IPCC報告の論点57:縄文時代はロシア沿海州も温暖だった

2022年04月27日 06:40
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

昨年夏からこの春にかけて、IPCCの第6次報告が出そろった(第1部会:気候の科学、第2部会:環境影響、第3部会:排出削減)。

何度かに分けて、気になった論点をまとめていこう。

ooyoo/iStock

縄文時代は「縄文海進期」と言われ、日本では今より気温が高く、海面も高く、北日本は住みやすくて、縄文文化が花開いたことを以前に書いた(IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた)。

じつはこの時、日本海の向かい側のロシア沿海州も同様に、暖かく、住みやすく、文化が発達したことが最新の論文で報告された。

図の赤枠が調査地域。

この地域の地層中の堆積物を調べると、約8000年前から5000年前まで「現代の気温より2〜5℃高い」年間平均気温を記録していた。隣接する日本海の表面水温は現在より3〜6℃高く、海は現在より1〜1.5km内陸まで侵食し、海面は現在より2〜3m高い状態であった。

また日本の平安時代にあたる「中世温暖期」には、沿海州の地表水温は現在より1〜1.3℃高く、海水面は現在より1m高かった。

また、現在では凍結する沿岸海域も、縄文時代(完新世の初期から中期)にかけては凍結しなかったことが判明した。また、沿海州の、水温が現在より高い範囲でのみ生存する貝の一種が、現在より8,500年前から5,500年前まで繁栄していた。現在、この貝は調査海域の南500kmの暖かい海域に生息しているものだ。

日本の縄文時代にあたるころ、この地域でも、新石器時代の文化が繁栄した。

因みにこのときの大気中の二酸化炭素濃度は現在よりはるかに低い約265ppmであった。

「地球平均の」気温上昇はともかく、地域における気候は、大きく変動してきたのだ。

仮に今後、CO2などの排出によって地球温暖化が進むとしても、相当に極端な気温上昇でない限り、日本周辺の生態系は「経験済みの過去に戻るだけ」ということになりそうだ。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

【関連記事】
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IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
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IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる
IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない
IPCC報告の論点㊺:温暖化予測の捏造方法の解説
IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた
IPCC報告の論点㊽:環境影響は観測の統計を示すべきだ
IPCC報告の論点㊾:要約にあった唯一のナマの観測の統計がこれ
IPCC報告の論点㊿:この「山火事激増」の図は酷い
IPCC報告の論点51:気候変動で食料生産が減っている?
IPCC報告の論点52:生態系のナマの観測の統計を示すべきだ
IPCC報告の論点53:気候変動で病気は増えるのか?
IPCC報告の論点54:これは朗報 CO2でアフリカの森が拡大
IPCC報告の論点55:予測における適応の扱いが不適切だ(前編)
IPCC報告の論点56:予測における排出量が多すぎる(後編)

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杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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