米国共和党の温暖化懐疑論は科学に無知だからではない
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/05/iStock-601398828-660x440.jpg)
francescoch/iStock
地球温暖化の「科学は決着」していて「気候は危機にある」という言説が流布されている。それに少しでも疑義を差しはさむと「科学を理解していない」「科学を無視している」と批判されるので、いま多くの人が戦々恐々としている。
だが米国の共和党側は、科学を知っているからこそ「気候危機」など嘘だと知っているのだ。
これを裏付けるデータがあるので紹介しよう。
以前筆者は、
・温暖化は米国では党派問題であり、民主党側は気候危機と訴えるが、共和党側はそれを否定しており、極端なCO2削減など不要と考えている。
・「バイデン政権がなすべきこと」として共和党が挙げた政策の中で温暖化対策は最下位だった。
ということを述べた。そして、この理由として、
・米国では「気候危機」説に否定的な研究者が議会で証言し、またメディアで活躍して、正確な情報を提供している。
ということも書いた。
以下の図は、米国の一般社会調査(General Social Survey)を分析した論文のものだ(筆者訳、編集)。
図で保守(共和党系。ピンクの実線)を見ると、気候変動について「心配ない」と答える人の割合は、B)科学教育水準、およびC)科学テストの点、が高いほど増えていることが、線が右肩下がりになっていることで分かる(なおここでの科学テストとは、一般社会調査の中で幾つか出題した科学の問題の得点であり、温暖化問題についてのテストではない)。
共和党側が「気候危機説」を否定するのは、科学を知らないからではない、むしろ十分に知識を得た上で、確信を持って否定しているのだ。
日本はどうだろうか。筆者は産業界や政府の方とよく話をする。感触としては、科学・技術をよく知っているほど、気候危機説は誇張に過ぎず、2050年にCO2をゼロにするといった極端なCO2削減など不可能だし、する必要もないことはよく分かっている。
にも関わらず、それを表立って言う人が稀なのは、米国とは異なり、日本では同調圧力が強いせいであろうか。
■
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
昨年の11月に米国上院エネルギー・天然資源委員会(U.S. Senate Committee on Energy and Natural Resources委員長はJohn Barrasso上院議員、ワイオミング州選出、
-
EUの気象情報機関コペルニクス気候変動サービスは、2023年の世界の平均気温が過去最高を記録し、産業革命前より1.48℃高くなったと発表した。 これは気温上昇を1.5℃以内に抑えるというパリ協定の努力目標まであと0.02
-
菅政権の下で「2030年CO2を46%減、2050年にCO2ゼロ」という「脱炭素」の目標が発表された。 しかしながら、日本は製造業の国である。製造業は石油、ガス、石炭などを燃やしてエネルギーを得なければ成り立たない。 特
-
英国気象庁の気温測定局のほぼ3つに1つ(29.2%)は、国際的に定義された誤差が最大5℃もある。また、380の観測所のうち48.7%は最大2℃も誤差がある。NGOデイリースケプティックのクリス・モリソンが報告している。
-
東京新聞によれば、学術会議が「放射性廃棄物の処理方法が決まらない電力会社には再稼動を認可するな」という提言を17日にまとめ、3月に公表するらしい。これは関係者も以前から懸念していたが、本当にやるようだ。文書をみていないので確かなことはいえないが、もし学術会議が核廃棄物の処理を条件として原発の運転停止を提言するとすれば違法である。
-
停電の原因になった火災現場と東電の点検(同社ホームページより) ケーブル火災の概要 東京電力の管内で10月12日の午後3時ごろ停電が発生した。東京都の豊島区、練馬区を中心に約58万6000戸が停電。また停電は、中央官庁の
-
日本でも、遺伝子組み換え(GMO)作物が話題になってきた。それ自体は悪いことではないのだが、このブログ記事に典型的にみられるように、ほとんどがGMOと農薬を混同している。これは逆である。GMOは農薬を減らす技術なのだ。
-
今回も前回に続いて英国シンクタンクの動画から。 大手の環境雑誌ナショナル・ジオグラフィックが、飢えてやせ細った、ショッキングなシロクマの映像を見せて、気候変動の影響だ、気候緊急事態だ、とした。この映像は25億回も再生され
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間