高市首相、脱炭素では安定的で安価なエネルギーは実現しません

首相官邸HPより
高市首相が2月20日に施政方針演説を国会で行った。エネルギー政策に関しては、脱炭素やグリーントランスフォーメーション(GX)といった文言が前任者に比べてトーンダウンしている、という論評が多いようだ。
だがよく読んでみると、菅政権、岸田政権、石破政権の三代にわたって強化され、いまや霞が関、就中、経産省がその利権の権化となった脱炭素政策を継続するとしている。これでは日本は強く豊かになどならない。
以下、具体的に演説を引用しながら解説していこう。
「日本列島を、強く豊かに」・・昨年の臨時国会では、国民の皆様が直面している物価高への対応を最優先に働きました。暫定税率の廃止や成立した補正予算に基づき、ガソリン及び軽油の価格は着実に低下しています。電気・ガス料金の支援や重点支援地方交付金による支援も、国民の皆様に届き始めています。迅速な執行に一層努めてまいります。その本丸は、「責任ある積極財政」です。・・とにかく成長のスイッチを押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります。
物価高への対応として、税率の低減や補助金を誇っているようだ。しかし、こんなのは国民負担の付け替えに過ぎない。本当の光熱費対策とは、愚かな再エネや脱炭素をやめ、化石燃料を活用することでコストを低減する、といった根本的なもののはずだ。
エネルギーは、国民生活及び国内産業の基盤であり、立地競争力強化のためにも、安定的で安価な供給が不可欠です。
そう、安定的で安価なエネルギー供給は不可欠だ。この言や良し。だが脱炭素やGXでそんなものは実現できない。
エネルギー安全保障の観点からは、省エネ技術の活用を進めるとともに、国産エネルギーを確保することが重要です。地域の理解や環境への配慮を前提に、サプライチェーンの強靱性確保を図りながら、脱炭素電源を最大限活用します。
ここで脱炭素電源というのが原子力ならばよい。けれども、太陽光発電や風力発電は大量導入すれば光熱費が上がる。そうなれば産業は崩壊する。これは国の安全保障にとっては最悪である。化石燃料を活用した方がよほどよい。安全保障については備蓄と供給源の多様化で対応すればよい。国産エネルギーであれば何でも安全保障に資するというものでは全くない。
原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働加速に向け、官民を挙げて取り組みます。廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替えに向け、次世代革新炉の開発・設置についても具体化を進めます。
原子力の推進についてはある程度評価できる。さらに踏み込んで新設も推進すべきであるが。
再生可能エネルギーについては、同盟国・同志国と連携しつつ、ペロブスカイト太陽電池や次世代型地熱発電設備に係るサプライチェーンを国内に構築します。
ペロブスカイト太陽電池や次世代型地熱発電などの研究開発にある程度の政府投資をすることは結構だ。だがこれらの技術は、火力や原子力などの既存の発電技術に対して、コスト的に勝てる見込みは全く立っていない。つまりは普及の見込みも今のところ無い。したがって、サプライチェーンを国内に構築するなどというのは、性急にすぎる。
一方で、脱炭素電源の導入が自然環境を損なったり、サプライチェーン上のリスクとなったりしては、本末転倒です。特に、太陽光発電については、設置に当たっての安全性確認規制や環境アセスメントの強化、発電に係る支援制度の見直し、パネル廃棄に当たってのリサイクル制度の創設など、一連の規制・制度の導入及び適正化を進めます。
太陽光パネルの環境規制の強化を図ることは評価できる。だが、再エネ最優先という、菅・岸田・石破政権の三代で推進した政策を変えないのであれば、太陽光発電の多くの欠点はそのまま拡大していくことになる。つまりは、光熱費は高騰し、中国製の人権侵害の疑いのあるパネルの輸入に依存するといったことだ。これを推進するままで良いのだろうか?
そして、世界に先駆けたフュージョンエネルギーの早期社会実装を目指します。また、水素社会の実現並びに資源開発及び資源循環の取り組みを加速します。特に、南鳥島周辺海域の海底のレアアース資源の活用に向け、取り組みを急ぎます。
フュージョンエネルギーというのは核融合のことである。これも水素も、基礎的な技術開発を政府が支援することは適切である。
ただし、エネルギーというのは究極のコモディティーであるので、イノベーションを起こし普及を実現することはきわめて難しいことを理解する必要がある。
つまり、エネルギー供給技術は、その普及段階において、既存の火力発電や原子力発電などの成熟した技術と競争しなければならないが、そこで勝てるような技術というのは滅多に生まれるものではない。
したがって、国家の経済成長のためにイノベーションを起こしたいのであれば、火力や原子力を活用してエネルギーを安定的かつ安価に供給し、それによってAIなどの新しい技術のイノベーションを起こす。これがエネルギーとイノベーションのあるべき関係である。
しかしながら、今の日本の政策ではこうはなっていない。夢のようなエネルギー技術を開発するとしているが、いま政府が計画して投資している再エネや水素エネルギーなどは、万事順調に進んでも高コストになると分かっているものばかりである。これでは仮に成功しても光熱費は高くなるし、そのような高価な技術が世界に売れるはずもない。政府の支援が切れれば消滅してしまうようなもので、まるきり無駄だ。
南鳥島のレアアースも、研究開発はすればよい。しかしそれがどの程度実用化できるのか、またそのコストがどうなるかは、今のところ全くわかっていない。どうも新奇なものにばかり飛びつく傾向があるが、現実的な政策をどうするのかをもっと重点的に語るべきだ。
世界共通の課題である気候変動に対し、危機管理投資の観点から大胆なGX(グリーントランスフォーメーション)投資を進め、脱炭素を成長につなげていきます。・・特に、GX型の産業集積やワット・ビット連携を促進し、新たな産業クラスターを形成していきます。
政府は脱炭素(GX)のために官民合わせて10年間で150兆円の投資を政府の規制と補助金によって実現するとしている。その一方では、排出量取引制度の導入をこの4月から図るなど、火力発電を滅ぼすような政策を強化し続けている。これでは電気代は高騰する一方であり、経済成長になどつながるはずがない。高市首相はこのことを全く分かっていないのだろうか。
ワット・ビット連携というのは、AIなどのためのデジタルインフラと、それが利用する電力インフラを一体として開発するということである。だがここで冠してある「GX型」というのは何のことかといえば、脱炭素電源で電力を供給するということである。
原子力ならばよいが、太陽光発電や風力発電でデータセンターなどを動かせるはずがない。データセンターこそは、24時間、1年中、安定的で安価な電力を最も必要とするものなのだ。
すると現実的な解は、多くの場合、化石燃料を用いた火力発電になるのだが、「GX型」ということでこれが封印されてしまっている。これでは日本でAI投資が起きない。
現在でも、電力供給を受けられないが故にデータセンター立地が断念される、という案件が続出しているのが日本の実態だ。まずこれをどうするのか。原子力はすぐには拡大できないので、現実的には火力発電を活用するしかない。だがこういった現実的な問題は、解決策が提示されていないどころか、認識もされていないようだ。
また、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、アジアにおける脱炭素化に貢献するとともに、アジアの成長力を取り込んでいきます。
本当にこんなことがアジアの人々の望んでいることだろうか。アジアこそ、経済成長のためにエネルギーの安定的で安価な供給が必要だ。ゼロエミッションなどという贅沢をやっている場合ではない。
地球温暖化の影響もあり、自然災害の激甚化・頻発化が世界的課題となっています。「令和の国土強靱化」を進め、国民の皆様の生命と財産を守ります。あわせて、防災技術やインフラを積極的に海外に展開していきます。
「自然災害の激甚化、頻発化」など、気象データを見ればわかるが、そんなことは全く起こっていない。ましてや、「地球温暖化の影響」で自然災害が激甚化、頻発化などしていない。完全な非科学を首相が言うべきではない。
日本で近年になって大きな水害が起きたのは、ダム建設への反対運動などもあり、防災インフラへの投資が不十分だったことが重大な理由の一つである。
「強い経済」の実現により、賃上げの原資を生み出すとともに、ガソリン・軽油の暫定税率廃止による値下げなどの物価高対策を着実に実施していくことで、物価上昇を上回る継続的な賃上げを実現します。
強い経済が実現できるならば結構なことだが、脱炭素ではそれは絶対に実現しない。むしろ脱炭素は強い経済の実現を妨げる。
このような、大いなる矛盾を言っていることに、首相は気づいておられるのだろうか。
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総じてみると、今回のこの首相の施政方針演説は、これまで霞が関、就中、経産省が推進してきたこととその延長線上の政策がそのまま羅列してある。
菅政権の時に官邸からの圧力で「抵抗勢力」から「脱炭素推進」に方針転換して以来、岸田政権、石破政権と3代にわたって5年間続いてきた自民党政権の下で、経産省は脱炭素利権の権化となってしまった。
高市政権はこの軌道修正をしない限り、つまりは脱炭素を止め、再エネ最優先を止めない限り、安定的な安価なエネルギーなど実現できず、日本が強く豊かになることもないということを理解し、政策を大幅に変更せねばならない。
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