米国共和党の温暖化懐疑論は科学に無知だからではない

francescoch/iStock
地球温暖化の「科学は決着」していて「気候は危機にある」という言説が流布されている。それに少しでも疑義を差しはさむと「科学を理解していない」「科学を無視している」と批判されるので、いま多くの人が戦々恐々としている。
だが米国の共和党側は、科学を知っているからこそ「気候危機」など嘘だと知っているのだ。
これを裏付けるデータがあるので紹介しよう。
以前筆者は、
・温暖化は米国では党派問題であり、民主党側は気候危機と訴えるが、共和党側はそれを否定しており、極端なCO2削減など不要と考えている。
・「バイデン政権がなすべきこと」として共和党が挙げた政策の中で温暖化対策は最下位だった。
ということを述べた。そして、この理由として、
・米国では「気候危機」説に否定的な研究者が議会で証言し、またメディアで活躍して、正確な情報を提供している。
ということも書いた。
以下の図は、米国の一般社会調査(General Social Survey)を分析した論文のものだ(筆者訳、編集)。
図で保守(共和党系。ピンクの実線)を見ると、気候変動について「心配ない」と答える人の割合は、B)科学教育水準、およびC)科学テストの点、が高いほど増えていることが、線が右肩下がりになっていることで分かる(なおここでの科学テストとは、一般社会調査の中で幾つか出題した科学の問題の得点であり、温暖化問題についてのテストではない)。
共和党側が「気候危機説」を否定するのは、科学を知らないからではない、むしろ十分に知識を得た上で、確信を持って否定しているのだ。
日本はどうだろうか。筆者は産業界や政府の方とよく話をする。感触としては、科学・技術をよく知っているほど、気候危機説は誇張に過ぎず、2050年にCO2をゼロにするといった極端なCO2削減など不可能だし、する必要もないことはよく分かっている。
にも関わらず、それを表立って言う人が稀なのは、米国とは異なり、日本では同調圧力が強いせいであろうか。
■

関連記事
-
2015年のノーベル文学賞をベラルーシの作家、シュベトラーナ・アレクシエービッチ氏が受賞した。彼女の作品は大変重厚で素晴らしいものだ。しかし、その代表作の『チェルノブイリの祈り-未来の物語』(岩波書店)は問題もはらむ。文学と政治の対立を、このエッセイで考えたい。
-
はじめに 読者の皆さんは、「合成の誤謬」という言葉を聞いたことがおありだろうか。 この言葉は経済学の用語で、「小さい領域・規模では正しい事柄であっても、それが合成された大きい領域・規模では、必ずしも正しくない事柄にな
-
以前、CO2濃度は産業革命前の280ppmに戻りたがっていて、いま人為的なCO2排出量のうち大気中に留まるのは約半分で、残り半分は陸上と海洋に自然に吸収されていること、を書いた。 だとすると、人為的排出を半分にすれば、大
-
ウォール・ストリート・ジャーナルやフォーブズなど、米国保守系のメディアで、バイデンの脱炭素政策への批判が噴出している。 脱炭素を理由に国内の石油・ガス・石炭産業を痛めつけ、国際的なエネルギー価格を高騰させたことで、エネル
-
アゴラ研究所の運営するインターネット放送「言論アリーナ」。10月1日は「COP21に向けて-日本の貢献の道を探る」を放送した。出演は有馬純氏(東京大学公共政策大学院教授)、池田信夫氏(アゴラ研究所所長)、司会はジャーナリストの石井孝明だった。
-
福島第一原子力発電所の事故処理、特にその技術的課題に世間の耳目が集まる一方、その地域に住む人々の暮らしについては見過ごされがちである。しかし私には、事故を起こした原子力発電所とともに生きた経験がある。
-
1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議(地球サミット)」は世界各国の首脳が集まり、「環境と開発に関するリオ宣言」を採択。今回の「リオ+20」は、その20周年を期に、フォローアップを目的として国連が実施したもの。
-
福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。「本当に戻って大丈夫なのか」「戻ったら何に気を付ければよいのか」という不安の声もよく聞かれます。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間