住宅太陽光発電システムの2019年問題を考える
今年は2019年ということもあり、再エネ業界では「住宅太陽光発電の2019年問題」がホットトピックになっている。
と、いきなり循環論法のようなおかしな言い回しになってしまったが、簡単に言ってしまえば、そもそも「住宅太陽光発電の2019年問題」とは、「固定価格買取制度(FIT)の買取期間が終了した住宅太陽光発電システムから発電される電気をどのように有効に使うか?」という問題である。FIT制度の前身となる住宅用太陽光発電システムの余剰電力買取制度が創設されたのは2009年のことだった。そこから起算して買取期間の10年が初めて終了する事例が生じるのが2019年となるので、この問題が「2019年問題」と呼ばれるようになったわけである。

では2019年にFITを卒業する住宅太陽光発電システムはどの程度の規模なのか、というと、これが相当な規模で、200万kW―53万件にもなる。一件あたりの設備は平均で4kW弱と小さいが、1kWあたり年間1000kWh程度発電し、そのうちの30%程度が自己利用され、余剰分70%が売電されていると仮定すると、700kWh×200万kWで全体で14億kWhもの売電がなされている計算になる。これだけの量の電気が当時の価格設定である48円/kWhで売電されており、逆に言えば年間600億円を上回ると目される規模の買取が行われてきたわけだが、今後は順次こうした住宅太陽光発電システムが買取期間の10年を満了してFITを卒業していくことになる。もちろんこの現象は2019年度のみのことではなく、その後も毎年継続的に生じる事象で、2023年までには630万kWの住宅太陽光発電システムがFIT切れとなる見込みである。
こうしたFIT切れの太陽光発電システムはすでに投資回収が終わっているため、社会にとって価値のある低コストな電源となりうるので、有効に活用された方が当然社会にとって望ましい。他方で太陽光発電の設備の持ち主にとっては、既に投資回収が終わっているとはいえ、設備が少しでも自分たちに便益を生む形で活用されることを望むことになる。そのため現在、FIT切れの住宅太陽光発電設備に関しては、経済産業省の旗振りの下で様々な企業が活用方法を検討し提案しているのだが、今のところ主要な選択肢としては
①「相対価格で電力会社に従前の通り電気を売る」という選択肢
②「電気自動車の蓄電池を利用して自家消費に充てる電気を増やす(Vehicle to Home,V2H)」という選択肢
③「家庭用蓄電池を設置してVPPアグリゲーターに電力を制御してもらい、自家消費と売電で利益の最大化を図る」という選択肢
の3つが提示されている。追々これら全てについて説明していきたいのだが、今回はおそらく設備所有者にとってデフォルトの選択肢となるであろう「相対価格で電力会社に従前の通り電気を売る」という選択肢の経済性について考えてみたい。
FIT切れ住宅太陽光発電システムからの電気の買取を発表している会社は既に多数あるが、概ね各社の買取価格は8~10円/kWh程度となっている。現状の48円/kWhから大幅に買取価格が落ちて1/5~1/6程度まで売電収入は落ちることになり、また買取期間も保証されるわけではないのだが、それでも従前程度の電力量の買取がなされれば平均的な設備規模(4kW)の場合、<8~10円×700kWh×4kW>で、年間22400円〜28000円程度の収入が期待できることになる。これに加え自家消費に充てると目される30%相当分を25円/kWh程度に換算して考えると、300kWh×4kW×25円で年間30000円程度の電気代の節約も期待できるので、合計で年間52400円〜58000円の経済的メリットがあることになる。すでに投資を回収し終えた設備でこれだけのメリットが得られるのだから、決して悪くない選択肢と言えよう。

(JPEA資料より引用)
他方で留意すべき点もある。それはPCS(パワーコンディショナ)の寿命だ。
住宅用太陽光発電設備は主として、太陽電池パネルとPCSから構成される。太陽電池パネルで発電された直流電気がPCSで交流変換されて、分電盤に送られ、自家消費分と売電分に振り分けられる仕組みだ。この時、住宅太陽光発電システムを長期運用するにあたって留意すべき点は、太陽電池パネルとPCSの耐久年数が大きく異なることである。国内での長期運用例が乏しいことから確定的なことは言えないが、一般に太陽電池の耐久期間は直接落下物が衝突するなどの事故がない限りは20~30年と考えられているのに対して、PCSの耐久期間は10年~15年と考えられている。住宅FITの買取期間は10年なので、FITが切れた後でも十分太陽電池パネルは活用できることになるが、他方でPCSに関してはどこかのタイミングで交換する必要が生じてくることになる。
仮にPCSの寿命が来て交換するとなると20〜30万円規模の費用がかかってしまう。今後FIT切れの住宅太陽光発電が増えてくるため、相対での買取価格は年々下がっていくことが予測され、また、出力制御やパネルの劣化などのダウンサイドリスクも高まっていく。こうなると、せっかくPCSを更新しても投資回収ができなくなる可能性も十分ある。
その意味では「FIT切れ後も相対価格で電気を売り続ける」という選択肢は追加の特段の大きな投資が必要ないのでデフォルトの選択肢となるが、あくまでPCSの寿命が尽きるまでの暫定的なものということになろう。いずれPCSの寿命が来れば、PCSを交換して引き続き相対で電力会社にこれまで通り電気を売り続けるのか、他の選択肢を取るのか、判断が求められる時期が来ることになる。
その比較の対象が前述した「電気自動車の蓄電池を利用して自家消費を分を増やす(Vehicle to Home,V2H)」、「家庭用蓄電池を設置してVPPアグリゲーターに電力を制御してもらう」という選択肢になるのだが、これらの選択肢についてはまた別の機会に論考することとしたい。
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