世界銀行も気候変動目標を撤回!

asbe/iStock
6月29日、世界銀行が「融資額の45%を気候変動関連プロジェクトに充てる」という数値目標を撤回しました。海外ではロイターやフィナンシャル・タイムズなど主要メディアが大きく報じ、米トランプ政権の意向を反映した国際金融政策の転換として受け止められています。
一方、日本国内ではロイター日本語版が報じているくらいで(※)、あとは日経GXとSustainable Japanというネットメディアの有料記事しか見当たらず、大手メディアでは全く報じられていません。つまり、ほとんどの日本人がこの世銀の方針転換を知らされていないのです。
世界銀行は、2020年に「今後5年間の融資総額の35%を気候変動対策に充てる」という目標を設定しました。次いで2023年に35%を45%へ引き上げていました。
多くの海外報道によれば、今回の気候融資額45%目標は「達成できなかったから撤回された」わけではないようです。2024年度実績が44%、2025年度が48%となっており、昨年45%目標を達成しました。にもかかわらず、今年目標そのものが完全に廃止されたのです。
すなわち、「目標未達による取り下げ」ではなく、「国際金融の優先順位そのものが変わった」ことを意味します(もちろん、海外の報道を見るとふたこと目には「トランプ政権の圧力に屈したのだ!」と加えられています。やれやれ)。
世界銀行の影響力は国際開発にかかわる直接的な融資額にとどまらず、間接的な影響も見逃せません。世界銀行が融資する案件には民間銀行や機関投資家が安心して参加しやすくなり、世銀による融資額の何倍もの資金が開発途上国へ流れ込みます。
また、世界銀行は国際開発における様々なルールをつくる機能も担っています。ESG、性的志向・性自認、ジェンダー政策など、多くのルールが世界銀行と各国の開発銀行の連携によって整備され、傘下の各国金融セクターへ降りていきます。
周知のとおり、2015年頃からネットゼロを目標とするESG投資が急速に広まりました。しかし、世界のESG投資規模は2021年がピークで現在は半減しています。
米国ではレッドステートを中心に反ESG政策が進められ、金融機関や保険会社らが徒党を組んでいたGFANZ、NZBA、Climate Action 100+などの気候カルテルはこの2年間でほぼ壊滅しました。欧州でも英国中央銀行総裁がネットゼロを否定するなど、脱炭素一辺倒から競争力やエネルギー安全保障を重視する政策へ軸足を移す議論が目立つようになっています。
今回の45%目標撤回は、こうしたESGの退潮が国際開発金融にも及び始めたことを象徴しています。「世界銀行が国際開発融資額の45%を気候変動対策に充てている」という事実は、各国におけるESG投資を正当化していたはずです。その数値目標が消滅したことを、日本人も知っておく必要があるのではないでしょうか。
(※)なお、このロイター日本語版もオリジナルの英語版に比べてかなり記事の内容が省略されています。実は、日本語記事から落とされた部分に驚くべき内容がありました。
フランスを含む19か国の執行理事は2025年10月に世界銀行の気候変動対策継続を支持する書簡に署名したが、最大株主である米国のほか、ロシア、クウェート、サウジアラビアを代表する執行理事が署名を拒否し、インドと日本は棄権した。
なんと、2025年10月に世界銀行が「気候融資額45%目標を堅持せよ」と声明を出した際、日本の執行理事は署名を棄権したそうなのです。これ、筆者はまったく知りませんでした。先日、国連による対中非難決議に日本がフル参加していたことをご紹介しましたが、日本国民が知らされていない情報が多すぎやしませんか。。
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