中国、インド、ロシア、豪州・・炭鉱開発は止まらない
CO2を多く排出するとして、ここのところ先進国ではバッシングを受けている石炭事業だが、世界には多くの炭鉱開発計画がある。

erlucho/iStock
最近出た環境団体グローバル・エナジー・モニターの報告によると、世界で提案されている新しい炭鉱開発事業は合計で年間22億トンの産出量に上り、これがすべて実現するとなると、現在の世界の石炭生産量から30%の増加になるという。(解説記事)
図は、国ごとに、2019年現在の石炭産出量を青で、現在提案されている炭鉱開発事業をオレンジで書いたもの。
炭鉱開発事業は432件に上り、中国、ロシア、インド、オーストラリアの少数の州が新規開発事業の77% (年間17億トン) を担っていることがわかった。
州ごとのランキングでは以下の図のようになる:
1位は豪州北東部のクイーンズランドで約350mtpa。mtpa(=mega ton per annumの略)とは年間100万トンの意味だから、実現すれば年間3.5億トンの生産量、ということになる。日本の年間消費量は1.88億トンだから、その2倍近くとなる。
豪州からは9位にニューサウスウェールズもランクインしている。
2位以下には中国から内モンゴル、新疆、陝西、山西と、4つの省・自治区の名前が見える。
インドからは3位のジャルカンド、5位のオディーシャー(旧名オリッサ)がある。
6位にはロシア、10位には南アフリカからランクインしている。
同報告によると、提案されている炭鉱のうち年間生産量にして4分の3(年間16億トン) は計画の初期段階にあり、キャンセルされる可能性があるけれども、4分の1(年間6億トン)はすでに建設中である、としている。
さて今後どうなるか。先進国では石炭バッシングの動きがあるので、豪州の炭鉱開発には影響があるかもしれない。
その一方で、新興国である中国、インド、ロシア、南アフリカでは、経済開発はもちろん重要であるから、そう簡単に止める訳にはいかないだろう。特に中国・インドでは事業の担い手は国営企業であり、民営企業が運営する先進国の事業よりも環境運動の影響を受けにくい。
石炭は国際的に貿易されているから、豪州の炭鉱開発が止まると、中国やロシアの炭鉱事業者はライバルが減って喜ぶことになるだろう。
中国・ロシアと先進国環境運動家には、奇妙な同盟関係が成立している訳だ。
■

関連記事
-
第6次エネルギー基本計画は9月末にも閣議決定される予定だ。それに対して多くの批判が出ているが、総合エネルギー調査会の基本政策分科会に提出された内閣府の再生可能エネルギー規制総点検タスクフォースの提言は「事実誤認だらけだ」
-
国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、2013年の「世界のエネルギー展望」(World Energy Outlook 2013)見通しを発表した。その内容を紹介する。
-
はじめに 原子力規制委員会は2013年7月8日に新規制基準を施行し“適合性審査”を実施している。これに合格しないと再稼働を認めないと言っているので、即日、4社の電力会社の10基の原発が申請した。これまでに4社14基の原発
-
ロシアの国営原子力企業ロスアトムが、日本とのビジネスや技術協力の関係強化に関心を向けている。同社の原子力技術は、原子炉の建設や安全性から使用済み核燃料の処理(バックエンド)や除染まで、世界最高水準にある。トリチウムの除去技術の活用や、日本の使用済み核燃料の再処理を引き受ける提案をしている。同社から提供された日本向け資料から、現状と狙いを読み解く。
-
福島第1原子力発電所の事故以降、メディアのみならず政府内でも、発送電分離論が再燃している。しかし、発送電分離とは余剰発電設備の存在を前提に、発電分野における競争を促進することを目的とするもので、余剰設備どころか電力不足が懸念されている状況下で議論する話ではない。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前稿で「脱炭素社会法」には意味がないと述べた。 その根拠として、 実測データでの気温上昇率は100年当り0.7〜1.4℃しかなく、今世紀末までの80年足らずの間に3〜5℃もの気
-
池田・2022年までに、電力では発送電分離が行われる予定です。何が行われるのでしょうか。 澤・いろいろな説明の仕方がありますが、本質は料金設定の見直しです。規制のかかっていた4割の家庭用向けを自由化して、総括原価と呼ばれる料金算定方法をなくします。
-
米国の保守系シンクタンクであるハートランド研究所が「STOPPING ESG」という特集ページをつくっているので紹介します。同研究所トップページのバナーから誰でも入ることができます。 https://www.heartl
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間