IPCC報告の論点52:生態系のナマの観測の統計を示すべきだ

2022年04月20日 06:40
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。

Chinnapong/iStock

今回は生態系への気候変動の影響。

本文をいくら読み進めても、ナマの観測データがとにかく図示さていない。

あったのは、以下の3つ(いずれも図の一部を抜粋。図の詳しい説明は省略)。いずれも、かなり高度に加工されたデータばかりだ。

図示されているのは、順に、「海洋における年間の生物活動時期が10年あたり何日ぐらい変化したか」、「緯度ごとの海洋の種の豊富さがどう変化したか」「地球の海洋全体で急激な生物コミュニティの大きさと広がりがどのぐらいシフトしたか」というものだ。

いずれも、それなりの変化があって、その理由の一部はCO2による気候変動なのかもしれないけれども、だがこれだけ加工度の高い数値を見せられても、生態系に何か本当に困ったことが起きているのかどうかはピンとこない。

なぜもっと直接的に、みんなが心配している種の観測の統計を出さないのだろう。

例えばシロクマであれば、以前書いたように、その頭数は増えている

図 シロクマの頭数。単位は1000頭

生態系の心配をするなら、こういったナマの観測の統計をまず図示すべきだが、この報告にはそれが一切ない。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

【関連記事】
IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
IPCC報告の論点⑤:山火事で昔は寒かったのではないか
IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
IPCC報告の論点⑨:公害対策で日射が増えて雨も増えた
IPCC報告の論点⑩:猛暑増大以上に酷寒減少という朗報
IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
IPCC報告の論点⑱:気温は本当に上がるのだろうか
IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる
IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない
IPCC報告の論点㊺:温暖化予測の捏造方法の解説
IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた
IPCC報告の論点㊽:環境影響は観測の統計を示すべきだ
IPCC報告の論点㊾:要約にあった唯一のナマの観測の統計がこれ
IPCC報告の論点㊿:この「山火事激増」の図は酷い
IPCC報告の論点51:気候変動で食料生産が減っている?

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 池田信夫
    池田信夫アゴラ研究所所長。8月22日掲載。経産省横の反原発テントが、撤去されました。日本の官僚の事なかれ主義を指摘しています。
  • イタリアがSMRで原子力回帰 それはアカンでしょ! イタリアがメローニ首相の主導のもとに原子力に回帰する方向だという。今年5月に、下院で原発活用の動議が可決された。 世界で最初の原子炉を作ったのはイタリア出身のノーベル物
  • 福島第1原発のALPS処理水タンク(経済産業省・資源エネルギー庁サイトより:編集部)
    はじめに トリチウム問題解決の鍵は風評被害対策である。問題になるのはトリチウムを放出する海で獲れる海産物の汚染である。地元が最も懸念しているのは8年半かけて復興しつつある漁業を風評被害で台無しにされることである。 その対
  • 去る7月23日、我が国からも小泉環境大臣(当時)他が参加してイタリアのナポリでG20のエネルギー・気候大臣会合が開催された。その共同声明のとりまとめにあたっては、会期中に参加各国の合意が取り付けられず、異例の2日遅れとな
  • 高浜3・4号機の再稼動差し止めを求める仮処分申請で、きのう福井地裁は差し止めを認める命令を出したが、関西電力はただちに不服申し立てを行なう方針を表明した。昨年12月の申し立てから1度も実質審理をしないで決定を出した樋口英明裁判官は、4月の異動で名古屋家裁に左遷されたので、即時抗告を担当するのは別の裁判官である。
  • 「リスクコミュニケーション」という考えが広がっています。これは健康への影響が心配される事柄について、社会で適切に管理していくために、企業や行政、専門家、市民が情報を共有し、相互に意見交換して合意を形成していくことを言います。
  • 9月25日、NHK日曜討論に出演する機会を得た。テーマは「1.5℃の約束―脱炭素社会をどう実現?」である。 その10日ほど前、NHKの担当ディレクターから電話でバックグラウンド取材を受け、出演依頼が来たのは木曜日である。
  • 2025年4月28日にスペインで発生した大規模停電は、再生可能エネルギーの急速な導入がもたらすリスクを象徴する出来事であった。太陽光や風力などの直流発電からインバーターを介して交流に変換する電源の比率が高まる中、電力系統

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑