紹介している。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑