原発立地地域への配慮を−滝波議員【原子力規制委員会を改革せよ2】

2016年12月09日 12:25

Exif_JPEG_PICTURE

滝波宏文参議院議員(自民党)(たきなみ・ひろふみ)東京大学法学部卒。94年に大蔵省(現財務省)に入省。98年米シカゴ大学大学院公共政策学科を修了し修士号取得。05年米国公認会計士試験に合格。09年から11年までスタンフォード大学客員研究員。主計局主査、人事企画室長、広報室長、機構業務室長などを経て12年12月に財務省を退官。13年の参議院議員選挙に福井県選挙区から出馬し初当選。

福島第一原発事故の後、原発立地地域の人々は不安をいだきながら暮らしている。安全規制行政に求められるのは原子力の信頼回復だが、田中俊一委員長らは立地地域との対話を拒んでいる。福井県選出の滝波宏文議員に地域の声を聞いた。

−福島第一原子力発電所の後、立地地域は原子力政策をどう見ていますか。

滝波・原子力発電には便益と同時に事故の不安があります。立地地域は不安とリスクを引き受け、経済や都市、そして日本経済の繁栄を支えてきました。私のふるさとであり選挙区である福井県は正にそのような立場です。

立地地域に住む人たちは、原子力のリスクを引き受けたことについて、消費地の人たちや国から公正な評価を受けていないという思いがあります。原子力政策に必ずしも支持が集まらないのも、そうした理由があるかもしれません。

−2012年に原子力規制委員会が設立され、安全規制も一新されました。その活動をどのように評価しますか。

滝波・規制行政を刷新するなら、立地地域の思いをくむ事こそが、その行政の基盤とすべきでした。しかし、残念ながらこの点について規制委の配慮が不十分です。

 −具体的には、どのような点で感じますか。

滝波・田中俊一委員長は立地地域をほとんど訪問せず、福島県以外は川内・島根原発のみです。立地自治体首長とも、全国組織の代表でないと会いません。福井県美浜町では原子力発電所を誘致し、日本で初めての商業運転として、1970年から関西電力美浜1号機が稼動しています。そのパイオニアである美浜町の山口治太郎町長にうかがったら、規制委設置後4年も経っているのに、委員長にはまだ会っていないとのことでした。立地が直面するリスクは、町の大小や全国代表かどうかでは左右されないはずなのに。これはないがしろにされているとされてもしかたがないでしょう。

参院の経産委員会の質疑で、田中委員長になぜ現地に行かないのかと聞くと、「忙しい」との返答で驚きました。「自分は政治家、大臣ではないからいいんだ」とのことでしたが、組織トップの重要な仕事は、それこそ官民問わずステークホルダー、すなわち関係者とのコミュニケーションです。田中委員長は、立地とのコミュニケーションを軽視しているとしか考えられない状況です。規制委が同じような態度を続けるようならば、立地地域はもう「もたない」かもしれません。

−規制行政の進め方にも不満の声が多くあります。

滝波・まず権限濫用の問題を是正すべきです。例えば、規制行政の根拠が、いまだ法的に曖昧な点がかなりあります。「新規制基準の適合を原子炉稼動の前提にする」という趣旨で、法的な根拠のない「田中試案」が現在の審査の根拠になっています。また活断層の審査には、法的な根拠のない有識者会合が前置されています。

 −規制委は「活断層が否定できない」とした有識者会合の報告書を、安全審査で「重要な知見として参考にする」としています。

滝波・私は財務省の行政官でしたが、法的根拠のない私的な会合の「報告」を行政処分の手続きに組み入れることは有り得ません。このようなデュープロセス(適正手続)を欠いた行政では、規制の正当性、予見可能性などが損なわれます。

早急に、リーガルマインドに基づく成熟した規制行政に転換せねばなりません。

(このインタビューはエネルギーフォーラム16年12月号に掲載したものを転載した。許諾いただいた関係者の皆さまに感謝を申し上げる)

This page as PDF

関連記事

  • 2024年3月18日付環境省報道発表によれば、経済産業省・環境省・農林水産省が運営するJ-クレジット制度において、クレジットの情報を管理する登録簿システムやホームページの情報に一部誤りがあったそうです。 J-クレジット制
  • 北朝鮮の1月の核実験、そして弾道ミサイルの開発実験がさまざまな波紋を広げている。その一つが韓国国内での核武装論の台頭だ。韓国は国際協定を破って核兵器の開発をした過去があり、日本に対して慰安婦問題を始めさまざまな問題で強硬な姿勢をとり続ける。その核は実現すれば当然、北だけではなく、南の日本にも向けられるだろう。この議論が力を持つ前に、問題の存在を認識し、早期に取り除いていかなければならない。
  • 私の専門分野はリスクコミュニケーションです(以下、「リスコミ」と略します)。英独で10年間、先端の理論と実践を学んだ後、現在に至るまで食品分野を中心に行政や企業のコンサルタントをしてきました。そのなかで、日本におけるリスク伝達やリスク認知の問題点に何度も悩まされました。本稿では、その見地から「いかにして平時にリスクを伝えるのか」を考えてみたいと思います。
  • 朝日新聞
    朝日新聞、5月7日記事。東京電力福島第一原発の事故後、FAOが定期的な検査を行っている福島県産の食品の安全性について、「現時点で問題はないと確信している」と述べ、引き続き態勢を維持することが重要だとした。
  • ガソリン価格が1リットル170円を上回り、政府は価格をおさえるために石油元売りに補助金を出すことを決めました。他方で政府は、脱炭素化で化石燃料の消費を減らす方針です。これはいったいどうなってるんでしょうか。 レギュラーガ
  • 1.メディアの報道特集で完全欠落している「1ミリシーベルトの呪縛」への反省 事故から10年を迎え、メディアでは様々な事故関連特集記事や報道を流している。その中で、様々な反省や将来に語り継ぐべき事柄が語られているが、一つ、
  • 再稼動の遅れは、新潟県の泉田知事と東電の対立だけが理由ではない。「新基準により審査をやり直す原子力規制委員会の方針も問題だ」と、池田信夫氏は指摘した。報道されているところでは、原子力規制庁の審査チームは3つ。これが1基当たり半年かけて、審査をする。全部が終了するのは、単純な計算で8年先になる。
  • 新聞は「不偏不党、中立公正」を掲げていたが、原子力報道を見ると、すっかり変わった。朝日、毎日は反対、読売、産経は推進姿勢が固定した。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑