泊原発の再稼動には「判断基準」が必要だ
北海道はこれから冬を迎えるが、地震で壊れた苫東厚真発電所の全面復旧は10月末になる見通しだ。この冬は老朽火力も総動員しなければならないが、大きな火力が落ちると、また大停電するおそれがある。根本的な問題は泊原発(207万kW)が使えないため、北電の電力供給計画が「片肺飛行」になっていることだ。
泊を再稼動すれば、この冬に大停電が起こるリスクはほぼなくなるが、マスコミはこの問題を避けている。それは安倍政権が「原子力規制委員会が安全と認めた原子炉を再稼動する」という方針をとっているため、安全審査でもめている泊をこの冬に再稼働することは問題外だと思っているのだろう。
これは間違いである。これまで何度も書いたように、安全審査は原発を運転しながら行うことが現行法のルールなのだ。審査と運転は別の概念であり、安全審査のとき運転を止めろとは、法律のどこにも書いてない。定期検査も、原子炉以外の部分は運転しながらできる。その原則を民主党政権が逸脱したことが、今の混乱の原因である。
それでも超法規的な基準として、2011年に原子力安全・保安院(当時)がストレステストを実施し、北電も泊原発のテスト結果を12月に提出したが、保安院はこの結果を原子力安全委員会に送付しなかった。野田内閣が「ストレステストを無視する」という方針を決めたからだ。
そして原子力規制委員長に指名された田中俊一氏は「ストレステストに代わる新しい判断基準をつくる」と国会で約束したが、今に至るもできていない。彼は「新規制基準に適合しない原発はすべて止める」という判断基準をつくろうとしたようだが(おそらく原子力規制庁に反対されて)委員会規則にならなかったのが田中私案である。
田中私案は私文書にすぎないが、規制委員会の公式サイトからも削除された。いま日本政府には、原発再稼動の判断基準が存在しないのだ。それに近いものができたのは、2012年4月に大飯3・4号機の再稼動のとき、民主党政権がつくった「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」が最後だ。これはストレステスト(一次評価)をベースに個別の事情を斟酌したもので、泊もこの基準は満たしていると思われる。
これも私文書だが、田中私案より具体的に基準を示しており、3大臣の名前もある(公印はない)。民主党政権のつくった基準なので、野党も反対できないだろう。いま新たに判断基準をつくっても、そう変わらないと思われる。これをベースに、安倍政権が再稼動の判断基準を閣議決定してはどうだろうか。
関連記事
-
政府のエネルギー・環境会議による「革新的エネルギー・環境戦略」(以下では「戦略」)が決定された。通常はこれに従って関連法案が国会に提出され、新しい政策ができるのだが、今回は民主党政権が残り少なくなっているため、これがどの程度、法案として実現するのかはわからない。2030年代までのエネルギー政策という長期の問題を1年足らずの議論で、政権末期に駆け込みで決めるのも不可解だ。
-
GEPRはエネルギー問題をめぐるさまざまな立場の意見を紹介しています。環境問題のオピニオンリーダーで、UNEP・FI(国連環境計画金融イニシアティブ)特別顧問である末吉竹二郎さんにインタビューを行いました。
-
英国のEU離脱後の原子力の建設で、厳しすぎるEUの基準から外れる可能性、ビジネスの不透明性の両面の問題が出ているという指摘。
-
日本の防衛のコンセプトではいま「機動分散運用」ということが言われている。 台湾有事などで米国と日本が戦争に巻き込まれた場合に、空軍基地がミサイル攻撃を受けて一定程度損傷することを見越して、いくつかの基地に航空機などの軍事
-
ドイツが徴兵制を停止したのは2011年。当時、メルケル政権のツー・グッテンベルクという国防相の下で、大した議論もなくあっという間に決まったのを覚えている。廃止ではなく停止というのがミソで、いつか必要になったら復活する可能
-
既にお知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。今回は第3回目。 (前回:非政府エネ基本計画②:太陽光とEVは解答ではない) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス:強
-
その出席者である東京工業大学助教の澤田哲生氏、国際環境経済研究所の理事・主席研究員である竹内純子さんを招き、11月12日にアゴラ研究所のインターネットチャンネル「言論アリーナ」で、「エネルギー問題、国民感情をどうするか」という番組を放送した。
-
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で衆院議員、秋本真利容疑者が逮捕された。捜査がどこまで及ぶのか、今後の展開が気になるところである。各電源の発電コストについて、いま一度確認しておきたい。 2021年8月経済産
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














