政府がやるべきことは節電のお願いではなく電力の確保だ

2022年10月10日 07:00

めまいがしそうです。

【スクープ】今冬の「節電プログラム」、電力会社など250社超参戦へ(ダイヤモンド・オンライン)

補助金適用までのフローとしては、企業からの申請後、条件を満たす節電プログラム内容であるかどうかなどを事務局が審査する。つまり申請から補助金適用が決まって公表されるまでにはタイムラグがあり、審査待ちか審査中の企業が210社以上あることになる。

3%の節電達成した家庭に「月1000円分のポイント」…政府支援策が12月スタート(読売新聞オンライン)

今冬に行われる節電プログラムで、利用者の節電量に応じてポイントを付与する政府の支援策がわかった。電力使用量を前年同月比3%以上減らした家庭に月1000円分、企業に月2万円分のポイントを上乗せする方針だ。

電力供給側では、参加企業による申請や事務局による審査に膨大な手間と時間がかかり、電力需要側の家庭や企業に対しても、これまた面倒な手間ひまをかけてポイントを配るそうです。しかもそのポイントは微々たる金額です。手を挙げた家庭には2000円分、企業には20万円分。さらに3%節電できたらそれぞれ1000円分、2万円分の上乗せとのこと。

y-studio/iStock

では、結婚や引っ越しなどで極端に生活環境が変わった場合は? 今年設備を増強した工場は? 昨年節電を頑張った家庭や企業と全く節電していなかった家庭・企業で基準が異なる場合は? そもそも手を挙げない家庭・企業には何の恩恵もないのでは? などなど、とても公平な制度とは言えません。

仮に全家庭・全企業の条件が同じであっても、前年より暖冬だったら参加者全員達成、厳冬だったら大半が未達成、ということもありえます。全世帯や産業界のほんの一部が参加して仮に3%削減したところで、現在のエネルギー価格高騰や電力不足に対する効果は全く期待できません。

こんな実効性の伴わない施策ではなく、① 再エネ賦課金の廃止、② 石炭火力のフル稼働、③ 原発再稼働を大至急で進めるべきです。

政府がやるべきことは国民や企業に節電をお願いすることではなく、日常生活や産業のために必要な電力量を確保することではないでしょうか。余力はあるし、これなら電気代も下がるためすべての国民と企業が恩恵にあずかれます。

世界各国は脱炭素・脱原発を棚上げして「エネルギー・ドミナンス(優越)」へ移りつつあるという指摘もあります。日本政府も早く舵を切るべきなのですが、こんな状況になってもまだ再エネ拡大、原発反対と叫んでいるSDGs・ESG界隈の人たちがいるためか、重い腰を上げることができないでいます。

現在直面しているエネルギー価格の高騰も、可能性がゼロではない真冬の大停電も、全国民(特に生活弱者)ならびに全産業(特に中小企業)にとって文字通り死活問題です。

脱炭素・脱原発では電力危機が拡大するばかりで、誰一人取り残さない社会からは遠ざかる一方です。

SDGsの不都合な真実-「脱炭素」が世界を救うの大嘘-』(宝島社)

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