温暖化予測は捏造だ オバマ政権の科学次官が喝破

2021年05月12日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

スティーブン・クーニン著の「Unsettled」がアマゾンの総合ランキングで23位とベストセラーになっている。

Unsettledとは、(温暖化の科学は)決着していない、という意味だ。

本の見解は

  • 気候は自然変動が大きい
  • ハリケーンなどの災害の激甚化・頻発化などは起きていない
  • 数値モデルによる温暖化の将来予測は不確かだ

といったもので、これまで小生が書いてきたこととほぼ同じである。

誰がこの本を書いたか、ということが重要だ。クーニンはコンピューターモデルによる数値計算の権威である。オバマ政権では米国エネルギー省の科学次官に任命されていて、気候研究プログラムも担当した。クーニンに対して、非専門家だとか、政治的な動機による温暖化否定論者だとかする批判は出来ようが無い。

クーニンの動機ははっきりしている。科学が歪められ、政治利用されていることに我慢がならないのだ。温暖化の科学は決着しており唯一の「ザ・科学」が存在するという見解は間違っている。「気候危機だ」と煽り立てるのは政治が科学を用いる方法として間違っている。

クーニンは物理学者ファインマンに憧れてカルフォルニア工科大学に入学した。物理学出身者には、同大学の故フリーマン・ダイソンを含め、温暖化の「ザ・科学」に批判的な研究者が多い。私事ながら小生も物理学出身で、クーニンと全く同じ動機を持ち、同じ見解に達した。

温暖化予測に用いる数値モデルは、雲に関するパラメーター等の設定に任意性があり、観測で決めることが出来ない。このパラメーターをいじって地球の気温上昇の大きさを操作する「チューニング」という慣行がある。クーニンはこれを解説した上で「捏造である(cooking the books)」と喝破している。

なぜ温暖化の科学は歪められ、政治利用されるのか。クーニンは、メディア、研究者、研究機関、NGO、政治家などが、それぞれの動機で動いた結果、意図せざる共謀が起きていると指摘し、是正手段を提案している。

中でも興味深いのは、既往の報告に対して批判的な立場から検討する研究者集団である「レッド・チーム」を結成し報告させることだ。日本でもやってみたらよい。

地球温暖化のファクトフルネス

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 以前にも書いたことであるが、科学・技術が大きく進歩した現代社会の中で、特に科学・技術が強く関与する政策に意見を述べることは、簡単でない。その分野の基本的な知識が要るだけでなく、最新の情報を仕入れる「知識のアップデート」も
  • 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市) 政府は、高速増殖炉(FBR)「もんじゅ」を廃炉にする方針を明らかにした。これはGEPR(記事「「もんじゅ」は研究開発施設として出直せ」)でもかねてから提言した通りで、これ以外の道はなか
  • 年明けからエネルギー価格が世界的に高騰している。その理由は様々な要素が複雑に重なっており単純には説明できないが、コロナ禍からの経済回復により、世界中でエネルギー需要が拡大するという短期的な要因に加えて、長期的な要因として
  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ」を「カーボンニュートラル」と呼ぶ習慣が流行っているようだが、筆者には種々の誤解を含んだ表現に思える。 この言葉は本来、バイオマス(生物資源:
  • 今回は気候モデルのマニア向け。 気候モデルによる気温上昇の計算は結果を見ながらパラメーターをいじっており米国を代表する科学者のクーニンに「捏造」だと批判されていることは以前に述べた。 以下はその具体的なところを紹介する。
  • ロシアへのエネルギー依存を脱却すべく、欧州が世界中からエネルギーを買い漁っている。この影響で世界のエネルギー価格は暴騰した。これに耐えかねて、開発途上国では石炭の増産と石炭火力発電の利用計画が次々と発表されている。 ニュ
  • はじめに 本記事は、エネルギー問題に発言する会有志4人(針山 日出夫、大野 崇、小川 修夫、金氏 顯)の共同作成による緊急提言を要旨として解説するものである。 緊急提言:エネルギー安定供給体制の構築を急げ!~欧州発エネル
  • 西浦モデルの想定にもとづいた緊急事態宣言はほとんど効果がなかったが、その経済的コストは膨大だった、というと「ワーストケース・シナリオとしては42万人死ぬ西浦モデルは必要だった」という人が多い。特に医師が、そういう反論をし

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑