今週のアップデート — 適切な放射線防護対策とは?(2012年2月27日)
今週のコラム
1)福島第1原発事故から間もなく1年が経過しようとしています。しかし、放射能をめぐる時間が経過しているのに、社会の不安は消えません。
内科・血液を専門にする医師の王伯銘博士から投稿をいただきました。それを「ある医師からの手紙「放射能と健康についての知識を医師に学んでほしい」—「患者の利益のため」ヒポクラテスの教えに私たちは常に従う」という記事で紹介します。
健康被害に不安を持つ人々の解決策として、医師への相談を呼びかけています。
2)GEPR編集部のフェロー、石井孝明は記事「放射線防護の重要文書「ICRP勧告111」の解説 — 規制の「最適化」「正当化」「住民の関与」が必要」を提供します。日本政府の政策の指針の一つであるICRP勧告111の勧告についての解説です。
この文章は健康被害回避と社会的コストのバランスを保つ「最適化」、住民への負担の同意「正当化」、そして関係する住民の関与が必要と、指摘しています。しかし日本政府の現在までの政策は、いずれの論点でも適切な配慮をしていません。
今週のニュース
1)ニューヨークタイムズは2月10日の記事で、"A Confused Nuclear Clean UP"(混乱する除染)という記事で、日本の除染事業のおかしさを指摘しています。福島県飯館村の現地の報告、そして日本政府の政策の分析です。
効果が疑問視されているのに、費用が1兆円にもなり、ゼネコンばかりが儲かるという事実を述べています。日本のメディアは、なぜか「除染のおかしさ」を報道しません。
2)毎日新聞「帰村か移住か、共同体に亀裂 飯舘」(2月26日記事)
原発事故によって全村避難となった福島県飯館村で、村の意見が、移住か、帰還かに分かれている現状を伝えています。
論文の紹介
ICRP勧告111「原子力事故または放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」(社団法人日本アイソトープ協会による日本語訳)(原典)
2008年に発表された核災害に際しての放射線防護基準に対する勧告です。

関連記事
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前稿で、現代の諸問題について現役の学者・研究者からの発言が少ないことに触れた。その理由の一つに「同調圧力」の存在を指摘したが、大学が抱えている問題はそれだけではない。エネルギー
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)企業家が活躍、米国農業-IT、遺伝子工学、先端技術を使用 米国の農業地帯を8月に記者が訪問、その
-
時代遅れの政治経済学帝国主義 ラワースのいう「管理された資源」の「分配設計」でも「環境再生計画」でも、歴史的に見ると、学問とは無縁なままに政治的、経済的、思想的、世論的な勢力の強弱に応じてその詳細が決定されてきた。 (前
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
私は友人と設計事務所を経営しつつ、山形にある東北芸術工科大学で建築を教えている。自然豊かな山形の地だからできることは何かを考え始め、自然の力を利用し、環境に負荷をかけないカーボンニュートラルハウスの研究に行き着いた。
-
日本経済新聞は、このところ毎日のように水素やアンモニアが「夢の燃料」だという記事を掲載している。宇宙にもっとも多く存在し、発熱効率は炭素より高く、燃えてもCO2を出さない。そんな夢のようなエネルギーが、なぜ今まで発見され
-
このごろ世の中は「脱炭素」や「カーボンニュートラル」でにぎわい、再生可能エネルギーとか水素とかアンモニアとか、いろんな話が毎日のようにマスコミに出ています。それを後押ししているのがESG投資ですが、その意味がわからない人
-
前回、「再エネ100%で製造」という(非化石証書などの)表示が景品表示法で禁じられている優良誤認にあたるのではないかと指摘しました。景表法はいわばハードローであり、狭義の違反要件については専門家の判断が必要ですが、少なく
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間