過激な原子力批判、真意を聞く−河野太郎議員
河野太郎衆議院議員(自民党)は電力業界と原子力・エネルギー政策への激しい批判を繰り返す。そして国民的な人気を集める議員だ。その意見に関係者には反論もあるだろう。しかし過激な主張の裏には、「筋を通せ」という、ある程度の正当性があり、彼の言葉に一定数の支持が集まる。主張の真意を聞いた。
プロフィール・1963年、神奈川県生まれ。慶応大学経済学部、米ジョージタウン大卒。富士ゼロックスなどを経て1996年に衆院神奈川15区(同県平塚市、茅ヶ崎市など)で当選。以後、当選7回。父は河野洋平元衆議院議長。15年10月から16年8月まで、国家公安委員長、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、規制改革、防災)。著書に「原発と日本はこうなる」「『超日本』宣言―わが政権構想」(いずれも講談社)など多数。
行革相として原発予算にメス
「電気事業連合会は反社会的勢力だ」。河野太郎議員は開口一番、電力業界を批判した。「過激ではないか」と懸念を述べると、その真意を説明し始めた。
河野氏によれば、電事連は任意団体であるという理由で、財務も活動の詳細も明らかにしていないない。「金を使って影響力をおよぼそうとするが、説明責任や社会的責任をまったく果たしていない」。異論のある人はいるだろうが、これが彼の認識だ。
当然、核燃料サイクルや放射性廃棄物の取り扱い、福島第一原発事故の処理などについての見方も厳しい。「国民に正しい情報が開示されていない」「政策に合理性がなく、国民の税金を無駄に使ってきた」。経済産業省、電力業界への批判は止まらない。
河野氏は15年8月から10カ月、行政改革担当大臣になった。そこでこれまでの問題意識を反映させて、原子力政策をめぐる税の使い方にメスを入れた。
原発をめぐって支出される交付金の透明化、支出した予算が、効果があるかPDCAサイクルを回して使う、ほとんど使われなかった使用済み核燃料の運搬船「開栄丸」の廃船を決めるなどだ。これは多くの人の支持を集め、原子力関係者からも目立った異論は出なかった。
福島第一原発の事故後の賠償そして福島第一原発事故の処理方法にも疑問を示した。事故後の処理・賠償費用を補うために、負担を電力託送料金に上乗せし、また税金からの支出を増やす案を経産省は16年12月に公表した。「上場会社である東京電力は、自ら責任を取っていないのに、なぜ税金が投入されたり、消費者に負担が押しつけられたりするのか」。河野氏は問題外というスタンスだ。
核燃料サイクルの非合理性
河野氏は、核燃料サイクル政策への批判を続ける。その主張を要約してみよう。
- 高速増殖炉の商業利用に赤信号が点る。その中で、日本が開発を固執する理由はない。
- 英国とフランスに委託してきた再処理により、日本の保有するプルトニウムは47トンになる。「もんじゅ」の廃炉が決まり、プルトニウムを発電に使うなど合理的に利用することが当面できない。
- その中で六ヶ所村の再処理工場を動かせば、新たなプルトニウムが生み出されることになる。経産省と電力会社は、プルサーマル(ウランとプルトニウムの混合燃料を原子炉の燃料にする)をウラン資源のリサイクルなどとごまかす。しかしそのコストは高くなり、経済的合理性はまったくない。
- 核燃料サイクルも巨額の資金がかかる。これまで電力会社は原発立地自治体に対して、使用済み核燃料は地元に残さないと約束してきた。そしてその燃料を持ち込んだ青森県に対しては、再処理してプルトニウムを取り出せる資産だと説明してきた。もし再処理をやらなければ、青森県から使用済み核燃料を持ち出さなければならないが、現時点では持っていく先がない。だから仕方なく再処理を続けようとしている。
- 青森県に使用済み核燃料を移動できなければ、原発の燃料プールはまもなくいっぱいになり、原発が止まる。「使用済み核燃料の持っていく先がないから再処理、核燃料サイクルを行う」などという本末転倒な政策に、莫大なコストをかけて突き進んでいる。きちんと青森県に謝罪し、青森県を最終処分地にしない。使用済み核燃料の保管料を支払うという説明をすべきだ。
こうした河野氏の主張には、一理ある。もちろん反論もあるだろう。原子力政策、核燃料サイクルをめぐる議論では感情的な反対論を警戒するために、河野氏のような、一理ある主張を議論のテーブルに載せ、政策としてこなかった面がある。
河野氏の意見に耳を傾ける時
「筋を通せ、政策は合理的に、議論の機会を設け、情報を公開しろと、私は当たり前のことを言っている」と河野議員は強調する。
ただし合理的な主張は一貫し、現実主義者でもある。「電力自由化の時代、原子力の足かせが外れた方が電力会社も自由にビジネスができるはず」「未来のエネルギーは、石油石炭は、使えない。今原発をすぐに全部なくすことは無理かもしれないが、40年計画でフェードアウトさせ、再エネと天然ガスの時代を考える必要がある」。
原子力への世論は厳しい。そして与党自民党内でも、その主張はじわりと支持を広げているようだ。河野議員の訴えるエネルギー・原子力の未来に、どの立場の人も真摯に耳を傾けるべき時なのかもしれない。
(編集・石井孝明 ジャーナリスト、GEPR編集者)
(この記事はエネルギーフォーラム12月号の記事を、一部修正の上転載します。許諾をいただいた関係者の方に感謝を申しあげます。)
関連記事
-
次に、司会者から大人が放射線のリスクを理解すると子どもへのリスクがないがしろになるのが心配であるとの説明があり、子どものリスクをどう考えれば良いのかを白血病や小児がんを専門とする小児科医の浦島医師のビデオメッセージの用意があることを示した。
-
広野町に帰還してもう3年6ヶ月も経った。私は、3・11の前から、このままでは良くないと思い、新しい街づくりを進めてきた。だから、真っ先に帰還を決意した。そんな私の運営するNPOハッピーロードネットには、福島第一原子力発電所で日々作業に従事している若者が、時々立ち寄っていく。
-
去る4月5日、経済産業省傘下の電力・ガス取引監視等委員会において「電力市場における競争状況の評価」が討議され、電力自由化一年目が総括されました。この評価は政策的に非常に重要な意味を持つものです。電気事業法では2020年4
-
放射線被害の健康被害の全貌は不明なものの、現在のところ甲状腺がんと、事故処理作業員に被害は限定されていると、紹介している。
-
小泉・細川“原発愉快犯”のせいで東京都知事選は、世間の関心を高めた。マスコミにとって重要だったのはいかに公平に広く情報を提供するかだが、はっきりしたのは脱原発新聞の視野の狭さと思考の浅薄さ。都知事選だというのに脱原発に集中した。こんなマスコミで日本の将来は大丈夫かという不安が見えた。佐伯啓思・京大教授は1月27日付産経新聞朝刊のコラムで「原発問題争点にならず」と題して次のように書いた。
-
有馬純 東京大学公共政策大学院教授 2月16日、外務省「気候変動に関する有識者会合」が河野外務大臣に「エネルギーに関する提言」を提出した。提言を一読し、多くの疑問を感じたのでそのいくつかを述べてみたい。 再エネは手段であ
-
熊本県、大分県など、九州で14日から大規模地震が続いている。1日も早い復旧と被災者の方の生活の回復を祈りたい。この地震でインフラの復旧の面で日本の底力に改めて感銘を受けた。災害発生1週間後の20日に、電力はほぼ全戸に復旧、熊本県内では都市ガス、水道は9割以上が復旧した。
-
政府は政府事故調査委員会が作成した吉田調書を公開する方針という。東京電力福島第一原発事故で、同所所長だった故・吉田昌郎(まさお)氏が、同委に話した約20時間分の証言をまとめたものだ。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
- 秋田に2兆円AIデータセンター:「風力発電が決め手」は本当か
- COPの理想論に冷水:S&Pグローバルが描く2060年のエネルギー
- 廃棄物もCO2も捨てたら価値はゼロになるのか? 炭素というレンズで読む思想史
- データが示す石油輸入の中東依存度の実態
- スコープ3に代わる新たな炭素会計?「E-ledgers/E-liability」とは
- AfD排除で進む「ドイツ民主主義の侵食」:ベーメ=ネスラー教授の警告
- トランプが気候変動は「いかさま」だという理由
- 系統用蓄電池の問題点とはなにか?
- 正確だった国の“脱線”:ドイツ鉄道という国家の縮図
- 全世界の町工場まで炭素簿記を義務化? E-ledgersという無理ゲー













