IPCC報告の論点63:過去トレンドと掛け離れた海面上昇予測

2023年05月16日 06:50
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

remotevfx/iStock

シンクタンク「クリンテル」がIPCC報告書を批判的に精査した結果をまとめた論文を2023年4月に発表した。その中から、まだこの連載で取り上げていなかった論点を紹介しよう。

■

IPCC報告における将来の海面上昇予測が地点ごとに以下のリンクに公開されていて、インタラクティブに数値やグラフを見ることが出来るようになっている。

IPCC AR6 Sea Level Projection Tool

そこでクリンテルがこの海面上昇予測を北欧の首都について観測データと比較すると、過去のトレンドからかけ離れていることが分かった。過去は海面は下がっているのに、予測では上昇を続けることになっている(なおここでは将来シナリオとしては現状のなりゆきに近いSSP245を用いている)。

まずはノルウェーのオスロ。紫色が過去のトレンドとそれに基づく外挿で、青い線がIPCC
の予測である:

次にストックホルム:

ヘルシンキ:

デンマークについては緩やかな上昇だったものが急激な上昇に転じるようになっている:

スカンジナビア半島は約1万年前の氷河期まで南極のような氷床に覆われていたがそれが融解したため、バランスをとるために、いまでも全般に陸地が上昇を続けている。このため海面は相対的に低下をしてきた。デンマークでは海面は下降こそしなかったが下降は緩やかだった。

いずれの地点においても、このような「将来予測」の計算結果を見ると、そもそも過去のトレンドを全く再現できないことはほぼ間違いなかろう。海面上昇が2000ぐらいから突然に急速になる物理的な理由などないからだ。ならば将来予測についても信頼するには足りないのではないか。

局所的な海面の高さは、氷河の融解による地殻変動以外にも、プレートテクトニクスによる地殻変動、工業用水の組み上げによる地盤沈下、海流の変化など多くの要因で変動するので、過去の動向を理解するのも難しく、予測についてはもっと難しい。

これに地球温暖化の影響が加わるわけだが、この北欧のデータの乖離の理由は、地球温暖化による海面上昇を過大評価していることによるのかもしれない。

さてIPCCは日本についても数十カ所で予測をしているが、これと観測データを突き合わせるとどうなっているのだろうか。予測は信頼に足るものだろうか。

【関連記事】
・IPCC報告の論点①:不吉な被害予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点②:太陽活動の変化は無視できない
・IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
・IPCC報告の論点④:海はモデル計算以上にCO2を吸収する
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・IPCC報告の論点⑥:温暖化で大雨は激甚化していない
・IPCC報告の論点⑦:大雨は過去の再現も出来ていない
・IPCC報告の論点⑧:大雨の増減は場所によりけり
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・IPCC報告の論点⑪:モデルは北極も南極も熱すぎる
・IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる
・IPCC報告の論点⑬:モデルはアフリカの旱魃を再現できない
・IPCC報告の論点⑭:モデルはエルニーニョが長すぎる
・IPCC報告の論点⑮:100年規模の気候変動を再現できない
・IPCC報告の論点⑯:京都の桜が早く咲く理由は何か
・IPCC報告の論点⑰:脱炭素で海面上昇はあまり減らない
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・IPCC報告の論点⑲:僅かに気温が上がって問題があるか?
・IPCC報告の論点⑳:人類は滅びず温暖化で寿命が伸びた
・IPCC報告の論点㉑:書きぶりは怖ろしげだが実態は違う
・IPCC報告の論点㉒:ハリケーンが温暖化で激甚化はウソ
・IPCC報告の論点㉓: ホッケースティックはやはり嘘だ
・IPCC報告の論点㉔:地域の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
・IPCC報告の論点㉖:CO2だけで気温が決まっていた筈が無い
・IPCC報告の論点㉗:温暖化は海洋の振動で起きているのか
・IPCC報告の論点㉘:やはりモデル予測は熱すぎた
・IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
・IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
・IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
・IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
・IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
・IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
・IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
・IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
・IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
・IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
・IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
・IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
・IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
・IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
・IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる
・IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない
・IPCC報告の論点㊺:温暖化予測の捏造方法の解説
・IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
・IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた
・IPCC報告の論点㊽:環境影響は観測の統計を示すべきだ
・IPCC報告の論点㊾:要約にあった唯一のナマの観測の統計がこれ
・IPCC報告の論点㊿:この「山火事激増」の図は酷い
・IPCC報告の論点51:気候変動で食料生産が減っている?
・IPCC報告の論点52:生態系のナマの観測の統計を示すべきだ
・IPCC報告の論点53:気候変動で病気は増えるのか?
・IPCC報告の論点54:これは朗報 CO2でアフリカの森が拡大
・IPCC報告の論点55:予測における適応の扱いが不適切だ(前編)
・IPCC報告の論点56:予測における排出量が多すぎる(後編)
・IPCC報告の論点57:縄文時代はロシア沿海州も温暖だった
・IPCC報告の論点58:観測の統計ではサンゴ礁は復活している
・IPCC報告の論点60:グレートバリアリーフは更に拡大中
・IPCC報告の論点61:積雪面積は減っていない
・IPCC報告の論点62:縄文時代は欧州も暖かかった

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