セメント、鉄鋼、繊維・・脱炭素で壊滅危機ランキング
菅政権の下で「2030年CO2を46%減、2050年にCO2ゼロ」という「脱炭素」の目標が発表された。

y-studio/iStock
しかしながら、日本は製造業の国である。製造業は石油、ガス、石炭などを燃やしてエネルギーを得なければ成り立たない。
特にエネルギーを多く使う工程を抱えているいわゆる「エネルギー多消費産業」はいま、消滅の危機に瀕している。
では特に脆弱な産業は何か。
指標として「業種別の工場生産額に占めるエネルギーコスト比率」を見てみよう。
この値の意味であるが、これが大きいほど生産活動のためのエネルギーのコストがもともと大きい。したがって、エネルギーコストがいっそう跳ね上がると、国際競争に勝てなくなり、日本から消えてしまうことになる。

図 業種別の工場生産額に占めるエネルギーコスト比率 図は環境省による。データは平成13年のもの。
図を見ると、ランキングは、
1位 窯業・土石製品製造業 6.8%
2位 鉄鋼業 6.1%
3位 繊維工業 5.2%
4位 パルプ・紙・紙加工品製造業 4.9%
5位 非鉄金属製造業 3.7%
6位 石油製品・石炭製品製造業 3.5%
7位 化学工業 3.3%
・・・
となっている。なお窯業・土石とはセメント等の製造のことだ。
いま政府はCO2削減のためとして、大量に太陽光発電や洋上風力発電を導入しようとしているが、これは確実に電気代を押し上げる。また環境省は「炭素税」も検討しているが、これが降りかかるとなると、ここに挙げたエネルギー多消費産業は消滅の危機に瀕することになる。
すでに日本の製造業は産業空洞化が大幅に進んでいる。「脱炭素」政策がとどめの一撃になってしまってはいけない。
工場は雇用を生み、地域を支える。産業を守るために、地元、労働者と一体になって企業は声を上げるべきだ。
■

関連記事
-
国のエネルギーと原子力政策をめぐり、日本で対立が続いている。いずれも国民の幸せを願ってはいるのだが、その選択は国の浮沈に関わる重大問題である。東京電力の福島第1原発事故の影響を見て曇るようなことがあってはならない。しかし、その事故の混乱の影響はいまだに消えない。
-
ネット上で、この記事が激しい批判を浴びている。朝日新聞福島総局の入社4年目の記者の記事だ。事故の当時は高校生で、新聞も読んでいなかったのだろう。幼稚な事実誤認が満載である。 まず「『原発事故で死亡者は出ていない』と発言し
-
東京電力福島第一原発の事故処理で、汚染水問題が騒がれている。このコラムで私は問題を考えるための図を2つ示し、以下の結論を示したい。
-
チェルノブイリ原発事故によって放射性物質が北半球に拡散し、北欧のスウェーデンにもそれらが降下して放射能汚染が発生した。同国の土壌の事故直後の汚染状況の推計では、一番汚染された地域で1平方メートル当たり40?70ベクレル程度の汚染だった。福島第一原発事故では、福島県の中通り、浜通り地区では、同程度の汚染の場所が多かった。
-
COP26は成功、しかし将来に火種 COP26については様々な評価がある。スウェーデンの環境活動家グレタ・トウーンベリは「COP26は完全な失敗だ。2週間にわたってこれまでと同様のたわごと(blah blah blah)
-
G7エルマウサミット開幕 岸田総理がドイツ・エルマウで開催されるG7サミットに出発した。ウクライナ問題、エネルギー・食糧品価格高騰等が主要なアジェンダになる。エネルギー・温暖化問題については5月26〜27日のG7気候・エ
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、「IPCC報告の論点⑥」で、IPCCは「温暖化で大
-
豪州と欧州で停滞する水素プロジェクト 昨年11月のニュースだが、関西電力が丸紅などと豪州で計画していた水素製造事業から撤退するとの報が流れた。プラントや収支計画などの基本設計を詰める中で、製造コストが想定以上に高く、採算
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間