気候モデルは海水も熱過ぎる

2021年05月10日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Gudella/iStock

過去の気温上昇について、気候モデルは観測に比べて過大評価していることは何回か以前に書いた(例えば拙著をご覧頂きたい)。

今回は、じつは海水温も、気候モデルでは熱くなりすぎていることを紹介する。

海水温は、気候システムに余分なエネルギーがどれだけ蓄積しているかを見るための良いモノサシになる。

図1は、元NASAで地球温暖化の観測の第一人者であるロイ・スペンサーが作成したもの。

13個の異なる気候モデルを用いた68本のシミュレーション計算結果について、1979年以降の月ごとの地球の大部分(北緯60度から南緯60度まで)の平均海面水温の変化を示している。

1979年以来の42年間の観測(太い黒線)を見ると、平均的な気候モデルが示すよりも、現実には遥かにゆっくりとしか海面水温は上昇していないことが分かる。

図1 海面水温の変化。68のシミュレーションと観測値(ERSSTv5データセット)の比較。

この1979年以降の温度の変化について、より正確に比較するために、水温上昇の傾向を線形回帰計算で求めて、スペンサーは図2を示している。

水色で示されたERSSTv5とHadSST3というのは、海面水温(Sea Surface Temperature, SST)のデータセットである。この2つの観測データセットは世界で最もよく頻繁に用いられているものだ。

図から、この2つの観測データセットにおける水温上昇の速さ(図中縦軸は10年あたり℃)は0.12から0.13に過ぎないのに対して、ほとんどのシミュレーションは0.25を超えている。現実の水面温度の上昇は、シミュレーションの半分程度しか無かったことが分かる。

図2 水面の温度上昇速さ。68本のシミュレーションおよび2つの観測データセットの比較。

つまりシミュレーションのほとんどは、過去の水温上昇を現実の2倍もあったと計算している。

このようなシミュレーションを用いて将来の水温上昇を計算し、大雨や台風が増えたり強くなったりすると主張する論文やメディアは多い。結果は鵜呑みにせず、よくよく注意が必要だ。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 令和の米騒動が勃発し、参院選でも重要争点になりそうだ。 コメの価格は生活に直結するから、国民が敏感になることは理解できる。 ところで、日本国民はコメを年間に何円買っているか。総務省家計調査によれば、世帯あたりのコメの購入
  • バズフィードとヤフーが、福島第一原発の処理水についてキャンペーンを始めたが、問題の記事は意味不明だ。ほとんどは既知の話のおさらいで、5ページにようやく経産省の小委員会のメンバーの話が出てくるが、海洋放出に反対する委員の話
  • COP26におけるグラスゴー気候合意は石炭発電にとって「死の鐘」となったと英国ボリス・ジョンソン首相は述べたが、これに反論して、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、石炭産業は今後も何十年も事業を続ける、と述べた。
  • 京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授 鎌田 浩毅 富士山は日本を代表する「活火山」である。たとえば、『万葉集』をはじめとする過去の古文書にも、富士山の噴火は何度となく記されてきた。地層に残された噴火記録を調
  • 去る10月8日、経済産業省の第23回新エネルギー小委員会系統ワーキンググループにおいて、再生可能エネルギーの出力制御制度の見直しの議論がなされた。 この内容は、今後の太陽光発電の運営に大きく関わる内容なので、例によってQ
  • 外部電源喪失 チェルノブイリ原子力発電所はロシアのウクライナ侵攻で早々にロシア軍に制圧されたが、3月9日、当地の電力会社ウクルエネルゴは同発電所が停電していると発表した。 いわゆる外部電源喪失といって、これは重大な事故に
  • 丸川珠代環境相は、除染の基準が「年間1ミリシーベルト以下」となっている点について、「何の科学的根拠もなく時の環境相(=民主党の細野豪志氏)が決めた」と発言したことを批判され、撤回と謝罪をしました。しかし、この発言は大きく間違っていません。除染をめぐるタブーの存在は危険です。
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 1)ウランは充分あるか? エネルギー・コンサルタントの小野章昌氏の論考です。現在、ウランの可能利用量について、さまざまな議論が出て

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑