原発再稼働で電気代もCO2も下がる

Kwangmoozaa
杉山大志氏の2023年2月4日付アゴラ記事で、電力会社別の原子力比率と電気料金の相関が出ていました。原子力比率の高い九州電力、関西電力の電気料金が相対的に抑えられているとのことです。
この記事を読みながら、その一週間前に環境省が最新の電気事業者別CO2排出係数を公表していたところだったので思いつきました。記事に出ていた電力会社別の原子力比率、電気料金の表にCO2排出係数を追加してみました(表1)。
|
電力会社 |
原子力比率 (2021年度) |
電気料金 (2023年6月) |
CO2排出係数 (2021年度) |
| 北海道 | 9,899円 | 0.537 kg-CO2/kWh | |
| 東北 | 9,462円 | 0.488 kg-CO2/kWh | |
| 東京 | 9,917円 | 0.457 kg-CO2/kWh | |
| 北陸 | 7,488円 | 0.388 kg-CO2/kWh | |
| 中部 | 7,369円 | 0.489 kg-CO2/kWh | |
| 関西 | 5,677円 | 0.311 kg-CO2/kWh | |
| 中国 | 8,608円 | 0.545 kg-CO2/kWh | |
| 四国 | 8,300円 | 0.533 kg-CO2/kWh | |
| 九州 | 5,526円 | 0.392 kg-CO2/kWh | |
| 沖縄 | 10,500円 | 0.707 kg-CO2/kWh |
表1 電力10社の原子力比率、電気料金、CO2排出係数
原子力比率は各社ウェブサイト(表内にリンク)、電気料金は杉山氏記事、CO2排出係数は環境省報道発表を参照
続いて、アゴラ記事と同様に散布図で原子力比率とCO2排出係数の相関を見てみます(図1)。

図1 電力10社の原子力比率とCO2排出係数
参考までに、図1とスケールを合わせた電気料金との比較も示します(図2)。内容は杉山氏作成のグラフと全く同じものです。

図2 電力10社の原子力比率と電気料金
何をいまさらと言われそうですが、原子力比率が上がれば電気料金とともにCO2排出係数も下がることが確認できました。しかしながら、表1の通り現状では原発再稼働が進んでいません。発電余力があるのに動かさないのは宝の持ち腐れです。
冒頭のアゴラ記事で杉山氏はこう指摘しています。
いまの電気代高騰は、反原発、再エネ推進、脱炭素といった、「エコな」政策のせいだ。(太字は筆者)
また、同記事を解説している動画の講演資料には、電気代を安くするための方策として、①原子力再稼働・新増設、②再エネ最優先を止める、③石炭・天然ガス(LNG)開発に投資、長期契約、があげられています。
筆者も2022年10月10日付アゴラ記事で同様の指摘をしていました。
こんな実効性の伴わない施策ではなく、①再エネ賦課金の廃止、②石炭火力のフル稼働、③原発再稼働を大至急で進めるべきです。
政府がやるべきことは国民や企業に節電をお願いすることではなく、日常生活や産業のために必要な電力量を確保することではないでしょうか。余力はあるし、これなら電気代も下がるためすべての国民と企業が恩恵にあずかれます。
当時から着手していればと思わずにはいられません。電気代高騰で国民全体(特に生活弱者)が困窮し、企業(特に中小企業)は利益を圧迫されています。家庭でも工場や店舗でも、省エネ活動は0.1%や0.2%など小さな節電効果を積み上げていきますが、図1、図2を見る限り原発再稼働だけでも一気に数%や10%を超えるレベルで電気代、CO2排出係数の低減効果がありそうです。
■
関連記事
-
未来の電力システムの根幹を担う「スマートメーター」。電力の使用情報を通信によって伝えてスマートグリッド(賢い電力網)を機能させ、需給調整や電力自由化に役立てるなど、さまざまな用途が期待されている。国の意向を受けて東京電力はそれを今年度300万台、今後5年で1700万台も大量発注することを計画している。世界で類例のない規模で、適切に行えれば、日本は世界に先駆けてスマートグリッドを使った電力供給システムを作り出すことができる。(東京電力ホームページ)
-
NRCは同時多発テロの8年後に航空機落下対策を決めた 米国は2001年9月11日の同時多発テロ直後、米国電力研究所(EPRI)がコンピュータを使って解析し、航空機が突入しても安全は確保されると評価した。これで仮に、同時多
-
2023年は、気候学にとって特別な年であった。世界各地の地上気象観測地点で、過去に比べて年平均気温が大幅に上昇したからである。 ところが残念なことに、科学者はこの異常昇温を事前に予測することができなかった。 CO2などに
-
寿都町長選 世の中は総選挙の真っ只中である。そんな中、北海道寿都町で町長選が10月26日に実施された。 争点は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のごみ」)の最終処分場選定に関わる『文献調査』を継続す
-
ご存じの方も多いと思いますが、先月末にビル・ゲイツ氏が気候変動対策への主張を転換しました。 ビル・ゲイツ氏、気候変動戦略の転換求める COP30控え | ロイター 米マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏は28
-
政府の第6次エネルギー基本計画(案)では、2030年までにCO2排出量を46%削減する、2050年までにCO2排出を実質ゼロにする、そのために再生可能エネルギーによる不安定電源を安定化する目的で水素発電やアンモニア発電、
-
アゴラ研究所では、NHNジャパン、ニコニコ生放送を運営するドワンゴとともに第一線の専門家、政策担当者を集めてシンポジウム「エネルギー政策・新政権への提言」を2日間かけて行います。
-
アゴラ編集部の記事で紹介されていたように、米国で共和党支持者を中心にウクライナでの戦争への支援に懐疑的な見方が広がっている。 これに関して、あまり日本で報道されていない2つの情報を紹介しよう。 まず、世論調査大手のピュー
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















