米国気候変動特使ジョン・ケリー、テキサスの寒波も温暖化のせいだと言う
バイデン政権で気候変動特使になったジョン・ケリーが米国CBSのインタビューに答えて、先週全米を襲った寒波も地球温暖化のせいだ、と言った。「そんなバカな」という訳で、共和党系ウェブサイトであるブライトバートでバズっている。
ブライトバードウェブサイトより
筆者もそんな筈は無いと思って、統計を確認してみた。
以下のデータは米国政府(2017年)の公式レポートFourth National Climate Assessment (NCA4)のものである。
米国平均の年間最低気温のグラフを見ると、全体として上昇傾向にある。なお縦軸は気温で華氏( °F)表記になっている。0 °F= – 17.8℃、-8 °Fは-22.22℃。
米国政府(2017年)の公式レポートFourth National Climate Assessment (NCA4)統計より
同報告の別の図によれば、過去、極端な寒波の頻度も減り続けた。ちなみにシミュレーションによる将来予測では、年最低気温は上がる、となっている。
なお注意として、過去の気温データには都市化等の影響が混入しているかもしれないし、将来のシミュレーションは不確かなものだ。それに、気候についてはよく分からないことが多いから、ひょっとしたらCO2が増えたら極端な寒波が来るということもあるかもしれない。定説と呼ぶには程遠いけれども、実際にそういう説を唱える学者はいる。
だが何より、上述のように、そもそも統計データを確認すると年最低気温は下がっていないし、極端な寒波の頻度も増えていないのだから、「地球温暖化のせいで極端な寒波が来るようになった」、などという意見は無理筋というものだ。
ジョン・ケリー Wikipediaより
だがジョン・ケリーの語り口をビデオクリップで聞くと、今般のテキサスの寒波も温暖化のせいであり、あと9年しか時間がない、気候危機だ、などと、すっかり温暖化脅威論を信じ切っているようだ。この調子では、どのような統計データを見せたところで、意見を変えることは無さそうだ。もはや科学は関係ない。
このジョン・ケリーが米国の気候変動特使として、これから国際交渉に専念することになる。ケリーだけでなく米国民主党にはこの手合いの人が多い。日本としてはこれに付き合わざるを得ないが、科学を無視した極端な温暖化対策で国益を失うことの無いように、気を付けないといけない。
電子版 :99円!
印刷版:印刷版2228円

関連記事
-
トランプ政権のエネルギー温暖化対策やパリ協定への対応に関し、本欄で何度か取り上げてきたが[注1]、本稿では今年に入ってからのトランプ政権の幹部人事の影響について考えて見たい。 昨年半ば、米国がパリ協定に残留するか否かが大
-
6月25日記事。バイデン副大統領が、米国でのインタビューで、習近平中国国家主席に、このような警告をしたと発言した。もちろん本音は中国への牽制だろうが、米国の警戒感もうかがえる。
-
1. イベリア半島停電の概要 2025年4月28日12:30すぎ(スペイン時間)イベリア半島にある、スペインとポルトガルが広域停電になりました。公表された資料や、需給のデータから一部想定も含めて分析してみたいと思います。
-
12月22日に開催された政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、本部長を務める安倍晋三首相が来春までの温対計画策定を指示しました。環境省の中央環境審議会と、経済産業省の産業構造審議会の合同会合で議論が始まっています。
-
田中 雄三 要旨 世界の温室効果ガス(GHG)排出量が顕著に減少する兆しは見えません。 現状、先進国のGHG排出量は世界の約1/3に過ぎず、2050年世界のGHGネットゼロを目指すには、発展途上国のGHG削減が不可欠です
-
昨年の福島第一原子力発電所における放射性物質の流出を機に、さまざまなメディアで放射性物質に関する情報が飛び交っている。また、いわゆる専門家と呼ばれる人々が、テレビや新聞、あるいは自らのブログなどを通じて、科学的な情報や、それに基づいた意見を発信している。
-
国連のグレーテス事務局長が、7月28日にもはや地球は温暖化どころか〝地球沸騰化の時代が到来した〟と世界に向けて吠えた。 同じ日、お笑いグループ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏がX(ツイッター)上で吠えた。 村本氏の出
-
厄介な気候変動の問題 かつてアーリは「気候変動」について次の4点を総括したことがある(アーリ、2016=2019:201-202)。 気候変動は、複数の未来を予測し、それによって悲惨な結末を回避するための介入を可能にする
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間