気候変動はエリートの妄想だ

metamorworks/iStock
気候変動を気にしているのはエリートだけだ――英国のアンケート結果を紹介しよう。
調査した会社はIpsos MORIである。
問いは、「英国で今もっとも大事なことは何か?」というもの。コロナ、経済、Brexit、医療に続いて、気候変動が5位にランクインしている。

図1 英国で今もっとも大事なことは何か?
英国ではBBCなどが気候危機説を煽り立てるプロパガンダを繰り広げてきたので、気候変動を本気で心配している人は多く、18%もの人が最優先事項に上げている。
さて面白いのはこの次の図で、社会階級別にみると、AB(上位および中産階級)では多くの人(28%)が気候変動を挙げたのに対して、中位・下位階級では気候変動の優先順位は大幅に下がることだ。
具体的には、C1(下位中産階級)で18%、C2(熟練労働者階級)で14%、DE(労働者階級および非労働者)で12%となっている。なおこの階級分類についてはWikipediaにあった表を付けておこう。

図2 誰が気候変動を心配しているのか?

表1 イギリスの階級分類。Wikipediaによる。
つまりカーボンニュートラルはエリートの妄想にすぎず、エリート以外の多くの人々は温暖化以外の日々の問題の方が重要だと考えている訳だ。
図2にはもう1つ面白いデータがある。年齢別にみると、じつは18~24歳という若い人たちが最も気候変動の心配をしていない。気候変動と答えたのはわずか15%だ。
よく「海外の若者が気候変動対策を強化するよう求めてデモをしている、これは若者と大人という世代間の戦いだ」と主張する映像が報道されているが、どうも違うようだ。
デモを繰り広げているのはエリートたちであって、我々の見ている映像は、実はエリートと庶民という階級間の戦いなのではないか?
■

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 北極振動によって日本に異常気象が発生することはよく知られ
-
次にくる問題は、国際関係の中での核燃料サイクル政策の在り方の問題である。すなわち、日本の核燃料サイクル政策が、日本国内だけの独立した問題であり得るかという問題である。
-
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年が経過した。震災と事故の復旧は着々と進み、日本の底力、そして日本の人々の健全さ、優秀さを示した。同時にたくさんの問題も見えた。その一つがデマの拡散だ。
-
はじめに:なぜ気候モデルを問い直すのか? 地球温暖化対策の多くは、「将来の地球がどれほど気温上昇するか」というシミュレーションに依存している。その根拠となるのが、IPCCなどが採用する「気候モデル(GCM=General
-
国境調整炭素税を提唱したフォンデアライエン次期欧州委員長 先般、次期欧州委員長に選出されたフォンデアライエン氏は今後5年間の政策パッケージ案において6つの柱(欧州グリーンディール、人々のために機能する経済、デジタル時代へ
-
エリートが勝手に決めた「脱炭素」目標の実現のための負担が明らかになるにつれて、庶民の不満が噴出しつつある。 警鐘を鳴らすのはイギリスの右寄りタブロイド紙Daily Mailである(記事、記事)(イギリスの新聞事情について
-
新聞は「不偏不党、中立公正」を掲げていたが、原子力報道を見ると、すっかり変わった。朝日、毎日は反対、読売、産経は推進姿勢が固定した。
-
前稿で紹介した、石橋克彦著「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」(集英社新書1071G)と言う本は、多くの国民にとって有用と思える内容を含んでいるので、さらに詳しく紹介したい。 筆者は、この本から、単にリニア新幹線の危険性
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間