どこまで上がる?日本のエネルギーコスト
世界的なエネルギー価格の暴騰が続いている。特に欧州は大変な状況で、イギリス政府は25兆円、ドイツ政府は28兆円の光熱費高騰対策を打ち出した。
ところで日本の電気代総額は幾らなのか、ある会社の方に聞いてみたら、「知らない」とのこと。そんな筈がないと思ったが、電力市場自由化して以来、企業には分からないそうだ。政府内部には数字はあるらしいが、公表されていないとのこと。「憶測だが」、と前置きした上で、「高騰していることがバレてしまうから、公表したがらないのではないか」との氏の見解。
何てこった。総額も知らずに、補助金やらカーボンプライシングやらの政策を議論するなど、速度メーターも無しに車を運転しているようなものだ。政府においては、毎月エネルギーコストを公表するようにして欲しい。
ところで、政府ではないが、慶応大学産業研究所の野村浩二教授がデータの公表を始めてくれた。
これを見ると、日本のエネルギーコストは鰻登り中であり、電力コストも例外ではない。2022年8月には、全エネルギーで4.3兆円、うち電力は2.1兆円だった。
日本企業は安定供給を重視して天然ガスや石炭を長期契約で買ってきたし、また電源を多様化してきたために、いまのところ欧州のような酷い価格高騰にはなっていない。このことはじつは電気事業者やガス事業者のファインプレーなのだが、あまり褒めてくれる人がいないのは残念だ。
しかし今後は、長期契約も切れてくるし、小売り料金改定の度に価格高騰の波が押し寄せてくると予想される。
どのような対策が必要か。それを議論するためには、エネルギーコストのリアルタイムな情報把握が欠かせない。
野村教授は、これから毎月末にこのデータを更新する予定と伺っている。要注目である。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
気候・エネルギー問題はG7広島サミット共同声明の5分の1のスペースを占めており、サミットの重点課題の一つであったことが明らかである。ウクライナ戦争によってエネルギー安全保障が各国のトッププライオリティとなり、温暖化問題へ
-
国際環境経済研究所主席研究員 中島 みき 4月22日の気候変動サミットにおいて、菅総理は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%削減、さらには50%
-
「国民的議論」とは便利な言葉だ。しかし、実際のところ何を表しているのか不明確。そのうえ、仮にそれに実体があるとしても、その集約方法についてコンセンサスがあるとは思えない。
-
1ミリシーベルトの壁に最も苦悩しているのは、いま福島の浜通りの故郷から避難している人々だ。帰りたくても帰れない。もちろん、川内村や広野町のように帰還が実現した地域の皆さんもいる。
-
12月16日に行われた総選挙では、自民党が大勝して294議席を獲得した。民主党政権は終わり、そして早急な脱原発を訴えた「日本未来の党」などの支持が伸び悩んだ。原発を拒絶する「シングルイシュー」の政治は国民の支持は得られないことが示された。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 エネルギー問題を議論する際には、しばしば供給側から語られる場合が多い。脱炭素社会論でも、もっぱら再エネをどれだけ導入すればCO2が何%減らせるか、といった論調が多い。しかし、そ
-
前2回(「ごあいさつがわりに、今感じていることを」「曲解だらけの電源コスト図made by コスト等検証委員会」)にわたって、コスト等検証委員会の試算やプレゼンの図について、いろいろ問題点を指摘したが、最後に再生可能エネルギーに関連して、残る疑問を列挙しておこう。
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 今回は人間の健康への気候変動の影響。 ナマの観測の統計として図示されていたのはこの図Box 7.2.1だけで、(気候に関連する)全要因、デング熱
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間