「再生エネ証書」という欺瞞
この日経記事の「再生エネ証書」という呼び方は欺瞞です。
経済産業省は24日、企業が再生可能エネルギーによる電気を調達したと示す証書の最低価格を1キロワット時1.3円から0.3円に引き下げると決めた。
(中略)
最低価格で応札されることが多いため事実上の値下げとなる。
企業など電気の需要家は通常、どの発電所の電気を使ったかわからない。このため再生エネによる発電量の分だけ証書を発行し、その証書を購入することで再生エネを使ったとみなしている。
非化石証書やFIT証書は「過去」の非化石由来エネルギー、再生可能エネルギーの発電分を証書化して市場で売り買いするただのマネーゲームです。1グラムもCO2を減らさず、1ワットも再生可能エネルギーを増やしません。記事中にもある通り「再生エネを使ったとみなしている」だけです。
さらに、証書の価格が安くなったら、現場で苦労して「未来」の再エネ普及に取り組んでいる事業者に資金が回らないおそれがありますし、国民の財産権を侵害している可能性も指摘されています。
そもそも温暖化対策や再エネ拡大には、相応のコストがかかる(フリーランチはない)という厳然たる事実がある中で、タダ同然のコストでCO2オフセットや再エネ100%が達成できるとすると、それはどこかにまやかしか他人へのコストの付け廻しが行われているのである。
再エネ100%を目指す企業は、一般電力を使い続けながらこうしたグリーンウォッシュまがいの制度で化粧をするのではなく、自らのコストとリスクで再エネ投資を行うか、長期のPPAを非FIT再エネ発電事業者と結ぶことで、社会全体の再エネ比率拡大にも貢献しながら、自らのCO2削減や再エネ比率拡大を進めるべきなのである。一方で政府は、国民(電力消費者)の共通財産となっているFIT再エネ由来の「環境価値」を、タダ同然で第三者に転売することを許すような今回の制度の導入検討にあたっては、少なくともそうした「環境価値」の所有者である一般の電力消費者に納得のいく説明をした上で、適正な価格体系(最低価格)を示し、そうした取引にたいする承諾を受けた上で導入可否の判断を行うべきである。
しかも、再生可能エネルギーで主力とされている太陽光発電は屋根の上のジェノサイドです。
太陽光発電は屋根の上のジェノサイド ~太陽光パネル発電の積極的な導入は強制労働に加担することになる~
杉山 日本をはじめ、米国、ドイツは研究開発の段階で大規模な投資をしていました。けれどハッキリ言えば、半導体製品の中で太陽光発電は、それほどのハイテク技術ではありません。ただ、中国はいま圧倒的に安価に生産しており、価格競争に勝ったわけです。 ところが、この安い理由とは何か。中国はウイグル人を強制労働させることで、人件費を低く抑えることができる。また自国でシリコンを採掘・精錬しますが、石炭火力を用いて安価な電力を大量に使っている上に、排水などの環境規制が甘い。だから、安価な太陽光パネルを世界中に輸出することができる。米国は特に強制労働への関与を重大な問題だと判断して、中国企業からの輸入を事実上全面的に禁止する措置をとっています。
(中略)
太陽光パネルの現状は「屋根の上のジェノサイド」。強制労働への加担です。
非化石証書に群がる需要家(企業)の皆さん、ESGのS(社会性)で求められる倫理観はどこへ。SDGsの「誰ひとり取り残さない」はどこへ。
この背景には、取引減をチラつかせながらサプライヤーに脱炭素を要求する川下大企業の存在がありますが、こうした行為は優越的地位の濫用にあたらないのでしょうか。
狭義の優越的地位濫用では物・サービスの購入や金品・役務・減額等を要求した場合に限定されているので、脱炭素要請はグレーなのかもしれません。ただし広義で考えれば、自家消費のための太陽光発電の導入やカーボン・オフセットはコストがかかるものの最大のメリットが受注量の現状維持であり、サプライヤーに対して不利益を与えていることになります。
サプライチェーンで脱炭素を要求する川下大企業は、こうしたカーボンニュートラル対策に要したコストアップ分の価格転嫁を認めてくれるのでしょうか。
日本企業の論語と算盤、三方よしの精神はどこへ。
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