川崎市も太陽光義務化、安全無視の議員は誰か

川崎駅西口
Taiki Kawasaki/iStock
東京都に引き続いて川崎市も太陽光パネルの住宅への設置義務条例を審議している。まもなく3月17日に与野党の賛成多数で可決される見込みだ。
だが太陽光パネルには問題が山積していることはすでにこの連載で述べてきた。
そして自身が防災士でもある無所属の月本琢也川崎市議が12月と3月の議会質問で重要な指摘をしている。
川崎市は、洪水浸水想定区域が市域面積の38.5%、土砂災害警戒区域が 749 区域(内特警戒区域が 552 区域)、大規模盛土造成地が 1,089 箇所と、災害リスクが非常に高い上に人口密度が高い。このため人命にかかわるリスクが高いので、義務化すべきでない。
月本市議によれば、もしこれらの区域を義務化の除外対象にするとしたら、市域面積のおよそ6割が対象外になるとのこと。
逆に言うならば、もしこのまま義務化を強行するならば、これらのリスクの高い地域に続々と太陽光パネルが設置されることになる。
水害時や土砂災害時に、太陽光パネルからの感電・漏電によって二次災害が起きることは、国の試験機関NEDOが報告している(図)。
とくに大規模災害時に、避難、救助、復旧が遅れ、人命にかかわるリスクがあるのは明らかだ。十分に想定内のリスクなのだから、どのようにして対処するのか事前に検討すべきで、性急な義務化は安全軽視である。
川崎市では来る4月9日に市議会選挙がある。今回のパネル義務化に誰が賛成するのか、市民にとくと見せてもらおう。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では過去の地球温暖化は100年あたりで約1℃
-
今年も3・11がやってきた。アゴラでは8年前から原発をめぐる動きを追跡してきたが、予想できたことと意外だったことがある。予想できたのは、福島第一原発事故の被害が実際よりはるかに大きく報道され、人々がパニックに陥ることだ。
-
我が国では、脱炭素政策の柱の一つとして2035年以降の車両の電動化が謳われ、メディアでは「日本はEV化に遅れている」などといった報道が行われている。 自動車大国である米国の現状はどうなっているのか? 米国の新排出抑制基準
-
ドイツのチューリンゲン州で州議会選挙が行われた。得票率は図1の通り。ドイツ連邦の連立政権与党である社会党(SPD)、緑の党(Grune)、自民党(FDP)が大惨敗。躍進したのはドイツでも日本でも大手メディアからは極右扱い
-
日本ではエネルギー体制の改革論をめぐる議論が、議会、またマスメディアで行われています。参考となる海外の事例、また日本の改革議論の問題点を紹介します。
-
スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO(ゴー)」。関係なさそうな話だが、原子力やエネルギーインフラの安全についての懸念を引き起こす出来事が、このゲームによって発生している。
-
東芝の損失は2月14日に正式に発表されるが、日経新聞などのメディアは「最大7000億円」と報じている。その原因は、東芝の子会社ウェスティングハウスが原発建設会社S&Wを買収したことだというが、当初「のれん代(買収
-
第6次エネルギー基本計画の素案が、資源エネルギー庁の有識者会議に提示されたが、各方面から批判が噴出し、このまま決まりそうにない。 電源構成については、図1のように電力消費を今より20%も減らして9300~9400億kWh
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間