地球温暖化運動:ジェームズ・ラブロック氏が遺した言葉

2022年09月18日 06:40
アバター画像
技術士事務所代表

英国の環境科学者で地球を1つの生命体とみなす『ガイア理論』を提唱したジェームズ・ラブロック氏が103歳で亡くなってから、間もなく2ヶ月になろうとしている。

ガイア仮説で知られる科学者・作家のジェームズ・ラブロック氏。写真は2005年。
出典:Wikipedia

CNNは次のように報じた。

ラブロック氏は科学界に多大な功績を残した。中でも地球を1つのモデルとみなし、生物と非生物が互いに作用し合って1つの生命体として欠かせない複合的な仕組みを形成していると説いた『ガイア理論』は大きな影響を与えた。

ネイチャー誌は次のように紹介した。

環境科学におけるラブロック氏のほとんど比類のない影響力は、物事を見る独自の方法に基づいている。謙虚で頑固、魅力的で先見の明があり、誇り高く寛大な彼のガイアに関する考えは、生物学の概念に変化をもたらした。

一方、KYODOは、「環境科学者J・ラブロック氏死去 地球温暖化の脅威強く訴える」というヘッドラインで訃報を報じたが、読者に間違った情報を与えてしまう記事になっている。そこで、ラブロック氏の発言を拾い集め、整理してみた。

温暖化論者から批判者へ

2006年当時、ラブロック氏は、熱心な人為的地球温暖化論者であり、恐ろしい気候シナリオを推進していた。地球が病的な熱病にかかり60億人が滅亡するとも予測していた。

2010年以降、ラブロック氏は立場を逆転させ、発言を変えていった。

かつて私は気候変動について警戒論者だった。そして現在(2012年)、人為的な地球温暖化論に対する声高な批判者となった。問題は、私たちが気候はどうなっているのかを知らないことだ。20年前、傲慢にも分かっていたと思っていたのだ。私たちは、気候変動のような複雑な状況に対応できるほどには進化していない。

また、「石炭や石油による温室効果ガスの排出を減らすためには原子力発電所を建設すべきだ」と発言して、環境活動家と対立することもあったようだ。原子力には期待されていたとのこと。

謙虚で頑固で先見の明があったラブロック氏、色々な場面で直截的な発言をしている。

NBCニュースでは、

気候はいつものように変化している。まだ、大した問題は起きていない。本当だったら、半分くらいは焼け野原になっていてもよいはずなのに。ミレニアム以降、世界はあまり暖かくなっていない。12年というのは、事の判断をするのに妥当な時間だ。CO2は間違いなく上昇している。気温も上昇するはずなのに、ほぼ一定に留まっている。気候変動は起こっているが、その影響は以前考えていたよりもずっと先の未来のことだろう。

また、BBCのインタビューで、国連やIPCCを含む地球温暖化の主張について、厳しい見方を示した。

彼らはただ推測しているだけ、しかもグループ全体で集まり互いの推測を励まし合っている。IPCCの最後の報告書は、私が8年ほど前に出版した 『ガイアの復讐』の内容と非常によく似ている。まるでコピーしたかのようだ。

ラブロック語録

  • 「気候アラーム論」は科学的とは言い難く、非常に単純化した議論をしている。この気候システムは非常に複雑で慣性力があり、直ぐに温暖化が解消するわけもない。また、海洋の熱容量が大気や地表の1000倍大きいことも忘れてはならない。人類が地球温暖化に影響を与えているといっても、火山の噴火などがより大きな影響を与えるかもしれない。
  • 「地球温暖化推進派」は「どんどん地球は暑くなる」と言っているが、本当のところはわからない。気候モデルは、モデルを設定してデータを入力すれば、計算結果が出てくるプロセスであり、そこに意図の介在する余地がある。火山の噴火一つでモデルの条件も変わってしまう。コンピューターモデルには信頼できない点もあるため、その予測には懐疑的になる必要がある。5年から10年以上を予測しようとする人は、阿保たれではなかろうか。自然の営みは何でもありで、想定しない事が沢山起きるのだから。
  • 「環境保護主義」については愕然としている。CO2は増加しているが、彼らが考えていたほどの速度ではない。CO2の排出を減らそうと、巨額の資金が風力や太陽光などの再生可能エネルギーに浪費されている。後悔すべきことだ。その多くは醜く、絶望的かつ非現実的であり、英国の景観に緑の悪魔的変化をもたらすおそれがある。この気候変動の運動はどこか狂っている。
  • 「地球を救う」と言っている人がいる。40億年前から地球はずっと住みやすく、多くの生物が生息している。海流が違った方向に動けば寒くなる。私たちの心配することではない。
  • 今や、地球温暖化運動という「緑の宗教」がキリスト教を継承している。グリーン派には、宗教が使うような用語が沢山入っている。罪悪感を利用するのは、キリスト教の悪い面での古きよき残り香だ。それは問題を解決する良い方法とは言えない。
  • 気候の崩壊は、私たちが人間として、すべての生命と関わり合う中で築き上げてきたシステム、それも有害なシステムの「宿痾」のようなものだ。特に、「600年にわたる植民地主義」により、ヨーロッパ文明が残酷さと暴力とともに世界中に広まった。その根は深くもっと前に遡る。

また、ラブロック氏は、「気候変動が心配ならシンガポールを見て欲しい。最悪のシナリオより気温上昇が2.5倍も高いのに、世界でもっとも住みたい都市の一つである」とも語っていた。

蛇足ですが...

現在、世界人口は80億に近づいている。その40%を中国、インド、ロシアが占めており、彼らは「反化石燃料アジェンダ」には反対の立場を取っている。それに、ブラジルやインドネシア、アフリカ諸国を合計すると、世界の半数が極端な気候変動運動には反対していることになる。

我が国も「鴻鵠」たるラブロック氏の思いを受け止め、政治的な問題は色々あるだろうが、こうした各国と連携を取りながら、新機軸を打ち出してみてはいかがだろうか。その中に我が国が誇るべき先進的火力発電技術を含めれば、当初のエネルギー政策にも合致する。

This page as PDF

関連記事

  • 日本政府はどの省庁も「気候変動のせいで災害が激甚化・頻発化している」と公式文書に描いている。だから対策のために予算ください、という訳だ。 表1を見ると、内閣府、内閣官房、環境省、国土交通省、農林水産省、林野庁とみな「激甚
  • 米国の保守系シンクタンクであるハートランド研究所が「STOPPING ESG」という特集ページをつくっているので紹介します。同研究所トップページのバナーから誰でも入ることができます。 https://www.heartl
  • 石川 和男
    政策アナリストの6月26日ハフィントンポストへの寄稿。以前規制委員会の委員だった島崎邦彦氏が、関電の大飯原発の差し止め訴訟に、原告の反原発運動家から陳述書を出し、基準地震動の算定見直しを主張。彼から規制委が意見を聞いたという内容を、批判的に解説した。原子力規制をめぐる意見表明の適正手続きが決められていないため、思いつきで意見が採用されている。
  • ニューヨークタイムズとシエナ大学による世論調査(7月5日から7日に実施)で、「いま米国が直面している最も重要な問題は?」との問いに、気候変動と答えたのは僅か1%だった。 上位は経済(20%)、インフレ(15%)、政治の分
  • 17の国連持続可能目標(SDGs)のうち、エネルギーに関するものは7番目の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」である。 しかし、上記の資料は国連で採択されたSDGsの要約版のようなものであり、原文を見ると、SDG7は
  • 2024年7月24日各新聞に「原発の建設費を電気料金に上乗せ、経産省が新制度け検討 自由化に逆行(朝日新聞デジタル)」などの報道がありました。 一方、キヤノングローバル戦略研究所杉山大志氏の「電気代が高い理由は3つ:みん
  • ANNニュースから
    はじめに インターネットでウランを売買していた高校生が摘発された。普通、試験管に入った量程度のウランを売買するのに国への報告が必要になるとは気が付かないが、実はウランは少量でも国に報告しなければならないことになっている。
  • 福島県で被災した北村俊郎氏は、関係者向けに被災地をめぐる問題をエッセイにしている。そのうち3月に公開された「東電宝くじ」「放射能より生活ごみ」の二編を紹介する。補償と除染の問題を現地の人の声から考えたい。現在の被災者対策は、意義あるものになっているのだろうか。以下本文。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑